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[CEATEC 2012]モバイル機器の電源確保やヘルスケアなどのM2M関連のソリューションが続々

2012.10.05

Updated by Naohisa Iwamoto on October 5, 2012, 19:34 pm JST

CEATEC JAPAN 2012では、モバイル機器の電源確保に関するソリューションや、ヘルスケアなどから広がるコンシューマも巻き込んだM2M(参考情報)のソリューションのデモや展示が注目されていた。スマートフォンを始めとして電源確保が重要なモバイル機器が増え、燃料電池のような次世代の電源に加え、置くだけのタイプの充電方式でも新しい提案があった。ヘルスケアとITCとの連携では数多くの展示があったほか、低価格な機器をスマートフォン連携できるソリューションの展示もあった。

ロームのブースでは、ロームなどが9月に開発を発表した固体型水素燃料電池の展示が行われている。小型軽量でスマートフォンなどの充電に十分な能力を持つ燃料電池を手にとって見られる。新開発の燃料電池は、燃料電池の水素源として固形化した水素化カルシウムを用いる。水素化カルシウムと少量の水から水素を発生させ、大気中の酸素との反応で発電する仕組みだ。小型軽量で常温動作が可能な固形化水素燃料を用いることで、安全かつ手軽に燃料電池による発電が可能になる。小型の燃料電池で小型扇風機のファンが回っているほか、各種の携帯型の試作品が並べられている。スマートフォン向けよりも大容量の携帯型発電機も展示があり、こちらでは実際にテレビなどを駆動するデモも行われている。

▼ロームの固体型水素燃料電池の展示
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村田製作所のブースには、インテルやコクヨファニチャーと共同で開発したモバイル機器を充電できる机が展示されている。対応したモジュールを備えるノートパソコンやスマートフォンなどを置くだけで充電できる。電解結合ワイヤレス電力伝送方式を採用し、コイル型では発熱などの影響で難しかった20Wといった高い電力伝送を可能にした。ノートパソコンなどに埋め込むモジュールは0.1mmと薄く、機器への実装がしやすいこともメリットだと説明する。

▼村田製作所が展示している「充電テーブル」
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ミツミ電機のブースには、Qi規格対応の新しいワイヤレス給電パッドが参考出品されていた。Qi規格のワイヤレス給電パッドでは、これまでスマートフォンなどの機器と充電用のコイルの位置を合わせるために、コイルを動かすムービングコイル方式を採用することが多かった。ミツミ電機では、可動部分があり故障につながりやすいムービングコイル方式ではなく、複数のコイルを内蔵することで広い伝送エリアを確保できる給電パッドを開発したという。2つのコイルを使う低コスト版のデュアルコイル方式と、複数のコイルをならべたコイルアレイ方式の給電パッドを展示している。また、この仕組を利用したデモ用の給電パッドで、扇風機に給電する様子も見られる。

▼ミツミ電機の複数のコイルを用いたQi規格対応ワイヤレス給電パッド
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今回のCEATECでは、コンティニュア・ヘルス・アライアンスの「デジタルヘルスケア・プラザ」が設けられて、健康機器や医療機器のデジタル化促進の動きをまとめて見ることができた。医療機関などのデジタル化推進はもちろん、体重計や血圧計などの情報を活用してクラウド型のサービスを提供するといったパーソナル向けの機器やサービスも多く出展されている。広いブースではないものの、ひっきりなしに来場者が集まっているところからも注目されている分野であることを実感する。

▼デジタルヘルスケア・プラザに集まる来場者
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スマートフォンとの連携で面白い展示があった。女性向けヘルスケアサービス「ルナルナ」などを提供するエムティーアイが出展した「マイクロ・タグ活動量計」がそれ。直径2cmほどの円形の装置で、3軸加速度センサーを搭載する。低消費電力で通信できるBluetooth Low Energy(BLE)対応モデルと、NFC対応のモデルを用意し、スマートフォンに情報を送信する。BLE対応モデルで歩数計として利用すると、髪留めやリストバンドに仕込んだマイクロ・タグ活動量計からセンサーのデータが送られ、スマートフォンアプリでリアルタイムに歩数がカウントされていくデモが見られる。NFCタイプでは、スマートフォンにタッチすることでアプリにデータが移る。歩数計だけでなく、睡眠モニターなどへの応用も考えられており、2013年1月の製品化を目指しているという。

▼エムティーアイの活動量計を髪留めタイプにしたもの(左)と、BLEでリアルタイムにカウントされる歩数
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スマートフォンと各種の機器との新しい連携方法を提案する展示として、ガイアホールディングスの事業会社であるアプリックスのブースが目を引いた。アプリックスはBLEに対応し、スマートフォンとさまざまな機器を連携させるためのモジュール「JM1」を発表したばかり。JM1は量産版では200円前後で提供することを目標としており、数千円といった低価格の機器への採用も可能なモジュールだ。ブースでは、スマートフォンのアプリで付加価値を付けた操作が可能な機器がズラリと並ぶ。蒸らし時間や豆の種類によって淹れ方を変えられるコーヒーメーカー、スマートフォンで介護者が簡単に操作できる介護用電動カート、ネットワークを介して離れた場所の人と一緒にトレーニングできるエアロバイクなど、このようなものまでスマートフォンと連携が可能なのかと目を見張る。高いCPUパワーやタッチ操作、ネットワーク機能などといった機器単体では簡単に装備できない機能をスマートフォンと連携させることで提供できるようになる。安価な機器であっても「インテリジェンスに使いこなす」世界を、ブースで体験できる。。

▼アプリックスのブースで体験できるスマートフォン連携エアロバイク
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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。