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東北復興における言葉の力:上書きされていく「被災地」と情報発信の力

2016.06.15

Updated by Hitoshi Sato on 6月 15, 2016, 05:56 am JST

2011年3月11日の東日本大震災から5年目を迎えた。復興庁では平成28年6月を「東北復興月間」とし、東北での復興に関する取り組みを伝える情報発信を進めている。東北では復興における「新たな挑戦」が数多く生まれている中、そうした取組に携わる方々に焦点を当て、復興の現状、被災地の「今」を伝えることを目的に復興庁では「交流ミーティングin 東京~『新しい東北』を創る人々~」を6月11日から東京のアーツ千代田3331で開催している。

言葉の力が復興の原動力

そして6月12日には、アーツ千代田3331で「若者DAY」と称して、全国の小中高校生を対象とした「新しい東北」作文コンテストの表彰式や、被災地の高校生等による復興の取組発表、全国から集った大学生によるワークショップなどを開催した。イベントには高木宏寿復興大臣政務官、小泉進次郎衆議院議員、宮田亮平文化庁長官、予備校講師の林修氏、AKB48のチーム8のメンバーらが参加した。

復興庁でも作文コンテストは初の取り組みだった。「復興はライフワーク」と語る小泉進次郎衆議院議員は、小中高生の復興に関する作文を読んで、受賞者全員に声をかけていた。そして「政治家は言葉を使う仕事なのだが、子供の言葉の力にはかなわない」とコメントしていた。宮田亮平文化庁長官は「言葉の力が復興の原動力になる。言葉の復興も大切」と言葉の力で、東北の状況を全世界に情報発信していって欲しいと訴えた。

被災経験あるAKB48メンバーの言葉の重み

またAKB48チーム8のメンバーもサプライズゲストとして登場した。チーム8は各都道府県から代表メンバーが1名ずつ存在している。この日は佐藤七海さん(岩手県)、佐藤朱さん(宮城県)、舞木香純さん(福島県)、岡部麟さん(茨城県)、本田仁美さん(栃木県)、小栗有以さん(東京都)の6名が参加した。

このうち佐藤七海さん、佐藤朱さん、舞木香純さん、岡部麟さんは被災で大変な経験をしており、佐藤七海さん、佐藤朱さん、舞木さんの3人は避難所での避難生活も経験している。福島出身の舞木さんは当時を振り返り、「私の住んでいた町の近くには原発があり家族と避難しました。その避難先で見たAKB48の被災地訪問ライブでたくさんの勇気や元気をもらい、私も皆さんを元気にしたいと思ってAKB48オーディションを受けようと思いました」と語り「これからも歌とダンスで笑顔とパワーを届けていきたい」とコメントした。佐藤七海さんは「震災を経験しているので、震災のことを伝えていくことが、今後できることだと感じました」と話した。佐藤朱さんは「避難所で生活していた時、九州や遠くから炊き出しに来てくれて、すごくうれしかったし、支えにもなりました」と話し、また熊本震災に対しては「(東日本大震災では)九州の方から支援をして頂いたように、今度は東北が助けてあげたい。お互い支え合って風化させないようにしたい」と語った。

いつものようにAKB48メンバーとして明るく歌った後にイベントに参加していたボランティアや被災者やゲストとのトークを行った時には、いつもの明るい笑顔とは違った真剣な表情で、当時の状況や東北への思いを語った。福島代表の舞木さんは「福島はいま、前向きな気持ちで復興に向かっています」と言葉を詰まらせながら感謝を示していた。被災を経験しているメンバーの言葉には重みと説得力があった。

小栗有以さんは「(イベントに参加して)ボランティアの皆さんの気持ちを知って、これから明るく盛り上げていこうとする気持ちが伝わってきました。私にも何かできないかとより強く思いました」とコメントしていた。高木宏寿復興大臣政務官からもAKB48メンバーに対して「音楽は世界の共通言語。これからも音楽と一緒に東北のことを世界中に発信していって欲しい」と語っていた。

上書きされていく「被災地」と情報発信の力

東日本大震災から5年が経った。被災地という言葉は、記憶と同じように上書きされていく。最近では被災地というともっぱら熊本や大分である。そして時間が経ち、新たな震災が発生した場合、また被災地は上書きされていく。

現在ではネットもスマホも普及し、誰もがそれらを活用して簡単に情報発信できる時代になってきている。現在でも東北の情報は多く発信されているが、それ以上に熊本や九州の方が注目されている。

また他の事件やニュースがあるとメディアはそちらの方ばかりに目が向いてしまう。復興途上の進捗状況や現状は報じられることは少ない。そのようなメディアの伝播力に依存するよりも、個人や学校などがネットを活用して、繰り返し情報発信していく方が情報発信力はある。

特に「繰り返し」の情報発信が重要である。1回だけSNSやブログに書き込んでも、その時は読まれても記憶に残らない。何回も繰り返し、長年に渡って情報発信と関わりを続けていくことが重要である。小泉進次郎衆議院議員もあらゆるところで東北復興について語っており、まさに「復興がライフワーク」を体現している。

またAKB48 のメンバーは震災直後から月に1回程度のペースで被災地訪問を繰り返しており、多くのメンバーが訪問し、地元の人たちと交流している。さらにメンバーの多くが被災地訪問をした際には、各人がSNSで情報発信を繰り返している。この日もイベントに参加した舞木さんは755アプリで「イベントではみなさんのお話を聞いて、胸が熱くなりました」と語り、佐藤朱さんは「震災のことについて、そして風化させないようにと考えを深め、また自分も復興のために何かできないかと改めて考えさせられました。今回の貴重な経験を繋げて、そして広がっていけばいいなと思いました!」とファンに呼びかけた。

これからも言葉の力による個人の情報発信は、被災地の現状と復興の進捗状況を伝えるにおいて重要になってくる。

▼復興における言葉の力について語る小泉進次郎衆議院議員、宮田亮平文化庁長官
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▼ライブでイベント会場を盛り上げるAKB48チーム8のメンバー © AKS
(舞木香純さん、岡部麟さん、小栗有以さん、佐藤朱さん、佐藤七海さん、本田仁美さん)
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▼会場のボランティアや学生らとトークする高木宏寿復興大臣政務官、林修氏、AKB48チーム8のメンバー ©AKS
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▼東日本大震災の思い出を語るAKB48のメンバー。AKB48は震災直後からほぼ毎月、被災地訪問を繰り返している。©AKS
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▼囲み取材に応える高木宏寿復興大臣政務官、佐藤朱さん、佐藤七海さん、舞木香純さん ©AKS
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【参照情報】
「新しい東北」官民連携推進協議会 ウェブサイト

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佐藤 仁(さとう・ひとし)

2010年12月より情報通信総合研究所にてグローバルガバナンスにおける情報通信の果たす役割や技術動向に関する調査・研究に従事している。情報通信技術の発展によって世界は大きく変わってきたが、それらはグローバルガバナンスの中でどのような位置付けにあるのか、そして国際秩序と日本社会にどのような影響を与えて、未来をどのように変えていくのかを研究している。修士(国際政治学)、修士(社会デザイン学)。近著では「情報通信アウトルック2014:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)、「情報通信アウトルック2013:ビッグデータが社会を変える」(NTT出版・共著)など。

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