「被災地以外が案外のほほんとしているのを見て、『これは言わなきゃいけないな』と思ったんです」──陸前高田市 福田さん一家(中編)

2011.11.16

Updated by Tatsuya Kurosaka on 11月 16, 2011, 12:00 pm JST

ケータイがつながらず、メディアの情報では被災地で何が不足しているのか、人々が何に困っているのかは分からない。今回の震災で、被災地の中と外をつないだのが、インターネットによる情報発信だった。陸前高田市消防団によるamazonのウィッシュリストを使った支援要請はネット上で広まり、福田順美(なおみ)さんのtwitterによる被災地情報の発信は海外にまで届いていた。(インタビュー実施日 2011年10月1日 聞き手:クロサカタツヤ)

前編はこちら

▼クロサカ氏(左)と福田順美さん
201111161200-1.jpg

言えば変わるかも、ちょっとでも知ってくれるかも

──どう外側(被災地外)に発信できるようにするのか。またどう横(被災地内)で通信するのか。今回そのあたりを最低限提供できたのが、もしかしたらインターネットなのかもしれません。実際に娘さんは、twitterで発信をされていて、結果的に世界にまでその声が届いてしまった。

福田操さん(母・以下「操」):娘のtwitterも、1カ月くらいしてから始めたので、もっと早くできれば、たぶんもっと良かったのかもしれません。

福田賢司さん(父・以下「賢司」):消防でtwitterを使って物資の供給を受けているという話をしてから始めたんだっけ。

福田順美さん(娘・以下「順美」):うん。でも、初めのうちは、それは消防って言う組織だから出来たのであって、私個人がやっても意味がないと思っていたんです。

操:私は最初「何やってるの?あぶないことしないで、なんか変なことしないで」って言っていた(笑)。親としては心配で、私はそういうのに疎いから。

順美:twitterを見ていて、だんだん外部の情報が入ってくるようになった。そうしたら、被災地以外が案外のほほんとしているのを見て、さすがにちょっと「この野郎!」と思ったんです(笑)。

だから、これは言わなきゃいけないなと思った。だれも言っていないから、言えば変わるかもしれないし、ちょっとでも知ってくれるかもしれない。それでtwitterに書いたら、ちょうど陸前高田の人を探している人が見つけてくれたので、そこからわーっと広がった。まさか私もそんなに広まるとは思っていなくて。

──やや情けない話ですが、東京では早い段階でテレビが原発報道中心になりました。だから実は東京の人間も、何か被災地のお手伝いをしたいけど、どこにどう入っていけばいいのかわからなかった。そんな状況に、娘さんのtweetがフィットしたのだと思います。

===

テレビを見ていても隣の町のことは分からない

──一方で、陸前髙田や大船渡の被災後の現状を伝えるのは、本来はマスメディアの役割だったと思うのですが、今回ほとんど機能していなかったという指摘もあります。地震から1カ月、2カ月くらいの間、マスメディアは「使い物」になりましたか。

順美:まず震災直後のワンセグ放送で、地震・津波被害が映像情報として把握できたのは、とても大きかったと思います。地震直後でも、最初は普段のように会話している同級生とかもいたんですけど、先に津波が押し寄せた地域の映像を見たことで、自分たちがいかに危機的な状況にあるかを確認できました。

避難所での生活では、電気が回復してから、NHKの方がテレビを持ってきてくれて、それを見て地震の速報とか、津波の警報は確認できました。でも、他の街の状況って言うのはそんなにわからなかったですね。

震災直後、一緒に避難した友達のお母さんが気仙沼にいたんですけど、人づてで気仙沼が大変な火事だって聞いて、ここからも気仙沼方面の空が真っ赤になるのが見えたんです。友達のお母さんとは火事の前に電話で1回連絡がとれたけど、もしかしたら逃げている最中に焼けたかもしれない、と不安もどんどん重なりました。

岩手県のニュースでは気仙沼のことって大して取り上げてくれなかった。橋も決壊していて、水が上の方まで来ていて車が通れないので、見に行くこともできない。ただ、大火の気配だけは、はっきりと分かりました。

操:気仙沼は宮城県でここ(陸前高田市)は岩手県なので、岩手県内のニュースはやっても、気仙沼はその次なんですよ。もともとは同じ気仙地方なんですけど。

──実際にはすぐ隣だから、高田に住んで、お父さんが気仙沼、お母さんが大船渡で働いているという人も多いわけですよね。

順美:そうです。支援についても差があって、宮城県では早いけど、こっちは県が違うから、岩手県の内陸からの支援が遅かった。岩手県は北部や内陸部はそんなに被害が酷いわけじゃなくて、県単位では宮城県や福島県あたりの方が被害が広域ので、仕方ないのかもしれません。

でも、被害状況にあった対応ができていなかったので、市長の知名度があるといった理由で、大して被害のないところに大きな支援が行っていた。でも、こっちの市はあんまり知られていなくて、物資が来なかったこともありました。

──地域の情報という意味では、防災無線についても考える必要があります。今回の津波被害を受けた地域に共通しているのは、防災無線の限界があったことです。聞こえない、何を言っているのかわからない、そして津波で鉄塔ごと倒壊した。だから、本当に防災無線でいいのかという声は、あちこち出てきています。

順美:防災無線も、この辺りでは高い鉄塔から町内に知らせるんです。それが流されてしまうとその区域には伝わりづらいので、もうちょっと細かく伝える手段があればいいと思います。

