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「外を見る」から「自分を見る」へ-世界初・三点式眼電位センサーで視線を可視化するセンシング・アイウェア「JINS MEME」発表

2014.05.13

Updated by Asako Itagaki on May 13, 2014, 18:41 pm UTC

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5月13日、株式会社ジェイアイエヌはアイウェアブランド「JINS」から、「自分を見る」をコンセプトにしたセンシング・アイウェア「JINS MEME(ジンズ・ミーム)」を2015年春に発売することを発表した。

JINS MEMEは、JINS独自の「三点式眼電位センサー」(特許出願中)で、まばたきと8方向の視線移動をリアルタイムに測定する。視線移動を検知するアイ・トラッキング技術にはカメラを使用するタイプ、電極を使用して角膜から直接電荷を検知するタイプなどがあったが、いずれもウェアラブルデバイスとして利用するにはバッテリーやユーザーへの負荷の高さの点で問題があった。東北大学加齢医学研究所との共同開発による三点式眼電位センサーは、鼻パッドと眉間部分のセンサーから検出される眼電位を利用するもので常時着用する「眼鏡」とセンサーを完全に一体化することに成功している。

▼デザインはウェリントンタイプ・ハーフリムタイプ・サングラスタイプの3種類(それぞれクリックして拡大)。ウェリントンタイプとハーフリムタイプは追加料金で度付交換も可能。デザインはAudi A6などのプロダクトデザインを手がけたSWdesignの和田 智氏が監修した。
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▼お台場・日本科学未来館で開催された発表会に登壇したジェイアイエヌの田中仁代表取締役社長。「新製品の登場です」と覆いがはずされた台上には何もなく、報道陣に困惑が広がった(上)。登壇時から社長が着用していた眼鏡がJINS MEMEだと明かされたが、言われなければ全く気付かない(下)
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▼眼電位センサーによる視線移動検知の仕組み。眼球は角膜側が正、網膜側が負の電荷を帯びており、その電位差を眼電位という。眼球運動にともなう眼の周囲の電位差を検出することで、視線の移動を測定する技術を開発した。
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▼鼻パッドと眉間に配置されたセンサー。眼鏡と完全に一体化しており、かけても違和感がない。充電はmicroUSBで、1時間の充電で約8時間の利用が可能。重量は36g(ウェリントンタイプの場合)と、JINSらしく軽い。
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センサーは三点式眼電位センサーの他、三軸加速度センサー、三軸ジャイロ(角度)センサーも搭載しており、従来のリストバンド式ーデバイスに比べると体軸の動きや重心の移動を精密に測定できる。

スマホアプリを利用して取得データを可視化

発表会の冒頭、田中社長は「JINS PC」で眼を守る「機能性アイウェア」という新市場を創出したJINSの目指すものとして、「Magnify Life」というコンセプトを紹介。人々の人生を拡大する、より豊かにするためにイノベーションを続けるという意思表明であり、次のイノベーションとして、これまでのアイウェアの中心的役割であった「外を見る」機能からのパラダイムシフトに挑戦したという。約4年の歳月を費やし、人間の五感の9割を占める「視覚」情報に着目して、「自分を見る」をコンセプトにした次世代戦略商品の商品の商品化を進めてきた。そして誕生したのが「JINS MEME」である。

JINS MEMEで取得したリアルタイムデータは、Bluetoothで接続されたスマートフォンに転送。「疲れ」や「眠気」などを専用アプリを利用して可視化できる。

▼オフィスシーンでは、眼の動きから、オフィス作業時の疲れや集中度を割出、独自に開発した疲労指数「me(ミー:Mental Energy)」を使って可視化する。ある日の田中社長のデータは、夕方「気詰まりな来客」があった時間帯に最も疲労指数が高かったことを表していた。
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▼人間の眼は眠気が増すと特有の動きを示す。これを利用し、眠気の兆候を事前に察知するアルゴリズムを芝浦工業大学・加納慎一郎教授と共同開発中。
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▼加速度センサー・角速度センサーを利用して、より正確な活動量の把握が可能になる。また体軸のぶれや重心移動をリアルタイムに把握することで、故障の前兆をとらえたり、体軸や体幹を意識したトレーニングも可能になる。
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また、ジェイアイエヌではJINS MEMEのさまざまな可能性を考慮し、APIを公開予定としている(2014年秋予定)。

▼イメージビデオ:JINS MEMEのある世界

「心の動き」も測定可能に

JINS MEMEで収集した視線情報を活用して、さらに生活や社会を豊かにする可能性があるという。ジェイアイエヌと共同研究を進める慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科の稲見昌彦教授は、ウェアラブルは着られるコンピューターにしばられるのではなく、「人機一体」で機械が人に寄り添いサポートするものであるとした。眼の動きは常に脳と連動しており、人間の内面を反映したさまざまな情報をシグナルとして発する、人間個人のより深いところから得られるDEEP DATAであり、今後の分析アルゴリズム開発によって、喜怒哀楽や興味関心など、心の動きを可視化できる可能性がある。

▼発表会会場にいるJINS MEMEを装着した学生3名からリアルタイムに取得したデータを提示し、視線と加速度のセンサーで、プレゼンテーションを聞いてのうなずき、イベント発生時の拍手や視線移動などを詳細に測定できることを紹介。
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JINS MEMEの発売時期は2015年春を予定。価格は未定だが「JINSの商品ですから、皆様の手に届かないようなことはない」(田中社長)とのこと。

▼発表会に登壇した田中社長(中央)、東北大学加齢医学研究所 川島隆太教授(左)、慶應義塾大学大学院 メディアデザイン研究科 稲見昌彦教授(右)。眼電位センシング制度の高度化や様々な応用をめざし、産学共同技術開発体制を構築している。
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【報道発表資料】
世界初、「自分を見る」アイウェア誕生。JINS MEME

【関連サイト】
JINS MEME(ミーム)

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板垣 朝子(いたがき・あさこ)

WirelessWire News編集委員。独立系SIerにてシステムコンサルティングに従事した後、1995年から情報通信分野を中心にフリーで執筆活動を行う。2010年4月から2017年9月までWirelessWire News編集長。「人と組織と社会の関係を創造的に破壊し、再構築する」ヒト・モノ・コトをつなぐために、自身のメディアOrgannova (https://organnova.jp)を立ち上げる。