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モバイルトラフィックの増大に伴い、公共Wi-Fiの需要は増していますが、運用者にとってはそのコストをどう捻出するかが大きな課題となっています。公共Wi-Fiの収益化に取り組むWiConnectのBrian Jacks氏が、全く異なるアプローチで行ったニューヨークとモスクワの地下鉄の収益化を紹介します。

Founder of WiConnect LLC (formerly VP Corporate Development for Transit Wireless) Brian D Jacks氏

Founder of WiConnect LLC (formerly VP Corporate Development for Transit Wireless)
Brian D Jacks氏

 

公共Wi-Fi収益化が面白い理由

アメリカではインターネットトラフィックはデスクトップからモバイルに移行しています。2016年のデータでは1日5.7時間のインターネット利用のうち3.1時間がタブレットを含むモバイルデバイスによる利用です。

これはアメリカだけではなく世界的な傾向です。全世界のインターネットトラフィックの5割以上をモバイルが占めています。これに伴い、インターネット広告費もモバイル広告に費やされる比率が上昇しており、2016年には44%の広告費がモバイルに費やされています。2019年にはこの比率が65%にまで高まると予測されています。

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モバイル通信への需要が高まる中、Wi-Fiネットワークへの移行は進んでいます。多くのセルラーデバイスにはWi-Fiが搭載されていますし、コーヒーショップ、ショッピングセンター、飛行機、ホテルなど、さまざまな場所で公共Wi-Fiが提供されています。それらは当然無料であることが期待されており、利用者はどこにいてもまず無料の公共Wi-Fiが使えることを確認します。2020年には全世界で5億5000万ヵ所のWi-Fiアクセスポイントが利用できるようになると予想されています。

しかし現実的にはWi-Fiネットワークの構築と維持にはコストがかかります。無料で提供するWi-Fiをどのようにして収益化し、コストを捻出すれば良いのでしょうか。それこそが我々がWiConnectを設立した理由です。コーヒーショップではWiFiを提供することにより、より多くのコーヒーを売ることが可能になります。このようにコストを相殺するモデルが必要だと感じたのです。

公共Wi-Fi収益化の手段は、場所、利用者、データ利用パターンによって異なります。また、1つのインフラを複数のユースケースで共有することにより、利用効率を最大化できます。

ニューヨーク地下鉄の例:一つのインフラに複数のサービスが相乗り

ニューヨーク地下鉄は、「TransitWireless」というワイヤレスサービスを提供しています。280以上の駅で24時間Wi-Fiが利用可能で、474駅まで拡大予定です。5000以上のアクセスポイントが設置されています。設備投資は地下鉄の運営者が行っており、投資を相殺する収益を上げることが課題でした。

そのために我々はまず、ネットワークの関係者に協力をいただいて、190km以上の光ファイバーを敷設し、地下鉄内で1100万セッションのWi-Fi接続を行えるようにしました。駅には、Wi-Fiだけでなく4.9GHz帯やモバイルなど複数のアンテナがセットされたアクセスポイントを設置します。その上で複数の収益化サービスを提供したのです。

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まず、オペレーター向けにはDASを提供して、トンネル内でのモバイル接続を可能にすることで収益を得ました。公共Wi-Fiについては、広告設備を代理店に提供し、広告を出稿することで、収益化を図っています。ビーコンを利用して、Wi-Fiを使用している位置を特定し、それに応じた広告を出したりもします。また、Wi-Fiネットワークを利用して、駅や電車内へのデジタルスクリーンネットワークへの接続を提供し、広告の配信を行います。およそ5万スクリーンに配信することができます。

4.9GHz帯のアンテナは、パブリックセーフティネットワークとして使用します。プッシュトゥートーク(PTT)で緊急通話ができるキオスクが1500カ所に設置されています。また、決済システムもこのネットワークを使ってアップグレードして、クレジットカード決済でチケットを買えるようにしました。複数のアンテナを同時に展開する事でコストを抑えると同時に、この様な手法で収益をあげることに成功しました。

サンドバインのプラットフォームは、公共Wi-Fiネットワークの品質向上、パケットのプライオリティ制御や利用時間管理などに使用されています。

モスクワ地下鉄の例:高効率な広告による収益化

次にご紹介するモスクワ地下鉄のケースでは、駅ではなく車内でWi-Fiを提供しています。サービスを展開しているのは、サードパーティであるMaxima Telecomと自治体です。総延長330kmの路線で、5400の列車編成がなされています。年間25億人が利用しており、100Mbpsの接続を提供しています。ヨーロッパでも最も大きいWi-Fiネットワークの一つです。

収益化は主に広告で行われます。無料でWi-Fiを利用したい人には広告を表示し、広告を見たくない人にはサブスクリプションモデルで提供します。モバイルオペレータ向けにはFemto 基地局のサービスも展開されています。Wi-Fiの認証ページが広告スペースとして利用されており、認証を済ませるまでの間、画像もしくは動画広告のいずれかが表示されます。年間80億インプレッションと大変魅力的で、来年まで既に売り切れています。

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出稿される広告はランダムではなくターゲティングされています。Le Pain Quatidienのケースでは、広告主の顧客データベース内から、直近3ヶ月買い物をしていない人の電話番号を抽出し、広告の中から適した商品やサービスの広告を配信しました。結果、通常のおよそ10倍にあたる2%のクリック率を達成しました。また、単にクリックしただけでなく、多くの方がサイトに行き実際の買い物がなされており、700%のROIを達成しました。

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ネットワークをただ切り売りすることもできますが、広告の場合は特定の消費者グループに対してメッセージを届けることで、より効率的な収益化が可能になります。

場所に合わせた方法の選択が重要

ニューヨークとモスクワ、2つの公共Wi-Fi収益化の事例をご紹介しました。ネットワーク構築コストの負担は必要ですが、収益化は可能です。ニューヨークでは既に存在しているネットワークの活用、モスクワでは主に広告が収益源になりました。モスクワの取り組みをニューヨークで試しても上手くいかないでしょう。逆もまた然りです。

駅、スタジアム、コーヒーショップ、コンベンションセンター、ホテル、公園など場所に応じたアプローチが必要です。また、その場所のお客様は誰なのか、データはどの様に使用されているのか、ユースケースは何なのかを知ることが重要です。場所に応じて、ビデオサーバーを追加してコンテンツを流す、サイネージを各駅に設ける、B2B接続を可能にする、WiFiサービスを販売する、コンテンツ、ローミングやオフローディング、IaaSなど、さまざまな方法が考えられます。

マネタイゼーションプラットフォームに、サンドバインのDPIソリューションを組み込むことで、デバイス情報とアクセスしたURL情報やアプリの利用状況などを取得できます。これは広告のターゲティングに活用できます。

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DPIにより特定された広告インベントリを蓄積し、それを顧客にあわせて活用する方法を提案します。例えばホテル、航空会社など、顧客に応じて欲するデータを提供します。それらを利用いただくことで、広告主によりROIの高い広告を購入していただけます。これによって、競合他社と差別化することができるのです。こうして、無料Wi-Fiの収益化が可能になるのです。

Founder of WiConnect LLC (formerly VP Corporate Development for Transit Wireless) Brian D Jacks氏

【関連情報】
ネットワークインテリジェントを提供する サンドバイン
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