Nokia Connected Future

Nokia Connected Future(4)360度のリアルタイム映像を大勢が視聴するとき「5G」が必要になる

2017.02.03

Updated by WirelessWire News編集部 on 2月 3, 2017, 11:33 am JST Sponsored by NOKIA

ノキアは2016年12月13日に開催したカスタマー向けプライベートイベント「Connected Future」で、事業戦略とビジョン、次世代ネットワークに向けた技術についての講演やデモンストレーションを行った。その中でもモバイルネットワークの今後の中核を担う「5G」については、技術に加えてサービスとビジネスをどのように考えたら良いかを示唆する講演と、5Gの効果を体感できるデモが行われた。Connected Futureのレポートの最終回は、ノキアの考える5Gの世界について見ていこう。

<Nokia Connected Future>
(1)社会が新しいネットワークアーキテクチャを求めている
(2)現実のものになったIoT時代のセキュリティリスクの対策とは
(3)次世代のネットワークアーキテクチャをクラウド/仮想化で実現
(4)360度のリアルタイム映像を大勢が視聴するとき「5G」が必要になる(本稿)

様々な要求にコスト競争力のあるネットワークで対応

講演に登壇したのは、ノキアでアジアパシフィック&日本リージョン テクノロジー統括本部長を務めるブライアン・チョー氏。「新しいサービスとビジネスを実現する5G」と題したプレゼンテーションである。

ブライアン・チョー氏

チョー氏は、モバイル通信の「世代」について振り返った。「1Gは、高額な端末やサービスで、クルマに積んで使っているような世代でした。富裕層向けの音声サービスという位置づけです。2Gはかなり普及が進み、あらゆる人向けの音声サービスへと進化しました。3Gになると、データサービスが拡がりました。とは言え、データ通信はまだ高額で速度も遅かった時代です。グローバルで見ると富裕層向けの限定的なデータサービスの世代でした。4Gになり、あらゆる人がデータサービスを利用できるようになりました。6000円で月間20GBもの高速データ通信が使えるのですからありがたいことです」。

こうして見るとモバイル通信の各世代とは、新しいサービスを実現して対象となる人を拡大してきた歴史だとチョー氏は分析する。チョー氏の分析では、すなわち「5Gも、新しいサービスを提供し、新しい顧客に拡大すべき」ということになる。モバイル通信の世代が変わるということは、サービスや顧客に大きな変化が生まれることを示しているからだ。

チョー氏は続けて、「5Gがどのようなものになるか、業界のアナリストにウェビナーでアンケート調査を行いました。5Gの最も重要な特徴として『1.新しい無線技術』『2.ネットワーク全体を網羅する新しい通信システム』『3.テクノロジーよりも新しいビジネスモデルに関係する』という項目から選んでもらったところ、結果は2と3に集中しました。将来の5Gは技術の世代を指すのではなく、現在のモバイル通信とは違う特徴を持つことになるでしょう。人だけでなくあらゆるものがつながって、運送業界や医療業界や観光業界といったこれまでとは異なる業界とも協力してユースケースを実現していくのです」と語る。

ここでチョー氏は、5Gの意義として4つのポイントを指摘した。1つは、モバイル業界の持続可能性と成長である。「音声のARPU(1契約あたりの平均収益)は下がり、データのARPUも天井に届いてしまいました。今後はARPA(1人あたりの平均収益)をどれだけ高めるかが通信事業者の利益につながります。AR(拡張現実)やVR(仮想現実)などを含め、5Gでより良いサービスを提供し続けることが通信事業者の利益に貢献するでしょう」

5Gとは

2つ目は、ドイツのインダストリー4.0に代表されるような産業への貢献。3つ目は高齢化社会などの対応としてより良い生活を送るためのコネクテッドセキュリティへの貢献。そして4つ目が2020年のオリンピックでの最初の5Gの商用化の実現と、可能性の探求ということだ。

4Gの商用製品で5Gを実現、クラウド化がTCO削減のポイント

ここで、チョー氏はいったん話題を5Gの技術面のトピックに切り替えた。「3GPPの標準化では、様々なユースケース、導入形態に対応可能な無線方式として、新しい技術が採用されていきます」という。

5Gでは、4GのOFDMA(直交周波数分割多元接続)に代わる新しい無線アクセス技術は今のところ出てきていない。その代わりに、周波数の利用が多様化する。「従来の3.5GHz 以下の帯域とは異なり、28GHz帯や73GHz帯が検討されています。4.5GHz帯であっても低周波数に考えられるほどです」(チョー氏)。

