オプテックス株式会社 戦略本部 開発センター長 中村明彦氏

オプテックス株式会社 戦略本部 開発センター長 中村明彦氏(前編)センサーが提供する価値は「IoT」に通じる

日本のIoTを変える99人 【FILE 018】

2017.01.18

Updated by 特集:日本のIoTを変える99人 on 1月 18, 2017, 11:53 am JST

センサー専業でグローバルにビジネスを展開するオプテックス株式会社は、IoTへの取り組みを強化している。戦略本部 開発センター長の中村明彦氏に、センサー専業メーカーから見たIoTへの取り組みについて聞いた。

オプテックス株式会社 戦略本部 開発センター長 中村明彦氏

中村 明彦(なかむら・あきひこ)
オプテックス株式会社 戦略本部 開発センター 所長。大手制御機器メーカーに勤務し、センシング技術とワイヤレス通信、インターネット技術の融合について研究開発、それを活用した事業開発に携わる。2007年、オプテックス株式会社に入社し、IP技術を活用した製品(カメラ、システム)、センサネットワークシステム開発に従事。最近は、IoT技術を活用したセンサーソリューション開発の推進リーダーとして活躍。第一級陸上無線技術士。

「得意なところに注力する」IoTにも通じる企業文化

弊社は創業から38年間、一貫してセンサーを作ってきた会社ですが、企業理念の中に創業当時から「得意なところに注力して、それ以外はあえて自分たちで取り組むよりも得意なところに任せていく」という「アウトソーシング」が入っています。

これはまさに今のIoTに通じることでもありますよね。日本の大企業は皆さん全部抱えて一気通貫でサービスをされようとしますけれども、我々ぐらいの、グループ全体で年間300億程度の規模の会社では全部抱えていくことはできないので、早い時期から「得意なところに任せる」という企業文化がありました。

事業目的として「センシング技術で安心、安全、快適な社会を創造すること」を掲げています。センサーの立場から世の中の課題を見ていくことで、さまざまな製品を開発してきました。創業のきっかけとなった製品が世界初の遠赤外線式自動ドアセンサーでした。昔の自動ドアはゴムマットを踏むとスイッチが入って開閉する仕組みでしたが、ゴミが詰まってしまったりしてすぐに故障していいました。いち早く軍事技術であった遠赤外線を応用したのです。

特徴のひとつが、売上の海外比率が7割近くあることで、アメリカよりもヨーロッパの比重が高くなっています。主力事業である防犯事業、警備会社向けの機械警備センサーが売上の5割を占めており、特に軍事、産業施設を対象にしたハイセキュリティ分野での機械警備用センサーが高い評価をいただいています。

通常の警備用センサーって、建物に侵入した時にアラートが出るものが多いんです。でも侵入されたということは、既にドアが開けられてしまっているわけで、ことはもう「終わった」後なんですよね。そうなってしまうと特に海外では、既に命の危険が迫っていることになります。そうなる前に、侵入を事前に抑止するために、所有する敷地に入ったことを検知するセンサーをいち早く開発しました。現在、屋外用侵入検知センサーでは世界シェア4割、アクティブセンサーでは3割を占めています。

防犯センサー 外周警備センサー

防犯センサーは発電所、製油所、天然ガス施設、ソーラー施設などのような重要施設の他、世界の著名な博物館、美術館などにも導入されています。

また、創業から取り組んでいる自動ドア関連センサーでは、国内シェアの6割、世界シェアの3割を占めています。街で見かける自動ドアを開ける時に「押してください」と書いてあるあのセンサーの半分は弊社のものですね。コンビニの自動ドアやホテルや空港やさまざまな商業施設などにもにも弊社の自動ドアセンサーが入っています。

IoTに関連がありそうなもので最近注力しているのが人数カウントセンサーで、国内シェア8割を占めています。東京ドーム、東京スカイツリーなどの他、大手百貨店のほとんどに導入していただいています。リテール事業者様の立場からすると、店舗ごとにセンサー品質にばらつきがあるのは困るので、最初に導入したメーカーのセンサーを全店舗に展開していくことになります。弊社はいち早く技術確立して商用化しましたので、結果として高いシェアを獲得することになりました。その他には、赤外線技術の応用として、非接触温度計や、水質センサーなども展開しています。

センサーは全て「IoT」のネタになる

弊社が創業以来提供してきたのは「人が来たらドアをあける」「不審者を検知したら警備会社に連絡する」など、「何かをセンシングしてアクションする」というサービスです。インターネットでつながってこそいませんが、広い意味ではIoTと同じことをやっています。

AWS re:Invent 2016(2016年11月)で、これからは、何でもかんでもとにかくサーバーにため込む「ビッグデータ」ではなく、必要な情報を必要なだけ、フォグコンピューティング、エッジコンピューティングで加工して送る「スマートデータ」が重要になるという話がありましたが、元々センサーというのはそういうものなんですよ。

エッジコンピューティングといえばえてしてデバイス側のソフトウェア処理のことだと思われがちですが、センサーはメカ(機構)+電気回路から成り立つハードウェア処理とソフトウェア処理をすべてひとつのセンサーの中に収め、必要な情報を出力するものです。その情報を従来のセンサの多くみられる接点情報(ON/OFF)を送るのではなく、ネットを介して、センサーに溜めていた情報をクラウドに送ることで新しい価値を生み出せる、というのがIoTの考え方。IoT、フォグコンピューティング、エッジコンピューティングなどの概念がない頃からやってきた弊社がIoTに取り組むのはとても自然な流れですし、センサーは全てIoTのネタになります。

