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IoTやスマートデバイス、5Gの進展が、計測・テスト業界にも変化を促す--日本NI

2016.06.14

Updated by Naohisa Iwamoto on 6月 14, 2016, 15:59 pm JST

日本ナショナルインスツルメンツは2016年6月13日、「スマートデバイス向けテストシステム」に関する記者説明会を開催した。同社は、計測・テスト関連の機器やソフトウエアを提供する米ナショナルインスツルメンツの日本法人で、各種の産業に計測・テスト製品を納入している。IoTやスマートデバイスの普及は、計測・テストの業界に大きな変化を促しているというのだ。

箱モノからプラットフォームへ変わる計測器

説明会に登壇した、ナショナルインスツルメンツ APAC リージョナル マーケティング マネジャー テスト&RF担当の久保法晴氏は、まず「テスト・計測器ベンダーには2つの方向性がある。1つは完成された箱モノの計測器ソリューションを提供するクローズドなアプローチ。もう1つはモジュール式のハードウエアとフレキシブルなソフトウエアを提供するプラットフォームベースのアプローチを採るものだ」と計測・テスト市場の状況を分析する。完成されたソリューションを利用する前者は、決まったテストをするエンジニアにとってはスムーズに安定した作業が行える。

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しかし、時代は変わってきていると久保氏は指摘する。「IoTやコネクティングワールドの時代には、デバイスがスマートになり、より賢くなってきている。高機能で低価格なデバイスが、数多く利用されるようになり、消費者にとっては喜ばしいことだ。一方で、計測・テスト市場の視点では、パラダイムシフトが起こっている。低価格で高機能な製品の設計・開発が求められるだけでなく、製品化後には数多くのソフトウエア更新があり、テスト要件は変化している。計測システムはこれらへの対応を求められるが、箱モノの計測器ソリューションでは対応が難しくなってきた。ナショナルインスツルメンツでは、計測・テストを行う顧客が自分たちのソリューションに適したシステムを構築できるように、プラットフォームベースのアプローチで製品を提供してきている」。

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ナショナルインスツルメンツは、完成された箱モノの計測器を提供するのではなく、モジュールを組み合わせて顧客が求める自動計測システムを自ら構築できるように、モジュール式のハードウエアと、それを支えるソフトウエアを提供している。モジュール式のハードウエアはオープンな「PXIプラットフォーム」を採用し、数多くのモジュールを挿し替えて自動計測システムを構築できる。ソフトウエアとしては、「LabVIEW」を提供する。LabVIEWは30年にわたる実績を重ねる中で、エンジニアが求めるその時々の自動計測システムの機能を、必要に応じて取り込んできているという。

ハードウエアとソフトウエアで自在に自動計測システムを作れるプラットフォームを提供するということは、顧客の要求する機能や性能を常にキャッチアップしなければならないという課題をベンダーに突き付ける。久保氏は、「そうした課題はベンダー1社だけでは対応できないが、ナショナルインスツルメンツではグローバルで長期にわたってエコシステムを作ってきた。30万人を超えるユーザーの知見がコミュニティ上で共有され、350を超えるソフトウエアのツールキットが提供され、1000人を超える技術コンサルタントやサポートエンジニアがユーザーを支えている。エコシステムがすでに出来上がっているため、顧客は一からソフトウエアを作る必要がなく、求める自動計測システムを構築できる」とナショナルインスツルメンツの強みを説明する。

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「IoTのメガトレンドを見たとき、箱モノを提供するようなクローズドなソリューションは長続きしないのではないか。ナショナルインスツルメンツはプラットフォームベースでユーザーが自動計測システムを自由に組み立てられる環境を提供する」(久保氏)と、長く続けてきた立ち位置が、計測・テスト市場に求められる変化に対応可能なことをアピールした。

テスト時間の大幅短縮、特性の向上に貢献

ナショナルインスツルメンツ シニアプロダクトマーケティングマネジャー 自動テストシステム担当のアダム・フォスター氏は、PXIモジュールとして提供する「ベクトル信号トランシーバー」(VST)を例に、プラットフォームベースのソリューションの効用を説明した。

VSTは、ベクトル信号アナライザとベクトル信号発生器に、ユーザーが自由にプログラムできるFPGAを組み合わせて、リアルタイム信号処理・制御を可能にしたモジュール。これを活用することで、テスト環境が大きく変化しているという。

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「クアルコムの事例を紹介する。同社では従来、箱モノの計測器でIEEE802.11a/b/g製品のテストを行っていた。これをPXIベースに変更したら、IEEE802.11nを加えてもテスト時間が10分の1になった。さらにVSTでFPGAにテストのアルゴリズムを載せたところ、11acまで加えても当初の200分の1の時間でテストが完了するようになった。時間の短縮だけでなく、従来は特性を評価できるデータポイントが40だったのに対して、VSTとFPGAの組み合わせでは30万にまで増加し、テストの質の向上も実現できた」(フォスター氏)。

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このほか、ブロードコムがパワーアンプのテスト時間を5分の1に短縮できた例や、NTTドコモが第5世代移動通信システム(5G)の新しい無線アクセス技術開発のプロトタイプに採用している例などを示し、プラットフォームベースのソリューションが市場に受け入れられていることを説明した。

「特に5Gでは、プラットフォームベースのソリューションが求められるだろう。5Gには3つの要件がある。モバイルブロードバンドの拡張によるスループットの向上では、高次のMIMOや新しい変調方式、より高い周波数のミリ波への対応など、検証のためのテストはさらに高度化が求められる。IoTなどの超多数のデバイスの接続では、デバイスのコスト低減おため、テストコストの低減も求められる。低遅延や高信頼の要件に対しても、リアルタイム処理と高精度なRF信号測定が同時に求められる」(フォスター氏)と、5Gの実現に向けたテスト環境に、ナショナルインスツルメンツのソリューションが有効であることをアピールする。。

説明会を通じて、ナショナルインスツルメンツが提供する計測・テストにおけるプラットフォームベースのソリューションが、IoTの広がりやこれから到来する5Gのネットワークを支える、文字通りのプラットフォームとなる可能性が高いことを感じさせた。

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。

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