このほか5Gの重要な技術としてチョー氏はいくつかのトピックを紹介した。「多くのアンテナを使って通信するMassive MIMOは、ビームを形成することによって周波数利用効率の向上、カバレッジの改善や高周波数帯での5Gの利用を可能にします。無線アクセスでは、これまでの分散型のRAN(無線アクセスネットワーク)からクラウドRANへの変化が進みます。ここで重要なことは、クラウドRANを使った5Gのネットワークは、4G向けの商用プロダクトで構成されていることです。すなわち、4G向けのプロダクトで作ったネットワークで、5Gがサポートできるということです」。

Nokia AirScale無線ポートフォリオ

ネットワークのクラウド化も、リーズナブルなコストで5Gを実現するためのカギを握る。「クラウド化は、通信事業者のTCO(総保有コスト)を下げるために適した解決法です。5Gでは、マルチメディアもクルマもヘルスケアも、様々なアプリケーションをサポートしていく必要があります。それぞれのアプリケーションの要求条件は異なりますから、複数のネットワークを実装すると投資がかさみます。クラウド化することで、1つの共通ネットワークの上でソフトウエアによって各種アプリケーションを実現できるようになり、TCOの削減を実現できるのです」とチョー氏は説明する。

もう1つの5Gの技術的なポイントが、ネットワークスライシングである。これは、1つの共通化した物理的なネットワークの上で、複数の専用の論理的なネットワークを実現することを意味する。チョー氏は、「1つの共通のネットワークではカスタマイズしたサービスを提供するには不十分だという意見もあります。しかし、1つの物理的なネットワークの上に複数の専用の論理的なネットワークを構築すれば、規模の経済を損なうことなくバーチカルな要求に応えることができます。このネットワークスライシングは、ネットワークをクラウド化することで実現できるのです」と語る。5Gの重要なネットワークアーキテクチャであるネットワークスライシングは、クラウド化と表裏一体になって、コストとサービスの要求の両面を支えることになる。

ネットワークスライシング

さらにチョー氏は、「ノキアは、5Gの新しい技術をサポートしたエンドツーエンドのソリューションを提供することができます。アルカテル・ルーセントを統合したことで、モバイルネットワークだけでなく固定ネットワークやクラウド向けのネットワークインフラなどを統合的に提供できるようになりました。アプリケーション、分析、サービスによりネットワークの価値を生み出すケーパビリティを備えているだけでなく、ノキアテクノロジーズやベル研究所といったイノベーションを生み出す原動力も備えています」と、ノキアが5Gのエンドツーエンドのプロバイダーであることを強調した。

5Gのアプリケーション、自動駐車や360度映像視聴からスタート

チョー氏は、ここで技術からアプリケーションへと話を進めた。5Gがどのようなユースケースで有効に活用できるかへの考察である。

「自動運転車両(自律走行車両)が、通信業界でもよく使われる言葉になっています。センサーやコンピューターを使って自動運転するものですが、今は必ずしも通信のサポートを得ているわけではありません。私は、通信がサポートする自動運転車両のほうが、より安全性が高いと考えています。ここで5Gの通信機能が利用されるわけです」(チョー氏)。

しかし、自動運転車両には大きな問題があるとチョー氏は指摘する。それは、「なぜ、自動運転車両は人を殺すようにプログラムされなければならないのか?」というジレンマを含んだ課題だという。例えば、自動車の前に複数の人が飛び出してきたときに、直進すれば多くの死者が出る。それを避けるためにハンドルを切ると歩道の1人に衝突して死者が出る。どちらを自動運転車両は選択すべきか――といった問題だ。もっと突き詰めれば、1人の運転者と周囲の大勢の人と、どちらかしか助けられないシチュエーションで、自動運転車両はどちらを救うべきかという問題にもなる。多くの人数を救うには、自動運転車両はオーナーを殺さなければならない。このような倫理上のジレンマが自動運転車両にはあるとの指摘だ。

そこでノキアが自動運転車両のアプリケーションの第一歩として提案するのが、自動駐車(自律駐車)である。「運転手も乗客も乗っていないクルマを自動的に駐車させるだけならば、問題が起きたとしても人命を優先できるため、倫理的ジレンマが発生しません。一方で、人間が駐車場の空きを探して止めて、歩いて移動するといった作業に1日10分以上の時間がかかっていますから、何万人の人に大きな時間節約の効果が生まれます」(チョー氏)。

