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コミュニティコード論に続いて、プラットフォームコンテンツ論

2014.05.08

Updated by Satoshi Watanabe on May 8, 2014, 22:02 pm JST

前回書こうとタイトルに入れて字数の関係上切ってしまったプラットフォームコンテンツ論について簡単に。
■概要定義
論とは銘打ったものの、まだ仮説モデルっぽいところではある。が、幾つかケースは提示されており、勘のいい人と話していると自然と似たような議論に落ち着いていくところが最近少なくない。
ケースとして最も分かりやすいのは初音ミクなので、(信者ではないのだが)初音ミクを代表ケースとして記述してみる。
特性定義をしてみると概ねこんなところだろうか。
1)ある基本設定やルール群、サンプルモチーフになる絵やキャラクター設定、世界観があり、共通基盤(基盤コード)として皆が何かを造ったりコミュニケーションしたりする活動基盤、共通理解の下支えとして機能している=プラットフォーム化したコンテンツ
2)プラットフォームコンテンツは、基本設定部分を特定企業が保有していることもあるが、コミュニティ側が標準プロトコルやお作法を定めていく共有資産的に運用されることが珍しくなく、事実上一種のオープンプロトコルとなっていることも珍しくない。現実には、元々の権利を持っているオーナーが上手い形で利用条件開示をしていることが多い。
3)コンテンツの特性やオーナーの利用条件を踏まえる形で、関連コンテンツやサービスがある秩序やルールをもって有機的な市場形成を行っていく。特にデジタル財が増える傾向にあるところから、単なるグッズのラインナップに留まらない繋がりと連関をもった形態を全体的に取りやすくなっている。
それってつまり二次創作のことじゃないの?と言われるとそれほど外れてはいない。しかし、二次創作というのは本体があってあくまで周辺はおまけという感じがどうしてもする。比較すると、初音ミクのエコノミーは本体を狭義のソフトウェアビジネスと捉えると明らかに周辺のいろんな活動の方が広がっており、バーチャルキャラクター、バーチャルアイドルとして捉えた方が早い。二次創作、と単純に括るにはしっくりこないものが増えてきているので概念的に重複部分もありつつも議論を切り離しやすいようにしておこう、との趣旨となる。
■抽象化トレンドを見せるデジタル関連のプラットフォーム
世の中でプラットフォーム的なものと呼称されるものは多々ある。
情報関連分野でいうと、大きな流れとしては物理層から単体のハード(に含まれた標準ソフト)、OSに代表される基本/基盤ソフト、とゆっくりとレイヤーを上に上ってきている。ここ20年でのインターネットの普及とモバイル化スマートフォン化、オープンソースソフトの普及、仮想化技術の広範な普及といったところを足がかかりにしてサービス分野にデファクト競争、プラットフォーム競争が移行している。
分かりやすいのがデジタル広告、オンライン広告の分野で、プラットフォーム競争というよりは業界標準化活動的なところもあるが、そもそも広告効果は業界で標準的な指標が無いと機能しない、つまりビジネスプロトコルが合わせやすいこともあり、広告在庫のシンジケーションや第三者事業者への配信(あるいは第三者事業者による広告出稿管理)が当たり前になってきたことで、サービスの共通化や標準化が日進月歩で進んでいる。ある限定された範囲とはいえ、共有資産的にビジネスの標準プロトコルの整備が行われている。
という動きと冒頭のコンテンツ分野でのプラットフォーム化の動きは、同一のものではないのだが、近傍でどうも似たような動きをしていることと、背景力学に共通性があるので一緒に眺めたくなる。引きで見るとデータサイエンティスト待望論なども似たものに見える。
■コミュニティコードと共鳴するコンテンツプラットフォーム
さて、ビジネス面で気になるのは、あるコミュニティ内でのコードとプラットフォーム化したコンテンツに要されるお作法が近しい関係になりやすいことである。両方とも、コミュニティの経験則の蓄積で出てくるものなので似たような特徴を持ちやすかったり場合によっては一体化してたりなのは当然といえば当然なのであるが、つまるところ、コンテンツコードの理解を出来ればある程度コミュニティ内への消費(?)プロトコルに接合しやすくなる。
端的には、クリプトン・フューチャー・メディアとぎくしゃくせずに普通に話があって同じ釜の飯を食べてるような気分にお互いなれるのは、関連市場にコレジャナイと言われないかどうかの分かりよい試金石となる。
「あれ?ってことは、それってある世代やセグメントに対してのマーケティングお作法パッケージじゃないの?」と問われると、おそらくその通りである。
ガンダム世代みたいな表現があったり、世界中の現役サッカー選手の共通バイブルにキャプテン翼がなっていたりと、遠からずの現象は前からあることから0から100まで最近の事例が新しい出来事とは言わない。が、似たような構造変化がぽこぽこと同時多発している現象の一角に見えるのでまずはざっと整理を。
多発の他のテーマ群についてはまた追々。

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渡辺 聡(わたなべ・さとし)

慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任助教。神戸大学法学部(行政学・法社会学専攻)卒。NECソフトを経てインターネットビジネスの世界へ。独立後、個人事務所を設立を経て、08年にクロサカタツヤ氏と共同で株式会社企(くわだて)を設立。大手事業会社からインターネット企業までの事業戦略、経営の立て直し、テクノロジー課題の解決、マーケティング全般の見直しなど幅広くコンサルティングサービスを提供している。主な著書・監修に『マーケティング2.0』『アルファブロガー』(ともに翔泳社)など多数。

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