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パーソナルモビリティと、未来の乗り物

Feel in the future from Personal mobility.

2016.02.19

Updated by Masakazu Takasu on 2月 19, 2016, 19:14 pm JST

パーソナルモビリティという新しいカテゴリの乗り物をいろいろと試してみたので、可能性と課題について書いてみる。

僕はここ三年ぐらいで、いくつかのパーソナルモビリティを、さまざまな場所で試してみた。本家セグウェイ、ホンダのuni-cub、中国で低価格アレンジされたホバーボード、Xiaomiが売り出したNinebotのもの。

はじめて試したのは本家セグウェイだ。つくばがロボット特区に指定されたとき、路上でセグウェイにのせてくれると聞いて、わざわざ早起きして行ったことがある。乗る体験と同じぐらい、教官の話が面白かった。はじめて「パーソナルモビリティ」という新しいカテゴリの乗り物に触れた瞬間だった。

▼つくばで行われたセグウェイ体験会
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パーソナルモビリティという体験

それまでもいくつかのイベントでちょっと触ったことはあったかもしれないけど、きちんとセグウェイに乗ったのはそのときがはじめてだ。30分ぐらい教習を受けて、その後2時間ぐらいいろいろなところを走り回った。最初まったく自由にあやつれず、勝手にぐるぐる回り始めたセグウェイは、「見てる方に曲がるから、この手のひらをみてくださいねー」みたいな教習をしばらく受けるだけで、1m間隔で前の人に並んで走れるぐらいに、思い通りに操れるようになった。クルマやバイクよりよっぽどラクだ。

教習や体験と同じぐらい、半日つきあってくれた教官の話が面白かった。彼はセグウェイジャパンの人で、本当にセグウェイが好きそうで、パーソナルモビリティのメリットと可能性についていろいろ説明してくれた。

▼セグウェイの講習を受ける
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いわく、セグウェイ最大の特徴は、Go/Stopがすごくやりやすいことにより、人に交じって移動できることだという。同じ移動手段でも車、オートバイ、自転車とは違い、歩行者道路を人に交ざって走ることを目的にしている。速く移動する、たくさん荷物を運ぶという用途なら、オートバイや自転車のほうがよほど優れている。ただしそういう移動手段、特に一人で乗るオートバイや自転車、キックボードなどは、スピードを上げる行為も止まる行為もちょっと面倒だから、走り出したらなるたけ止まりたくない。僕はロードバイクに乗っているのだけど、信号で止まるのがすごくイヤだし、歩行者とか、遅いものに混じって走るのはストレスだと感じる。もちろん危ないから止まるけど、イヤではある。

セグウェイではそれがない。体重を前にかけると走り出し、戻すと止まるセグウェイのスタート・ストップは、歩き出して止まるのとそこまで違いがない。歩いている人に交ざってウィンドウショッピングとか、美術館の中で作品を見て回るとかができる。

「たとえば、バイクや自転車で移動すると、それらの操作に気を遣うし、スピードも上げたいから、ドライブは楽しくても、乗っている最中は風景を楽しむ余裕があまりなかったりするでしょう?移動するのと周りを見るのは別の体験になる。セグウェイはそこを、乗りながら観光できる体験になるように作られている、エンターテイメントのための移動手段です。なので、世界各地でセグウェイに乗って街を見て回るツアーが行われています」と、彼は教えてくれた。

▼つくばの市内をセグウェイで、歩行者に混じって移動する。
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もちろん熟練するとスピードを出せるようになるし、モトクロスみたいなオフロード用のセグウェイもあり、乗りこなす楽しみがないわけじゃないけど、たとえばスケボーやウインドサーフィンみたいに、操る楽しみそのものをエンターテイメントにするのではなく、「セグウェイに乗っていろいろなものを見る」というトータルの体験が面白くなるように作られているようだ。

つくばの街をいろいろ観光したのもそのときが初めてで、セグウェイに乗って眺めるつくばの街は、たしかにちょっと変わって見えた。数キロ移動するのは歩くとちょっと疲れるけど、セグウェイならラクだ。視線が歩行者より30cmぐらい高いのもとても気持ちがいいし、移動しているといろんな人があいさつしてくれたり、余裕を持って挨拶を帰せるのも魅力的だ。自然と笑顔になっていた。「そういう笑顔をセグウェイスマイルって言うんですよ」というのは教官だけの造語だとおもったけど、これが人と交ざって移動する「パーソナルモビリティ」と呼ばれるものとの出会いだった。

買えるパーソナルモビリティを求めて

もっといろんなところをセグウェイで見てみたくて、いくつかのセグウェイツアーに参加してみたりした。自分でためしに買ってみたかったが気軽に買えるような値段ではないし、つくば以外では走れない。

日本科学未来館でイベントをやらせてもらったときに、ホンダのUni-cabというパーソナルモビリティに30分ぐらいのせてもらった。視線が立ってる人より低いのがちょっとイヤだったけど、こちらも人に交じって移動できるデバイスで、ゆっくり移動できることで建物の内側でも充分楽しめること、Uni-cabは外部からもリモートコントロールできたり、先頭の車両にくっついて走るなどの自動運転ができるので、それにも新しい可能性を感じた。博物館内のガイドなどに使える。自動運転すれば、みんなが平等に作品を見る、一人が作品にくっついたりしない、みたいなことができる。でも残念ながらUni-cabも買えるものではない。

▼uni-cabを試す。上でパソコン打てるぐらいに安定感あった
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2年前ぐらいから一輪ホイールのスクーターが手が届く値段で買えるようになったけど、友達に貸してもらってしばらく乗った一輪ホイールは、不安定すぎて人に交じって走れる感じではなく、もっと乗りこなすのを楽しむ、スケボーみたいな感じだった。