自動駐車(自律駐車)

そして自動駐車と5Gの相性の良さもあるという。自動駐車は、サービスが全国にすぐに5Gのネットワークを張り巡らせることは難しくても、駐車場のある特定のエリアであればサービスの早期提供も可能だ。またモバイルエッジコッピューティングとの相性も良く、5Gの価値を早期に感じてもらえるサービスとなるという提案である。

チョー氏は、もう1つのアプリケーションとして、VR(仮想現実)と5Gの関係についても説明した。VRは大画面化、高精細化が進み、没入型のVRで必要とされる帯域幅は400M〜700Mbpsになると指摘する。こうなると、将来的には5Gの高速性が求められる。

もう少し現実的なアプリケーションについてチョー氏は説明を続ける。「VRではゲームが人気ですが、これはモバイルで利用することは想定していないアプリケーションです。一方で、山手線の中で野球やサッカーのコンテンツを見るシーンは容易に想像できます。現状のHDのコンテンツなら、2Mbpsのスループットだとして、20人が同時に視聴していて40Mbpsです。これならばLTEでサポートできます」

ブライアン・チョー氏

ノキアはOZOという360度全方向のVRカメラを提供している。「これを東京ドームに設置すれば、リアルタイムの野球の試合をヘッドマウントディスプレーで全方向のコンテンツとして見られるわけです。全方向のデータは12倍のスループットが必要になるので、HDが2Mbpsだとしたら、全方向では25Mbps程度になります。これならまだLTEでサポートできそうですが、20人が同時に視聴したら500Mbpsの平均スループットが必要です。これはLTEではサポートできず、5Gが必要になります」(チョー氏)。

OZOを使った360度全方位画像の5GによるPoC(概念実証)デモは、会場内のデモスペースで体験することができた。5Gの低いレイテンシーによる制御の高度化も、デモで体験が可能だった。そうした体験から、5Gでどのようなアプリケーションが生み出され、新しいサービスと新しい顧客を拡大することができるかを感じることができる。Connected Futureは、ノキアが考える5Gの世界を体験し、来場者が5Gの新しいアプリケーションに思いを馳せる場でもあったのだ。

5G技術展示

講演会場のエントランスに当たるエリアでは、ノキアの技術展示が行われていた。5Gにかかわる展示は以下の2つだった。

5Gロボット

デモ会場には、ノキアの4G向けの商用プロダクトで構成された5GとLTEのマルチコネクティビティが実現可能なデモシステムが構築されていた。5GとLTEでは最大通信速度にも差があるが、もう1つ大きな違いとして遅延の差が挙げられる。LTEでは100ミリ秒といった遅延があるが、5Gでは無線区間が1ミリ秒以下の低遅延の実現が目標となっている。デモでは、5Gの低遅延性能を直感的に感じ取れる「5Gロボット」の動きが注目されていた。これは、ロボットアームが支えるボードの上にボールを載せ、カメラの映像を伝送して動きを制御し、ボードを水平に保ちボールの位置を安定させるというもの。これを、5GとLTEのマルチコネクティビティによって、5GとLTEを切り替えてその動作を比較していた。遅延の大きなLTEによる制御ではボードは水平を保てず、ボールはあちこち転がりまわる。低遅延の5Gに切り替えると、ボードの制御がスムーズになり、ボールはピタッとボードの中央に止まる。遠隔制御などのアプリケーションで5Gが有効なことを示すデモだった。

5Gロボット

OZOによるVRの5G無線伝送

実際にデモ会場に4.5GHz帯の5Gシステムを持ち込み、5G通信の可能性を実体験できるデモを行った。360度VRカメラのOZOは8つのカメラ映像を同時に伝送することで、360度の映像を再現するため、データ量が通常の映像よりも格段に多い。会場となったホテルの中庭に設置したの映像を5Gで伝送することで、デモ会場ではヘッドマウントディスプレーを使ってリアルタイムの360度映像の視聴ができることを示した。この5Gシステムは、8×8 MIMOで10Gbpsを超える高速通信を実現し、デモ環境では1.5GbpsのVRの映像データを送受信していた。

OZOによるVRの5G無線伝送

WirelessWire Weekly

おすすめ記事と編集部のお知らせをお送りします。(毎週月曜日配信)

登録はこちら

RELATED NEWS