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優秀な人材確保には緩い労働時間が必須

Flexible attract work mandatory to attract talents

2015.12.30

Updated by Mayumi Tanimoto on December 30, 2015, 08:00 am JST

年末進行で死にかけてコタツで横たわっている皆様、いかがお過ごしでしょうか?

疲れを取るには「うまい棒」のなっとう味がオススメです。私は最近なっとう味にハマりすぎていて、日本から二箱ぐらい輸入しようかと考えています。

ヨーロッパではクリスマス時期には大体1週間から長い人で3週間ほどの休みを取るのが珍しくありません。

人がいませんので、今年も恒例のネットの断線、電力が不安定なためクリスマスには肉を焼くのに苦労、スーパーの棚が空っぽ、電車が毎日故障、電話が混戦、銀行ATMが詰まって現金が出てこないが銀行の人に俺にはどうしょもできないと吐き捨てられる、という恒例行事に直面しています。

毎年これを体験しますと、心が広くなるといいますか、世の中の大抵のことはもうどうでも良くなり、禅僧の心境に達するというか、ますますやる気が無くなり労働意欲がなくなってきます。

さてこのようなクリスマス時期の人不足ですが、景気が悪いんだから改善するんじゃないのかと思われるかもしれませんが、反対であります。

なぜかといいますと、ロンドンを始めとする景気が良い欧州の町では、優秀な人ほど休みを取りやすくなる傾向が高まっているからです。

低賃金、低技能の人は山の様にいます。特にロンドンの場合はEUの移動と居住の自由があるので(来年廃止になりそうな気配ですが)東欧から激安賃金で働く人々が山の方になだれ込んでいます。

しかし、開発者、インフラエンジニア、テレコムエンジニア、金融業界の専門職、医師、大学教員、理系研究者、看護師、助産師、統計専門家などは、いわゆる「グローバルな職種」ですので、賃金が高い「ところ」、労働条件が良い「ところ」に流れていってしまいます。(資格が必要な仕事でも移動先で資格をとって就労したり、そもそもEUの場合は医師資格があれば他のEU加盟国でも働ける場合があります。)

「ところ」とは、別の会社の場合、別の年の場合、別の国の場合と色々です。英語ができりゃ他の国で働くのは割と楽勝です。技能と経験があれば何人か、男か女か、肌の色は何かはあまり関係がありません。これが労働流動性があるということであります。

日本では一時期流行っていたフレックスタイムなどが批判され廃止される傾向にあるようですが、ロンドンの場合は拡大しております。

人材派遣会社のAstbury Marsdenの調査によれば、金融街シティの場合、34%の男性が、自分で労働時間を決められる、フレックスタイム等々柔軟な労働時間で働いています。昨年は28%だったので、6%の増加です。

女性の場合は、昨年は23%だったのが今年は30%と7%も伸びています。男女とも半分の人が在宅勤務可能です。

なぜこんなことになっているかというと、優秀な人ほど高い賃金に良い労働環境を求めるので、「良い人」が不足している業界では、良い条件を提示しないと人を引き止めておけないからです。人は大量にいますが、「良い人」が多くはないわけです。

もう一つの理由はオフィスの賃料の高さと、固定費に渋い会社が多いということです。日本だと固定費減らしたいからオフィスなくしますなんて大胆なことはやりませんが、ここではどれだけ利益を出したかがシビアに評価されるので、コストは減らせば減らせだけ褒められます。

ただ減らしすぎると営業に差し障りがあるので、減らしても問題無いところを大胆に減らします。オフィスを郊外に移転する会社もありますが、もっとセコイ会社はオフィスをなくしてしまいます。仮想ソリューションやリモートアクセスで仕事はできるから問題ないというわけです。

例えば色々問題だらけのLloyds Banking Groupは、Workwise programme をいうのを実施しており、20 %のオフィスと 18,000 のスタッフに適用しています。今後2年間の間にロンドン市内のオフィスを1,000席削減する予定です。

私が知っている某資源大手などはもう10年以上前から開発者なんて席がなくて在宅勤務の人ばかりです。家で仕事ができるから机もPCも用意しません。成果はプロジェクトの達成度などで見るから問題ありません。

日本の場合は少子高齢化が大問題で、しかも介護が必要な老人を抱えた中年が多いにも関わらず、必要ない長時間労働、オフィスでのプレゼンティズム(必要が無いのにオフィスに物理的に存在して顔を見せるという生産性の低い慣習)、アウトプットよりも出勤したかどうかを重視、という悪習がはびこっているわけですが、いつまでもなくならない理由は、要するに労働流動性がないからです。

労働流動性に関しては、厚生省が「金払って首」を検討しておりますが、そもそも日本の組織では、職務説明書も雇用契約書も適当ですし、業績評価もないようなものなので、「金払って首」が整っても、まともな形で労働流動性が実現されるのはかなり先の話になりそうです。

手に職がある技術者は、長生きしたいならさっさと英語を覚えて海外の稼げる街に働きにいったほうが良さそうです。

 

 

 

 

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。

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