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農業 霜 イメージ

小型太陽光パネルの発電でセンシング・通信、JAふくしま未来が防霜IoTソリューション

2017.04.27

Updated by Naohisa Iwamoto on April 27, 2017, 06:25 am JST

農業などでセンシングデバイスを活用したIoTを広域に適用しようとすると、センシングデバイスの測定や通信に必要な電力の供給がネックになるケースがある。ふくしま未来農業協同組合(JAふくしま未来)は、太陽光発電などの環境発電技術を用いた「エネルギーハーベスティング」を利用し、電源不要のIoT環境を整えて果樹の防霜対策を実施する。

JAふくしま未来の管内である福島県北地域の12市町村では、桃や梨、りんご、あんぽ柿などの果樹ときゅうりやトマトと言った野菜を多く生産している。この中でも果樹の栽培には霜による凍霜害が大きな被害をもたらす。これまでも対策として、降霜時の危険温度に達する前に果樹園で燃焼内を燃やして温度を上げると取り組みを実施してきた。この温度管理は、夜通しの人手を介したもので人的な負担が重くのしかかっていた。一方、IoT化の検討を進めてきたが、温度観測のセンシングデバイスを稼働させるための電源の確保や、モバイル通信のコストなどがネックになり実用化には至っていなかった。

今回、NTT東日本の圃場センシングソリューション「eセンシング For アグリ」を導入することで、これらの課題の解決を図る。観測データを測定するセンサーと無線通信するための電力は、小型の太陽光パネルによる発電を使ったエネルギーハーベスティングでまかなう。また通信にはモバイル回線費用が不要で低消費電力のLPWA(Low Power Wide Area)通信方式を採用し、通信コストと電力の双方の課題に対応する。

▼JAふくしま未来が導入するNTT東日本の「eセンシング For アグリ」のイメージ(NTT東日本のニュースリリースより)20170426_JA001

具体的なソリューションとしては、「温度」「湿度」「照度」などのセンシングデータを、NTT東日本のオンラインストレージサービス「フレッツ・あずけ~る」に自動的に送信。収集したデータを見える化して、スマートフォンアプリやパソコンなどから圃場の環境の管理を可能にする。リアルタイムな監視ができるだけでなく、人的な負担をかけずに降霜の危険性をスマートフォンに警報メールで知らせるといったことが可能になる。

JAふくしま未来では、果樹の降霜対策での実績を踏まえて、水稲の刈り取り適期や農薬散布の防除適期の提示、果実収穫適期の提示などに活用を広げる計画だ。福島地区以外への導入も検討する。NTT東日本も果樹栽培の防霜対策ソリューションとしての展開を進めるとともに、その他の生産現場の要望への対応も推進する。

【報道発表資料】
圃場(ほじょう)センシングによる果樹の生産管理の新たな取り組みについて

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。