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スマホで手軽に在宅通訳者を呼び出せる「クラウド通訳」は地域観光を救うサービスになるか?

2016.04.12

Updated by Yuko Nonoshita on 4月 12, 2016, 17:45 pm JST

ITを使って地域の観光地をどうサポートしていくか。その手段を模索する実証実験が兵庫県豊岡市にある老舗温泉地の城崎温泉で行われている。

▼城崎温泉はミシュランガイドの二つ星を獲得する老舗温泉地として外国人観光客の間で年々人気が高まっている。
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実験が行われるのは「クラウド通訳」という、Android端末にインストールした動画チャット機能を使って、観光地のスタッフを在宅勤務する通訳者がオンラインでサポートするというサービスである。オンラインを使った通訳サービスはすでにいくつもあるが、コールセンターで専門のスタッフを常駐して対応するため、利用料金が1アカウントあたりの月額が1.5万から3万円ほどかかる。それに対し、クラウド通訳は設備投資や人材確保の面でコストが抑えられ、人材も確保しやすくなるなどのメリットが打ち出せる。

今回の実験は、通信設備会社のケイ・オプティコムが豊岡市の依頼で城崎温泉内に光回線を敷設したのをきっかけに計画が始まった。通訳の運用やアレンジは、主婦を中心に約29万人が登録する老舗クラウドソーシングサービスの「シュフティ」を運営するうるるが協力する。一日あたり2,3名、全体でのべ20人の在宅通訳者が、朝9時から夜10時まで毎日対応する体制を用意した。観光地のスタッフは、城崎温泉地内にある14の施設に設置されたスマホを使ってサポートを受ける。

▼城崎温泉地内にある14の施設で「クラウド通訳」の実証実験が行われている。
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オンライン通訳では音声品質が重要になるので、FacePeerが開発する「FaceHub」というプラットフォームを活用し、動画チャットがスムーズにできるシステムを構築。端末は普通のスマホだが、Wi-Fiで光回線に接続し、ワンタップで通訳者を呼び出すだけで操作できるよう設定されている。また、ウェブアプリはHTML5ベースで開発しており、在宅通訳者は普段使っているパソコン環境から通訳サポートが行える。

▼普通のAndroid端末を使い、アプリをタップするだけで通訳者を呼び出せる。
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取材を行ったのは実験開始の1週間後だったが、サービスを活用しているというみやげもの屋のスタッフは、「普段通りの接客時にスマホを使うだけで通訳してもらえるのが便利で、簡単な会話をおぼえる機会にもなっている」という。また、機械による音声翻訳などとちがって、お互いの顔を見ながら通訳するので話が盛り上がり、詳しい観光地案内などもできるので、観光地のイメージアップにもつながるのではないかと話していた。

▼カメラで商品を見せながら通訳してもらうといったこともできる。
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実験は4月4日から28日にかけて行われるが、今回はあくまでクラウド通訳をきっかけに、サービスの可能性を探るのが目的であり、豊岡市がサービスを導入するかは現時点で未定だという。ケイ・オプティコムもサービスの内容や価格設定は、今回の結果を元に検討していく予定で、そのためにもメリットとデメリットを洗い出す作業を十分に行いたいとしている。

クラウド通訳のような手軽に導入できる通訳サービスは全国各地でニーズがあり、一般的な語学スキルを持つ在宅ワーカーを活用した安定運用ノウハウを用いれば他の言語での対応もできるなど、サービスとしての可能性も高いように見える。城崎温泉では他にもバーコードで入浴管理をしたり、同じバーコードで音声ガイドを行うなど、他にもいろいろな取り組むなどITを積極的に導入しており、今回の実験結果を今後どのように発展させていくのかが気になるところだ。

▼城崎温泉では他にもバーコードを使った入浴管理や音声ガイドなどが導入されている。
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【報道発表資料】
インバウンド向け「クラウド通訳」 実証実験の実施 (豊岡市)
インバウンド対応を活性化させる通訳サービス 「クラウド通訳」のトライアル実施について(ケイ・オプティコム)
クラウドソーシングを活用した動画チャット通訳サービス「クラウド通訳」を城崎温泉14店舗で実証実験を開始(株式会社うるる)

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野々下 裕子(ののした・ゆうこ)

フリーランスライター。大阪のマーケティング会社勤務を経て独立。主にデジタル業界を中心に国内外イベント取材やインタビュー記事の執筆を行うほか、本の企画編集や執筆、マーケティング業務なども手掛ける。掲載媒体に「月刊journalism」「DIME」「CNET Japan」「WIRED Japan」ほか。著書に『ロンドンオリンピックでソーシャルメディアはどう使われたのか』などがある。