前にテレビで見たのですが、ある自治体では、川沿いの家庭に市がスピーカーを取り付けていて、鉄砲水や土砂災害の際には市役所からそのスピーカーから、警報や情報が入ってくるシステムがあるようです。

そうやって市役所からの声が、残っている家庭に伝えられたら、避難所にみんなが集中するっていうのも少なくなったんじゃないか。もうちょっと人を分散させれば、食べものや水も、余裕をもって分配できたんじゃないかと思うんです。

──そもそも、もっと明確に指示が発せられるべきである、ということですね。。

順美:どうしても市役所とか消防署のマニュアル通りに話したりするんですよ。だから、どうしても丁寧な話し口調で「すみやかにー」とか言っている間に、もう津波が来ているんですよ。

操:「はやく逃げろ!」でいいと思うのね。

順美:緊急地震速報が入った時点で、マニュアルを撤回して、しゃべり言葉でそのまんま伝えられるように伝えた方が、ずっと効率よく避難できると思うんですよ。マニュアル的に型にはまったものを、ちょっと砕けさせたほうがいいのに。

▼今の陸前高田市街地。土地が陥没し、雨が降ると冠水する。(2011/10/1 クロサカタツヤ氏撮影)
201111161200-2.jpg

===

信頼できる情報を流す仕組み作りの難しさ

──震災直後もそうですし、震災から少し時間が経って、でもまだ人が混乱しているときに、もう少しきめ細やかな情報を、全体に拡散できるような仕組みが必要という声があります。でもテレビでは実際の人間の細かな動きとは、スケールがあっていませんでしたし、あわせることもそもそも難しい。

そこで、災害ラジオがあちこちで立ち上がり、お隣の大船渡でも「おおふなと災害エフエム」がスタートしました。こうした災害ラジオを、防災無線の替わりや補助的なものとして使えないかという言う声があちこちで起きています。実際に、災害FMとか災害ラジオって、今回の震災から避難生活の中で活用しましたか。

【父母】正直あまり活用していなかったですね。大船渡のFMが陸前高田向けに送信されるようになったのも少し経ってからだし、あまり存在を認識していなかったというのが正直なところです。

順美:避難所では、普通のラジオを一晩中流しっぱなしにして、メッセージや安否情報を伝えたりしていたので、一晩中流して誰かしらが必ず聞いている状態にはしていた。

でも、どうしてもラジオって情報が流れていくので、「あれもしかして」って思ったときにはもう終わっているんですよ。そうすると、どうしても不確かな情報で終わってしまって、安否も結局生きているのか、いないのかわからないんです。

ラジオに限らないんですが、一番困るのが、誤った情報が広まることなんです。情報を共有する手段がなかったので、人づてで情報が伝わっていくと、誤った情報が混じるんですよ。

例えば、被災地では犯罪が横行しているとか、無法地帯だとか、女性や子どもを誘拐する事件が発生していますっていう情報が流れてきた。確かに注意しなきゃいけないことなんですけど、実際その言葉で想起されるほどのひどい状況ではありませんでした。

なので治安の悪化を否定する張り紙もあったんですけど、それを見られる場所も限られていた。間違った情報が流れてしまうと、もっと混乱を起こしてしまうのです。

──これは難しいですね。細かな情報を出していくと、当然情報がより身近なものになるので、受け取る側にとってリアリティを持つようになる。そこで、意図したものでなくても、ちょっとした誇張が誤解を招き、大げさになって広まってしまう。

賢司:もちろん、不審者らしき人間がいたというのは、実際あるにはあったんですよ。ただ、夜中にライト付けて歩いていれば、それだけで不審者になってしまう。だから、何していたかまではわからないけども、そういう目撃情報はあったらしいんですよね。

そうすると、気をつけてくださいっていう話は来るんですけど、本当のところそれはなんなのかというのは、正直な話わからないんですね。

順美:私も避難所を回るときに、知らないクルマが止まって「乗りませんか」と声を掛けられたことは結構あった。立派な服を着ていて、おそらく市外の人だというのはわかったんですけど、大丈夫ですって言って走っていったことは何度かありました。

実際にそういう犯罪があったかどうか、正しい情報はよくわからないんです。声を掛けられただけでは、通報する気にもなりませんし、善意を不審者扱いしたくはないので。

賢司:そういうのも通報されれば否応なしに不審者になっちゃうからね。

──災害ラジオとかコミュニティFMには、狭い地域で情報を密に集めてきて発信することに意味がある。つまり、不審者情報をラジオという比較的しっかりした形で流すと、Twitterとは全然意味が違ってくる。

かといって、既存のテレビが細かい所まで情報に手を突っ込めるかと言えば、今回はほとんどできなかったと思うんですね。なので、誰が、どのような単位で情報に裏付けを取って、信頼感をもって流通させていくのか。これはもはや技術の話じゃない。

(つづく)

メールマガジン購読WirelessWire News メールマガジン

おすすめ記事を配信する『WirelessWire Weekly』と、閲覧履歴を元にあなたに合った記事をお送りする『Your Wire』をお送りします(共に週1回)
配信内容を詳しく見る

クロサカタツヤ(くろさか・たつや)

株式会社企(くわだて)代表。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)在学中からインターネットビジネスの企画設計を手がける。三菱総合研究所にて情報通信事業のコンサルティング、次世代技術推進、国内外の政策調査・推進プロジェクトに従事。2007年1月に独立し、戦略立案・事業設計を中心としたコンサルティングや、経営戦略・資本政策・ M&Aなどのアドバイス、また政府系プロジェクトの支援等を提供している。

RELATED NEWS