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イオン、ICTを活用して地域発展を実現する協業「地域エコシステム」を発表

2016.04.12

Updated by Asako Itagaki on April 12, 2016, 10:04 am JST

イオンは地域住民、行政、企業などと一体となった地域発展の新たな枠組み「地域エコシステム」への取り組みを発表した。消費者の地域密着、地域重視志向の上昇に対応し、「小売業は地域産業」という理念の元、地域発展の枠組みの確立に向け、本社所在地でもある千葉市幕張・稲毛地区での実証実験を開始する。5月4日、イオンモール幕張新都心で体験会を行う。

▼イオン株式会社取締役兼代表執行役社長グループCEO 岡田元也氏(左)と千葉市長 熊谷俊人氏

具体的には4つの柱として、「デジタリゼーション」「モビリティ」「ヘルス&ウェルネス」「バリュー」の4つを挙げる。「デジタリゼーション」ではエリアチェックインを活用した買い物体験の進化や地域全体のオムニチャネル化、「モビリティ」ではオンデマンド交通・パーク&ライドや荷物の配送とさまざまな受取手段の提供、「ヘルス&ウェルネス」ではモールウォークによる健康増進やITを活用したみまもり支援サービス、「バリュー」では地産地消やインバウンド対応などさまざまな施策を挙げている。

▼地域エコシステムの取り組み内容(報道発表資料より)
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エコシステムのメンバーとしては、行政、交通機関、市民団体、大学、銀行、商店街、小売業などさまざまなメンバーを想定。「イオンは旗振り役で、メンバーとは対等かつオープンなコミュニティを形成する」(イオン株式会社プロジェクトリーダー 齊藤岳彦氏)とする。日本郵政グループ、日本航空、京成電鉄、三越伊勢丹ホールディングスなどがメンバーとして参加を表明している。三越伊勢丹ホールディングスは同業他社となるが、協力して新業態の開発やオムニチャネル化の推進などを検討するという。

今後、イオンと千葉市は交通機関、大学、銀行、商店街、小売業など企業・団体に呼びかけ「地域エコシステム」ちばコンソーシアム(仮称)を立ち上げ、その下に分科会を設けてさまざまな実証実験に取り組む。

「国家戦略特区とは別」だが連携の可能性も

最初の地域として千葉市を選んだ理由としてイオンの岡田元也CEOは、イオンの本社所在地であり関係が深いこと、また千葉市は国家戦略特区としてさまざまな社会実験を行っており一緒に取り組めることを挙げた。幕張・稲毛地区での取り組みを検証し千葉市全域へと広げ、2017年度以降に全国へと拡大する。

千葉市とイオンは包括提携を結んでおり、地域WAONカード活用や地産地消の推進や特産品の販売促進、人事交流などで連携を進めている他、期日前投票所を美浜区のイオンマリンピアに設置したことで投票率向上に大きく寄与したことで全国的に同様の動きが広がるなど、先進的な取り組みを進めている。同市の熊谷俊人市長は、「これからは地域に貢献したいと考えている事業ノウハウを持ち持続可能性がある企業と地域づくり、きずなづくりをする重要性を感じている。イオンを中心に、広くパートナー作りを進める動きは課題であり、(地域エコシステムは)チャンスだと思っている」と述べた。

また、千葉市はこの日、国家戦略特別区域会議において設置された「千葉市ドローン宅配等分科会(第1回)」開催にあわせてドローンを利用した配送のデモンストレーションをイオンモール幕張新都心店屋上を利用して行っている。「国家戦略特区では、これから新たな技術で住民目線の新サービスを提供していく。ドローンだけでなく先端技術を活用したモビリティの導入についても、新たなパートナーと住民がストレスなく目的地に移動出来るよう実験を行う」(熊谷市長)とした。また、健康、介護分野などでも、住民の利益になる提案であれば積極的に企業とのパートナーシップを活用し、規制緩和の必要があれば国家戦略特区の活用も考えるとした。

「千葉市の国家戦略特区とイオンの地域エコシステムは、目指すものは同じ『地域のくらしを良くする』ことでも、あくまでも別々にスタートした取り組み。違う登山口から山頂を目指して山を登り始めたようなものだと考えて下さい」(齊藤氏)とのことだが、今後これらの取り組みが相互に連携し、どのように新たな地域の姿を変えていくのかが注目される。

【報道発表資料】
新しい時代の“地域に根ざした暮らしのしくみ” 地域と暮らしの新しい関係「地域エコシステム」 2016年5月より千葉市幕張稲毛地区からスタートします

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板垣 朝子(いたがき・あさこ)

WirelessWire News編集委員。独立系SIerにてシステムコンサルティングに従事した後、1995年から情報通信分野を中心にフリーで執筆活動を行う。2010年4月から2017年9月までWirelessWire News編集長。「人と組織と社会の関係を創造的に破壊し、再構築する」ヒト・モノ・コトをつなぐために、自身のメディアOrgannova (https://organnova.jp)を立ち上げる。

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