オプテックスのIoTは「IoS」

会社の方針としては、2014年頃から、売り切り型のビジネスモデルから継続収益が得られるビジネスモデルへの転換をはかるため、従来型センサービジネスの比率を下げ、代わりにシステムソリューションの比率を上げていくべく取り組んでいます。

というのも、やはり単純なハードウェア売り切り型のモデルでは、中国などの安くて良い製品を作る技術を持つ企業が育ち始めてきており、どんどんシェアが置き換わっています。例えば、Asmag.comというサイトで発表されているセキュリティ関連という超ニッチな分野でのランキングですが、今まではトップだったHoneywell Security&Fireを抜いて中国のHIKVISON DIGTAL TECHNOLOGYが首位になりました。オプテックスは現在14位ですが、従来のままではいけないという問題意識を持っています。

警備会社向けのビジネスや自動ドアセンサのビジネスなどがの現状ビジネスの延長線でのIoTもありますが、弊社が考えるIoTは、「IoS(Internet of Sensing Solution)で、センサーを起点としてとらえています。お客様のIoTソリューションに対するセンサー供給も増えてきていますが、今後取り組んでいきたいのはIoTで我々のセンサーを使った新しいビジネスやサービスを新規事業として起こすことです。

今後増えるのはアライアンス型ソリューション

オプテックスのIoT関連ビジネスモデルとしては、「端末機器販売型」「アライアンス型ソリューション」「完結型ソリューション」の3つに分類されます。端末機器販売型、というのはいわゆるハードウェア売り切り型でお客様の方でIoTシステムに組み込んでいただくモデル、アライアンス型はサービス提供者と提携して、センサーの情報をクラウドにアップロードしてその先はアライアンス先で実装してもらうモデルです。完結型ソリューションは、文字通りデバイス開発からユーザーへのサービス提供まで一気通貫で自社で行う形態で、センサーを使ったサービスを提供している会社を買収して実現しています。

売り切り型モデルでIoT関連のセンサーとしては、EnOceanというエネルギーハーベスト技術(光、温度、微弱な振動からエネルギーを取り出し電力に変換する技術)を活用したオープン通信規格に対応したワイヤレスセンサーを提供しています。防犯用の在室センサー技術をビルオートメーションやエアコンなどのエネルギーマネジメントに活用することを想定しています。

完結型サービスの例としては、RVR(Remote Video Response)事業で、2007年に買収したイギリスの機械警備サービス会社ファーサイト・セキュリティ社を買収して実現しました。イギリスは監視カメラが20年以上前から街中に普及していますが、記録したデータを見直すのも大変だし、ストレージにも限界があります。本当に必要なのは、「人が来た」「車が来た」など、動きがあったところとその前後だけがあれば良いはずです。オプテックスのセンサーで人やものを検知して、その前後の映像だけを記録する、またアラームによって24時間モニタリングしている担当者に異変を知らせ、人が確認して警察を呼ぶといったサービスを提供しています。

アライアンス型ソリューションがこれからは増えていくと思っているのですが、例としては、ソニー損保の自動車保険「やさしい運転キャッシュバック型」があります。オプテックスで開発した「ドライブカウンタ」という専用ハードウェアを契約者の方に貸し出し、運転のスムーズさを計測します。評価によって、最大20%までの保険料キャッシュバックが受けられるというサービスです。使用しているセンサーは加速度センサーのみで、アルゴリズムを元に「ふんわりアクセル」「ゆっくりブレーキ」「急ブレーキ」「急加速」の4つを検出し点数を計算するところまでのロジックをオプテックスで実装しています。ネットワークには接続されておらず、ドライブカウンタをソニー損保に送付すると、点数に応じたキャッシュバックがされる仕組みになっています。

アライアンス事業を元にクラウド対応の新しいセンサーを開発

このノウハウを活かして、一般にも利用できる安全運転支援デバイスとして開発したのが「セーフメーター」です。

最近若い人が免許を取得しても車を運転しなくなっていて、新入社員に社有車を運転させるとほぼ100%事故を起こしてしまうので、3ヶ月ぐらい先輩社員が教習しているという実態があったりします。セーフメーターを活用することで、危ない運転をするとアラートを出し、安全な運転でスムースカウントが加算するという形でどのくらい安全に運転できているかが定量的にわかるので、安全運転のモチベーションが上がります。実際に導入いただいた企業では、事故が2割から5割減ったという効果が出ています。法人車両は事故で保険料が大きく上がりますから、事故抑止ができれば費用対効果は高いんですね。

クラウド対応型の新製品は、アプリ経由でクラウドにデータを送信します。AWS上のデータベースにデータを蓄積するところまではオプテックスで提供しますが、その先のデータ分析、活用については、パートナーやエンドユーザーでそれぞれ業務に合わせて開発していただきます。現在、食事の宅配サービス会社のドライバー向け車両に導入の予定です。業務用車両へのドライブレコーダー搭載は増えていますが、セーフメーターはドライブレコーダーでは計測できない日常の運転動作の可視化に特化したセンサーとしてご利用いただいています。

▼クラウド対応型セーフメーターは2016年度のグッドデザイン賞を受賞した
クラウド対応型セーフメーターは2016年度のグッドデザイン賞を受賞した

後編に続く

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