WirelessWire News The Technology and Ecosystem of the IoT.

by Category

「村の基地局」で新興国の僻地に携帯通信網を拡げるエンダガ

2014.12.02

Updated by WirelessWire News編集部 on December 2, 2014, 20:56 pm UTC

スーツケースほどの大きさの超小型基地局システムをつかって、新興国の僻地に携帯通信網を拡げようとしている米ベンチャー企業のことがRe/codeブログで採り上げられていた。

エンダガ(Endaga、本社カリフォルニア州オークランド)というこの企業では、携帯電話端末とバックボーン回線とをつなぐ「Village Base Station」ーー小型基地局とそれに付随する仕組み一式(夜間用発電機や長距離Wi-Fiルーターなど)を、インドネシアやフィリピン、パキスタンなどの僻地の地元住民に販売し、彼らがすぐに携帯電話会社のサービスを始められるようにしているという。

同社が販売する「Village Base Station」というOpenBTSベースのシステム(価格は6000ドルあるいは1万ドルと、記事によってバラツキがある)は、もともとカリフォルニア大学バークレー校(UC Berkeley)の研究プロジェクトで開発されたもの。このプロジェクトからはすでにレンジ・ネットワークス(Range Networks)という企業が生まれているそうだが、そこで働いていた経験もあるカーティス・ハイメール(Kurtis Heimerl)氏らが僻地への通信網展開により焦点を絞って立ち上げたのがこのエンガダということらしい。なお、同氏はTechnology Review(TR)が選出した今年度版の「35歳以下のイノベーター 35人」のひとりにも選ばれている。またエンガダには、ミッチ・ケイポア(Mitch Kapor、Lotus 1-2-3 の開発者)氏やシスコシステムズ(Cisco Systems)が買収したメラキ(Meraki)の創業者であるジェフ・ハマーバッカー(Jeff Hammerbacher、現在はClouderaのチーフサイエンティスト)氏、それにナイト・ファウンデーション(Knight Foundation)から資金を提供しているとRe/code記事には記されている。


(同基地局の仕組みについて説明するハイメール氏。2012年3月公開の動画)

エンダガの第一号機がインドネシア領パプアの田舎町ーーTR記事には「最寄りの都市まで自動車で約4時間もかかるところ」という説明があるーーにある学校に導入されたのが2013年2月のこと。それ以来、人口が1500人しかいないというこの町ですでに400人がこのサービスに加入し、仕組みを導入した学校に入るひと月の売上は約2000ドル程度まで増加しているという。なお、同社ではこのシステムを購入し、サービスを提供する地元住民がだいたい5年間で元手を回収できる想定をしているという。また携帯電話会社側では加入者にSIMカードしか提供しないとも記されてあるので、僻地の村でもハードウェア(携帯電話機)自体の入手はそれほど困難ではないのかもしれない。

既存の携帯通信事業者が、採算性の懸念などから通常の基地局を建てないところだからこそ、こうした仕組みが必要とされていることが、今年9月はじめに出ていたTech in Asia記事にある写真の一枚からは伝わってくる。また今回のRe/code記事や、昨年12月に出ていたTechnology Reviewの記事に載っている写真ーー高い木の上に登って小型の四角いハコを取り付けている人物の写真からはかなり手作り色が強い感じもうかがえる。

Technology Review記事には、エンダガのこの取り組みについて技術面に比重を置いた説明がある、それによるとこのベースステーション第1号機の場合は、既にあった水力発電機を電源として利用し、バックボーンとの接続には衛星通信用のアンテナーー学校をネット接続するためにもともと設置されていたものーーを流用しているという。また超小型基地局には、夜間用のバッテリ−、ホットスポット用Wi-Fiルーター、それに課金システムが付随しているともある。またこのシステムには、節電のために夜間用の「スリープモード」が設けられているーー通話やテキストメッセージの着信があるとスリープが解除されるーーなど、独自の工夫も加えられているようだ。

ハイメール氏はRe/codeに対し、Googleが進める「Project Loon」のような取り組みは、エンダガと補完関係にあると説明している。「Village Base Station」の運営側からみると、気球にせよ、無人機にせよ、インターネットにつながる選択肢が増えることになると同時に、そうしたものと既存の仕組みの携帯電話機とを直接接続するのは現実的ではなく、双方の間に「Village Base Station」が介在する余地は残される、ということだそうだ。

「Village Base Station」をつかった携帯電話会社のサービスは違法行為ーー正式な免許や周波数ライセンスを取得していないーーという点について、Re/codeは、こうした仕組みが導入される場所の実状に即した内容に規制のほうが書き換えられるべきというハイメール氏の考えや、「村の貴重な資産として地元の警察がこの小型基地局を警備するようになったという話も聞いた」との同氏のコメントが紹介されている。

【参照情報】
Endaga Brings Rural Villages Online With a Cell Network in a Box - Re/code
This startup gives rural entrepreneurs the tech to operate their own mobile networks - Tech In Asia
How Remote Places Can Get Cellular Coverage by Doing It Themselves - Technology Review
Inexpensive boxes could help bring mobile coverage to the billion people who lack it. - Technology Review

WirelessWire Weekly

おすすめ記事と編集部のお知らせをお送りします。(毎週月曜日配信)

登録はこちら

RELATED TAG