original image: © daddy448 - Fotolia.com
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イスラエルのスタートアップ「6over6」(2014年設立)は、特別な器具を使わずにスマートフォンを利用して視力を検査するアプリを開発している。
小中学校の視力検査は、片目を塞いで離れた場所の「C」のような記号の切れ目の向きを判別できるかどうかで近視の度合いを調べることが中心だが、眼科での検査や、メガネやコンタクトレンズを誂える場合の検査には、もっと複雑かつ高度な検査内容となる。角膜形状や眼球の屈折率を計測する光源、レンズや受光器を組み合わせた装置が使われる。
6over6のアプリは、現在のところイスラエル、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの各国で利用できる。FDA(連邦食品医薬品局)の承認を得ているため、近々に米国でも利用可能となるほか、インドへの展開も発表されている。
アプリのひとつ「GlassesOn Pupils」は、PDメーター(瞳孔間距離計)アプリ。スマートフォンの画面とカメラを使い、特別なアタッチメントなどを使わずに計測できるという。「GlassesOn Lenses」は、スマホのほかにPCの画面も使って自分がすでに持っているメガネのレンズの度数などを計測するレンズメーターのアプリ。乱視測定の可能な「GlassesOn Eyes」は現在開発中。ただし、日本からはベータ版も含めてアプリ(iOS/Android)のダウンロードはできない。
インドでは、「Lenskart」というメガネ店をチェーン展開している会社が6over6を採用して、メガネのオンライン販売に活用するべく検証中、と報じられている。自宅などで正確に検眼して、ネットで選んだフレームとレンズのメガネが宅配されるようになれば便利で、メガネ店にとっては大きな商機だろう。
かつて、服や靴などサイズやデザインにバリエーションがあるものはネットでは売れない、売れるのは書籍や音楽CDなど、どこで買っても同じようなものだけだ、といわれた時代もあるが、今ではアパレルも靴も普通に売買されている。今でも、眼科やメガネショップで度数を測ってもらえば、メガネをネットで注文することが可能だが、将来はメガネショップに足を運ぶ手間も、眼科に診療代を払うこともなく、スマホでメガネが買えるようになるのかも知れない。
GlassesOnシリーズは、眼科医の代替となるつもりはないと明言している。また、個人が検眼したり、メガネの度数を測ったりすることがオンラインショッピングを中心に大きなビジネス機会だと捉えているであろうことは間違いないが、さらに途上国での活用も視野に入れているようだ。
眼科健診に高額な装置が必要となると、度の合ったメガネを調整することが難しくなる。作業着などであれば、多少のサイズ違いなど、我慢の範囲ということもあるだろうが、メガネが合わない場合、短時間でも頭痛などの原因になり、とても実用に耐えるものではない。視力に問題があるままでは、仕事に差し障りがある。適切な視力矯正ができないことが貧困の負の連鎖の一因になっていることから、スマホを活用した検眼システムは以前から注目を集めている(「視力の格差をなくしたい・・・・・・! 視力検査ガジェットに込められた熱い思い」)。特別なアタッチメントが不要という6over6のアプリは、そんな中で画期的なものであると思われる。
【参照情報】
・Optometry app lets you perform your own eye test
・Peter Thiel Co-leads Investment Round in Israel's ChemomAb
・Lenskart picks up stake in Israel's 6over6 for $1 million
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