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NFCで入場、NFCで情報入手--MWC 2013の「NFC Experience」の姿

2013.03.01

Updated by Naohisa Iwamoto on March 1, 2013, 02:35 am JST

Mobile World Congress 2013(MWC 2013)では、近距離無線通信のNFCを使ったサービスが会場で提供されている。NFCを利用した入場バッジのシステムや、タッチするだけで情報にアクセスできるポスター、課金システムなどで、NFCの実用性をアピールしようとするものだ。実際に試すことができた2つのソリューションについて報告する。

1つは、MWC 2013会場に入場する際のチェックを少し簡略化できる「NFC Badge」。MWCでは、入場登録者にネームプレート(バッジ)が配布され、入場などの際に読み取り機でチェックする。一方、会場への入場にはバッジだけでなく、パスポートなどの写真入り証明書の提示が必要だ。毎日、多くの人が並ぶ中でパスポートを出し入れするのは例年気がかりであった。NFC Badgeを使うと、写真入りの証明書の提示が不要になるという。これはちょっとうれしい。

▼MWC 2013のエントランス。左にある幅が広く人だかりがしているゲートが通常利用者用、右の幅が狭く人がいないゲートがNFC Badge利用者用20130301_nfc001.jpg

流れは少し面倒かもしれない。まず、NFCに対応したAndroid 4.0以降、Windows Phone 8、BlackBerry 7.1の端末が必要になる。そして、NFC Badgeのアプリケーションをダウンロードする。アプリを起動したらMWCの入場登録に使ったIDとパスワードでログインし、自分の顔写真を撮影してNFC Badgeのアプリケーションに登録する。ここまでが準備段階だ。

20130301_nfc002.jpg次が、開幕後のMWC 2013の会場での作業。NFCのヘルプデスクに赴き、パスポートなどの写真入り証明書と通常のバッジ、そしてNFC Badgeのアプリを開いたスマートフォンを見せる。そこで、パスポートなどの写真と本人の顔、NFC Badgeに登録された写真により検証が完了すると、NFC Badgeの状態表示ボタンがオレンジから緑に変わる。これで、NFC Badgeが使える状態になる。

この少しだけのステップを踏むことにより、毎日のMWCへの入場時になんと写真入り証明書を出さなくてよくなるのだ。MWCのゲートは「写真入り証明書と通常のバッジ」の人と、「NFC Badge」の人により完全に分けられている。NFC Badgeを持っている人は、専用のゲートに向かい、リーダーにスマートフォンを載せ、画面をタップする。するとNFCで通信が行われ、リーダーの上に配置されたディスプレイに登録した自分の写真が映る。係員は、ディスプレイに表示された写真と本人の顔を照合して、入場を許可するといった流れだ。これにより、「写真入り証明書をその場で出さなくていい」というメリットが得られるほか、NFC Badgeを使う人はどうもまだ少ないらしくゲートに並ぶことがなくて済むというご利益も得られる。

もう1つ、試すことができたのはNFCを使ったスマートポスターだ。MWC 2013の会場内にはたぶん10カ所ほどに「NFC Experience」と大書された大きな看板が用意されている。ここには、「NFCが使える端末をタップすると有用な情報が得られます」といった文言とともに、MWCのイベント情報、会場の情報、レストラン情報、街の情報などについて、それぞれいくつもの項目が書き並べられている。そして、近距離無線通信を示すような電波が広がるマークが印刷されている。

▼NFCを使ったスマートポスターを使うと、かなり多くの情報へのアクセスができるようになっている20130301_nfc003.jpg

スマートポスターの電波マークにNFC対応スマートフォンをタッチすれば、たちどころに求める情報が得られるというわけ。試しにMWC情報を記した日刊誌である「Mobile World Daily」をタップしたところ、見事にブラウザーで当該のサイトにアクセスし、デジタル版の誌面が読めた。ちょっとした感動だ。

20130301_nfc004.jpgと、言うものの、日本からの渡航者にとっては、決済まで含めたNFCのトライアルがすべて慣れ親しんだアプリケーションに感じることも確かだろう。FeliCaのICカードはもとより、おサイフケータイが使えるようになったのですら2004年、すでに10年近く前のことなのだから。

NFC Badgeにしても、少なくとも利用者がほとんどいないから空いているのであって、人が殺到したら入場にかかる時間短縮にはつながらないだろう。日本の自動改札機のようにピッピッピッとさばくことなどは考えていないアプリケーションのようだからだ。スマートポスターは、今回たまたま通りがかったときには、使っている人を見かけなかった。自分が試すのすら恥ずかしいぐらいの様子だったのだ。もちろん、NFC対応端末が少ないことが主な原因ではあるだろうが、使わせるための方策や、ユーザーにとってのメリットがどうもうまく表現されていないようだ。

「できる」から「使える」へ。今後、そうしたフェーズに入ってくるNFCのアプリケーションにとって、FeliCaで培ってきたおサイフケータイのノウハウは決して侮れないものがあるように思えるのだ。

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。