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米FCC、600MHz帯の周波数帯オークションを2015年に延期

2013.12.09

Updated by WirelessWire News編集部 on December 9, 2013, 11:59 am JST

米連邦通信委員会(Federal Communications Commission:以下、FCC)のトム・ウィーラー(Tom Weeler)委員長は現地時間6日に公開したブログ記事のなかで、2014年中を予定していた600MHz帯の周波数帯オークション(インセンティブ・オークション)の実施を2015年半ばまで延期することを明らかにした。

ウィーラー委員長は延期の理由について、同オークションに関して予定されている複雑な手続きなどを挙げ、FCCがこの手続を適切に進める準備を整えた上で2015年半ばにオークションを実施するとしている。また同委員長は1月の予定されるFCC委員会の席上で、今後のスケジュールやマイルストーンについての詳細を明らかにすると記している。

600MHz帯の周波数帯オークションは、リバース・オークションと称されるテレビ放送局からの帯域取得と、携帯通信事業者などへの帯域割り当てに関わる通常のオークションというふたつの部分で構成される。前者はテレビ局が自発的に手放すことにした周波数帯について価格等の条件を決めるもので、後者は通常の周波数帯(割り当て)オークションと変わらない。ただし、この二つがほぼ平行して行われること(スタート時点では、どれくらいの周波数帯が割り当て側のオークションにかかるかなどが確定しない)や、テレビ局が手放すことにした帯域をFCCがいったんまとめた上で、これを取得希望者が利用しやすい単位に分割し直す必要があることなどが、手続きの複雑さにつながっているという。

また、オバマ政権の目玉政策のひとつされながら、システム開発の失敗により出だしからつまづいたHealthcare.govの例に言及し、オークションを成功させるためにシステム面で万全を期す必要があることも延期の理由のひとつに挙げられている。

600MHz帯の周波数帯オークションは、2008年に行われた700MHz帯オークション以来の大規模なものだが、これに対しては以前から「そもそも政府から無料でライセンスを付与されていたテレビ局などに対して、帯域を手放す対価(インセンティブ)を支払うべきかどか」「ベライゾン・ワイアレス(Verizon Wireless)とAT&Tの2社が多くの帯域を手にする結果となった700MHz帯オークションの二の舞になりはしないか」といった疑問や懸念の声も上がっていた。とくに後者の点については、2社が特定の市場で取得できる帯域の量に一定の制限を設けるべきとする意見が、競合する通信事業者や消費者保護団体、それに米司法省などから出されているという。

財務力などで勝る上位2社に何らかの入札制限を課すことは、携帯通信市場での競争促進につながる反面、オークションで得られる政府の収入やテレビ局への支払い金額の低下をまねく可能性もある。とくに、米政府ではこの収入を財源に「FirstNet」とよばれる警察・消防用通信網の構築を進める考えを明らかにしていることから、FCCとしては非常に難しい舵取りを迫られていることは間違いない。またインセンティブ・オークションの実施を計画したのが、前任者のジュリアス・ゲネコウスキ(Julius Genachowski)委員長であったことから、就任からまだ日の浅いウィーラー委員長としては、オークションのルール策定などにもう少し時間が必要と判断したと思われる。

なお、GigaOMが昨年9月末に掲載していた記事には、FCCがこのオークションで最大120MHz程度の再割り当てを見込んでいるとある。ただし、テレビ局による参加(周波数帯ライセンス提供)が義務づけられていないことから、実際に売買されるのはその一部にとどまる可能性も高く、米議会予算局(Congressional Budget Office)では同オークションで得られる政府の収入を152億ドルと試算していたという。

いっぽう、1月22日に実施される1900 MHz(PCS)帯H Blockのオークションへの参加を見送ったスプリント(Sprint)やT-モバイル(T-Mobile USA)では、600MHz帯のオークションが先送りされたことで、新たな方法で追加の周波数帯の確保に動く必要性も高まりそうだ。

なお今月はじめには、ベライゾンがニューヨークやロサンゼルスなどの主要都市圏で、LTE網のキャパシティを約3倍に増強(従来の上下合わせ20MHzに加え、新たにAWS帯の上下40MHzを追加)し、一部では下りの通信速度が80Mbpsに達する例もみられるといった話が伝えられていた。いっぽう、T-モバイルでも一部の市場でメトロPCS(MetroPCS)の買収で獲得した周波数帯を使って、LTEのキャパシティを3倍に強化したことも報じられていた。

【参照情報】
The Path to a Successful Incentive Auction - FCC
FCC Delays Spectrum Auction Until 2015 - WSJ
FCC delays broadcast spectrum auction until 2015 - CNET
FCC delays TV spectrum auction to the middle of 2015 - The Verge
FCC puts the brakes on its big spectrum auction, delaying it until 2015 - GigaOM
FCC outlines $15B spectrum flip from TV broadcast to mobile - GigaOM
Verizon quietly unleashes its LTE monster, tripling 4G capacity in major cities - GigaOM
T-Mobile Taps MetroPCS' Spectrum to Boost LTE Network Speeds - AllThingsD

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