2015年、MakerFaire Shenzhenで深圳を訪れたとき、中華ガジェットの宝庫である電気街、華僑北でついにホバーボードの中華低価格アレンジが20,000円ほどで売られているのを見つけた。前はそれでも5万円ぐらいはして、お試しで買ってみるには高いものだった。深圳を訪れるたびに値段が下がっていて、いつかほしいなぁと思っていたものだ。工場直営の店でじゅうぶん試して買い、当時はまだ飛行機への持ち込みが規制される前なので、深圳の街中、シンガポールのイベント、東京でのMakerFaireなどで乗りまくった。

▼深圳でついにホバーボードを入手

もちろん、いくつか課題はあった。段差に弱すぎて一般道は走れないんだけど、12kgと重たい上に取っ手もなくて持ちづらい。ACアダプタもやけにでかい。中華ホバーボードはあんまり品質が高くなくて、スーツケースに入れて移動するたびに調子が悪くなっていった。そのうち世界各地でバッテリが火を噴く事故がおきるようになったし、僕のホバーボードも動かなくなってしまった。

Xiaomi Nineのすばらしい「未来っぽさ」

じゅうぶん楽しいことがわかったので、ちょっと高くてもいいものが欲しくなった。中国の大手スマホメーカーXiaomiが、台湾発のパーソナルモビリティメーカーNinebotを買収してXiaomi Nineという機種を出していた。Ninebotはセグウェイの後追いメーカーだが、なかなかヒットが出せずに経営が難しくなっていたセグウェイを逆に買収して、ブランドや特許を入手し、世界最大のセグウェイメーカーになっていた。ここの製品なら安心そうだ。

▼Xiaomi Ninebot Mini (ビデオ: CNET)

値段は4万円と少し。中国では正式に売られているようだけど、公式のストアからは、僕の住んでいるシンガポールには発送してもらえない。中華ECサイトにはいくつか売っている店があったけど、高いものをそういう業者で買うのは怖いし、ちょうどホバーボード持ち込み禁止がいろんな航空会社で始まったタイミングだったので、届くのかわからないものに前払いするのもコワイ。

うーん、ほしいなあと思いながら何度も通販サイトを除く毎日の中、シンガポールの電気街で売っているのを見つけた。交渉してみたら、中国で買うのより1万円高いぐらいに収まった。充分だと思ってその店で買った。

▼Xiaomi Nine
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Xiaomi Nineはスマホで有名なXiaomiの製品らしく、スマホとブルートゥースで連携できる。カタログで見たときは、インターネット冷蔵庫やインターネットエアコンみたいな無駄な機能だとおもったのだけど、試してみたらすごく可能性が見えるすばらしいものだった。

まず、Nineのファームウェアアップデートがスマホ経由で始まった。これからも新しい機能がついていくことが期待できるし、もし新しい規制などが導入されてもついていくことができる。

次いで、乗り出す前のチュートリアルがスマホ側に表示された。乗ってみて制止してみましょう、左右にターンしましょう、10mまっすぐ走ってみましょう、みたいなステップバイステップで進んでいくもので、これが終了しないとスピードリミッターが働いてぜんぜん速度が出ない。

乗り出しても、僕が普段どのぐらいの速度で走っているかログを取っていて、それに合わせてスピードリミッターが設定される。このリミッターはチュートリアルの時の「絶対それ以上の速度が出ない」というものではなく、「リミッターに近づくと加速がゆっくりになる」というインテリジェントなものだ。加速についても僕のクセにあわせて、急発進急停止しないようにしてくれているようだ。

スマホから操作できることで、スマホ側のアプリを工夫すれば、自動運転などにも対応できるようになるかもしれない。Xiaomi NineにはGPSもレーザーセンサも搭載されていないから、Uni-cabみたいに精密に何かを追いかけることはできないだろうけど、ざっくりスマホの持ち主についてくるぐらいのことはできる。

▼スマホ画面に表示されるチュートリアル(左)/動作ログ(右)
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人間の動きを他から制御できるということは、うまく設計すればより効率的でのびのびと楽しめるようになる可能性がある。しっかりアプリケーションを開発すれば、イベントのオススメコースを見て回るとか、遊園地のアトラクション間を効率的に回るとか、混雑をうまくマネージメントできる(行くべきでないエリアには自動で入れなくし、効率的なプランを選んでくれる)ようなことができそうだ。

少なくとも僕が今住んでいるシンガポールでは、パーソナルモビリティに乗っているだけで怒られるようなことはない。乗ることがキケンや人迷惑になるようなところには入れないし、大学には注意書きがあったりするけど、実際はみんな乗り込んでいて、まだはっきりとしたルールが決まっていないという状態のようだ。

しばらくいろいろなところで乗ってみて可能性を探ってみたい。

告知:
この連載でも扱ったような、アジアのメイカー事情を、山形浩生さんや江渡浩一郎さんなどと、いろいろな寄稿を集めてまとめた書籍「メイカーズのエコシステム」が出ました。ご興味ある方はぜひ。

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高須 正和(たかす・まさかず)

無駄に元気な、チームラボMake部の発起人。チームラボニコニコ学会βニコニコ技術部DMM.Makeなどで活動をしています。日本のDIYカルチャーを海外に伝える『ニコ技輸出プロジェクト』を行っています。日本と世界のMakerムーブメントをつなげることに関心があり、メイカーズのエコシステムという書籍に活動がまとまっています。ほか連載など:http://ch.nicovideo.jp/tks/blomaga/ar701264

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