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ふつうの中学一年生たちがプログラミングをしてみたら・・・

2014.09.12

Updated by Ryo Shimizu on September 12, 2014, 10:07 am UTC

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 私が普段から口酸っぱく「プログラミング、プログラミング、プログラミング」と念仏のように唱えているので、食傷気味の読者の方もおられるでしょう。

 なぜ私がそういうものの考え方をするようになったかといえば、子供の頃からプログラミングに慣れ親しんでいるからです。

 しかし実際に子供達にプログラミングを教えることの出来る機会というのはそう沢山はありません。
 でも今回は非常に良いご縁があって、品川女子学院の中等部一年生全員を対象として、プログラミングの魅力を伝える機会を頂くことが出来ました。

 私達が開発したプログラミング端末、enchantMOON(エンチャントムーン)は、誰でも簡単にプログラミングの入り口にたどり着けるような仕組みをふんだんに取り入れています。

 デジタルノートとして使うことはもちろん、その延長線上にプログラミングが配置されているのです。

 今回、時間がなかったこともありますが、私達は通常と違い、ほんの一時間だけ、中学一年生の全生徒を対象に、この端末とプログラミングの概要を説明しただけでした。

 そのまま彼女達はenchantMOONを携えて富士山へ宿泊行事へ向かい、宿泊行事中、班ごとに一枚のenchantMOONが提供され、彼女達は宿泊行事をテーマにして様々な作品を作り上げました。

 とはいえenchantMOONは大人でも使うのに躊躇する部分のある端末です。

 果たしてどうなることやら・・・と気をもんでいたのですが、彼女達の好奇心は私達が想像した以上でした。
 彼女達は完璧にenchantMOONの本質をとらえ、使いこなしていたのです。

 先日、「文化祭の前に生徒がいくつか直接質問したいことがあるので来て欲しい」と言われてでかけたところ、何人かの生徒から、とても熱心に質問を受けました。

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 そのとき、私は初めて、彼女達が自主的にenchantMOONを通してハイパーテキストの構造を学びとり、構築し、プログラミングとして表現するといった一連の素晴らしい活動へと昇華させていたことをしり、大いに感動したのです。

 つまり興味がないことには質問しようという意欲は決して湧きません。
 また、仮に質問をするとしても、明らかに先生に言わされているような、おためごかしの、テンプレート的な気持ちの入ってない質問になりがちです。

 ところが今回の生徒達はむしろ「こういうことがしたいのに、上手く出来ない。どうすればいいですか?」と自分で具体的なプログラムを書いて持って来たのです。

 そしてなんということか、それはMOONBlockの限界に近いところまで使い込まれたとても複雑なプログラムになっていました。私は大人が書いたものでもここまで複雑なMOONBlockプログラムというのをまず見たことがありません。それ以前の動作速度だとか、想像力だとか理解力だとかの部分で諦めてしまうのです。それは彼女達が、まず他に同様のことができる道具を持っていないということにも理由があると思います。スクリーンショット 2014-09-12 10.28.36.png彼女達は動作が遅くても待つしかないのです。しかしそれを押してなお、豊かな想像力で大人顔負けのコンテンツを作っている様に驚きました。

スクリーンショット 2014-09-12 10.27.50.png

 私がenchantMOONの企画が進行していた時に、常に頭にイメージしていたのは「自由研究ができる端末」でした。
 私は小学校、中学校の頃の自由研究が大好きで、自由研究をするためにこそ夏休みがある、と考えるようなタイプでした。

 小学生の頃は、たとえば太陽系の天体について調べて水彩画を描き、重さだとか太陽からの距離(天文単位)だとかを書き記したりしていました。3角形から20角形まで正確に描くプログラムを書いて、それを印字して提出したこともあります。

 私が中学生の頃は、裁判所の実際の裁判を見学し、裁判所の構造を地図からハイパーテキストで辿れるようなハイパーテキストシステムそのものを作ったり、裁判の経過を紙芝居形式で表現するプログラムを書いたりしました。

 文化祭には、自分で作ったセル・オートマトンによる花火を展示したり、自動生成され、動き続ける花の画像をパソコンごと展示したりもしました。

 幼少の頃の私にとって、コンピュータはそうした自己表現をするための道具であり、プログラミングはあくまで自己表現の延長上にあるものでした。

 美術で習うスパッタリングやマーブリング、コラージュなどの手法と同じように私にはハイパーテキストやセル・オートマトン、バイオモルフといったテクニックを捉えていたのです。

 もちろん最初からそうしたことを想定して設計し、完成させたわけですが、実際に子供達がこれを使ってハイパーテキストでクイズゲームを作ったり、迷路を作ったり、時にはプログラミングを織り交ぜてゲームの要素を入れたり、演出を入れたりといったことで才能を開花させている様をみて、私は胸の奥からこみ上げるものを感じました。

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 品川女子学院の生徒さんたちが作った作品の一部は、skylabに公開されているので誰でも見て、遊ぶことが出来ます。

 来週開催される文化祭では、実際にenchantMOONで作品が展示されるそうです。
 

 彼女達の豊かな発想と熱意は、作られたコンテンツを見ると痛いほどに伝わってきます。
 
 そしてこうした作品は、enchantMOONという新しいデバイスがなければ決して存在しなかったであろうものです。
 なぜならこれが唯一、「独立して作ること」のみを目的として作られた端末だからです。
 

 もちろんハードウェア的な面ではもっと軽く、薄くしたいという問題があったり、もっと解り易く、もっと表現豊かにしたい、という課題もあります。

 しかしこれは私にとってはとても価値ある一歩になりました。
 これがさらにenchantMOONという端末の拓く未来の可能性、そしてふつうの人々が当たり前のようにプログラミングする時代のための道標として、とても大きな前進だと思います。

 この場を借りて品川女子学院の先生方、生徒の方々に心から感謝の意を表したいと思います。
 ありがとうございました。

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清水 亮(しみず・りょう)

新潟県長岡市生まれ。プログラマーとして世界を放浪した末、 '17年にソニーCSLとWiL LLC.とともにギリア株式会社を設立し、「ヒトとAIの共生環境」の構築に情熱を捧げる。 '17年より東京大学先端科学技術研究センター客員研究員を兼務。著書として「教養としてのプログラミング入門(中央公論社)」「よくわかる人工知能 (KADOKAWA)」「プログラミングバカ一代(晶文社)」など。