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外国語とジェスチャー:異文化コミュニケーションの基本は人間

Nonverbal communication is what we need

2015.08.26

Updated by Hitoshi Sato on 8月 26, 2015, 09:54 am JST

2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて全国の外国語大学が連携して通訳ボランティア育成に取り組む。まだ先のことのようだが、それに向けての取組がすでに始まっている。

全国7つの外国語大学が通訳ボランティア育成セミナー

2015年8月24日から27日まで全国7つの外国語大学が協同で「第1回全国外大連携プログラム 通訳ボランティア育成セミナー」を行っている。受講しているのは合計240名で7つの外国語大学は以下の通り。

  • 関西外国語大学:27名
  • 神田外語大学:123名
  • 京都外国語大学:27名
  • 神戸市外国語大学:9名
  • 東京外国語大学:6名
  • 長崎外国語大学:21名
  • 名古屋外国語大学:27名

国際大会と通訳ボランティアに関する基本知識、スポーツ文化教養、おもてなし、日本文化、異文化理解、通訳技法、観光ガイド理論、ホスピタリティ3級検定講習などの講座、アドベンチャーコミュニケーションプログラム実技などを各界から講師を招いて行う。

外国語大学の学生だろうから、語学力は相当にあるのだろうが、通訳や観光ガイドや「おもてなし」等は一朝一夕では身につかない。今回のセミナーだけでなく2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて日々の努力が求められる。

コミュニケーションはまだ人間同士:英語はジェスチャー

最近では翻訳や通訳のアプリや多言語を理解するロボット、AIなどが登場しつつあるが、まだまだ開発途中段階である。そのため誤訳や異なった意味に伝わってしまうのではないかという恐れもあり、それらがビジネスなどの商談などで用いられることはまだない。

東京オリンピックが開催される2020年までに、微妙なニュアンスや会話でのポイントをうまく伝えられるような完璧な翻訳・通訳のアプリは完成していないだろう。情報通信技術がどれだけ発展しても、通訳はまだ人間同士にやってもらいたいものである。

たしかにロボットの技術は進化し、人の表情や声も読み取るようにはなってきた。またSiriのような音声認識サービスも日本語で聞いて、日本語で返すような技術はだいぶ発展している。しかし、まだ異なる言語でのコミュニケーションは人間同士でないと理解できないことが多い。人間同士であっても、さらに簡単なコミュニケーションであっても外国人の行動や仕草が理解できないことが多い。ジェスチャーが重要なのである。

20150826-sato-book ジャニカ・サウスウィック氏の『ネィテイブが毎日使う英語のジェスチャー50』(ジャニカ・サウスウィック著・豊田典子監修、国際語学社2015年)という本があり、「ジェスチャーなしの英語は英語じゃない」とのことである。

日本人は英語を話す時に「ジェスチャーなんて、恥ずかしくてとても出来ないよ」という人も多いだろうが、アプリやロボットも現時点ではまだジェスチャーによる機微なコミュニケーションは難しい。

10年以上にわたって、女優・藤原紀香さんの英語のコーチも務めている著者のジャニカ氏の本はジェスチャー以外にも興味深いことが多く書いてある。例えば「良い姿勢をすると、その人自身も実際に自信がわいてきて、話す言葉に確信が持てるようなり、会話をもっと滑らかにする」など。この本に出ているジェスチャーを見ていると、「あ、オバマもこんなポーズしている」とか「ヒラリーのポーズはこういうことか!」というのもテレビを見ていて理解できるので興味深い。

このような外国語を話す時のニュアンスやジェスチャーによる機微な会話は、まだアプリやロボットには難しい。コミュニケーションの基本は人間同士の会話と仕草であることがわかる。ジェスチャーや仕草は一歩間違えると、相手に不快感を与えて誤解されかねないので、英語でのジェスチャーなどは覚えておくといいかもしれない。

東京オリンピックが行われる2020年の頃には通訳や翻訳はアプリやロボットがやってくれるから、外国語なんて勉強しなくてもいいよ、と思っている人も多いかもしれないが、どれだけ技術が発展しても、コミュニケーションの基本は最後まで人間同士だと思う。むしろ技術が発達し、誰とでも簡単にコミュニケーションができるようになればなるほど、人間同士での会話が重要になってくるだろう。

外国語の勉強だけでなく、コミュニケーション時の仕草がわかるだけでも、外国人との会話は楽しくなる。むしろ言葉は通じなくても、ジェスチャーだけで相手に通じることもある。ジェスチャーだけ覚えておいても外国人とのコミュニケーションは楽しめるかもしれない。東京オリンピックの時にも通訳ボランティアの学生だけに頼らずに、少しでも多くの日本人が外国人とのコミュニケーションが出来るようになれればいいものである。

 

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佐藤 仁(さとう・ひとし)

2010年12月より情報通信総合研究所にてグローバルガバナンスにおける情報通信の果たす役割や技術動向に関する調査・研究に従事している。情報通信技術の発展によって世界は大きく変わってきたが、それらはグローバルガバナンスの中でどのような位置付けにあるのか、そして国際秩序と日本社会にどのような影響を与えて、未来をどのように変えていくのかを研究している。修士(国際政治学)、修士(社会デザイン学)。近著では「情報通信アウトルック2014:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)、「情報通信アウトルック2013:ビッグデータが社会を変える」(NTT出版・共著)など。

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