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働き方改革もテレワークも “いま風” を意識して推進してゆくべきだ

働き方改革もテレワークも “いま風” を意識して推進してゆくべきだ

2019.05.20

Updated by WirelessWire News編集部 on May 20, 2019, 08:40 am UTC

2019年4月、大企業を対象に働き方改革関連法が施行された。こうした中で、残業時間の減少だけでなく、働き方改革推進のキーとしてテレワークを実際に活用する企業が増えている。一方、中小企業に対しては1年後の2020年4月から同法が施行されるが、テレワークの活用はおろか、検討すら進んでいるとは言えない現状がある。テレワークの導入が働き方改革のすべてではないが、手段であるテレワークですら活用できていないということは、中小企業の働き方改革自体に暗雲が立ち込めていると言わざるを得ないであろう。

そこで、テレワークを推進する一般社団法人日本テレワーク協会の客員研究員で、昨年度設立した中小企業テレワーク普及・定着推進部会 部会長 小国幸司氏に、中小企業の現状と今後の施策について聞いた。

働き方改革もテレワークも “いま風” を意識して推進してゆくべきだ

テレワーク協会の設立と活動について

まず、テレワーク協会とは何を目的とした団体でどのような活動をしているか。

「日本テレワーク協会は、任意団体として1991年に設立された日本サテライトオフィスの協会がその前身だ。2000年にサテライトオフィス協会から日本テレワーク協会へと名称が変更され、現在の会員数は292社・団体になる。」(小国氏)。

テレワークと言うと在宅勤務が注目されるが、在宅勤務にモバイルワーク、サテライトオフィスを加えた3形態で定義されている。テレワーク協会の活動は、テレワークの推進省庁である総務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省などや東京都等の自治体の普及啓発施策や事業のサポート、政策提言、テレワーク相談センターの窓口の運用、推進のセミナーの実施など多岐にわたる。さらには、協会独自活動として、テレワーク推進賞、トップフォーラムの開催や書籍の出版など、テレワークの普及啓発に関わる活動を幅広く行っている。

日本テレワーク協会には、様々な研究部会があり、その一つが中小企業テレワーク普及・定着推進部会である。実際に中小企業はテレワークの導入が非常に低い。何故、こんなに低いのかをまとめて、中小企業や地方自治体などが最適な活動に取り組めるような情報整備、市場作りの手伝いをして“背中を押す”活動を行うべく、中小企業テレワーク普及・定着推進部会が2018年の4月に立ち上げられた。「現在40社程度の企業や、社労士や弁護士などの士業の方々も参加し、ここまで、4回総部会として開催している」と小国氏は説明した。

異様なまでに大きい、大企業と中小企業の差

従業員5000人以上の企業ではすでに60%以上がテレワークの導入をしている。「大企業では企業自体にリソースがある、企業体力もある。テレワークの導入を提案するベンダーもサポートするだけの実入りもあるために、積極的であることで導入は進みやすい。一方、中小企業ではこれが全く逆のケースが多い。つまりはリソースがない、企業体力も落ちる、ベンダーも提案しても実入りが小さくなるために積極的にはならないのである。中小企業にとっては、当然目先の本業が最重要であり、テレワークが必要とわかってはいてもなかなか導入までに至らない」と小国氏は分析する。

以上が背景となり、テレワークの導入率は大企業で60.2%であることに対して中小企業は10.1%と大きな差がある。「中小企業においてもテレワークという言葉は使わなくても、実際にやっているケースもあるであろうが、低いことには変わりはないであろう」と小国氏はコメントした。

▼出典: 「平成29年通信利用動向調査」総務省、2018年7月
出典: 「平成29年通信利用動向調査」総務省、2018年7月

中小企業テレワーク普及・定着推進部会では、現状10社に1社の普及率を5社に1社、さらには2社に1社まで伸ばすために必要な要素は何か、何があるとより着手しやすいかを考えることから始めている。すでに大企業の多くが採用していることを考えると、今後日本全体のテレワーク普及率を上げるには中小企業での普及が必要であり、中小企業のそれが上がれば、日本全体の普及率が上がることにつながるためである。

その施策として、中小企業テレワーク普及・定着推進部会ではサブ部会として、5つテーマを決めてそれぞれで議論を続けている。

働き方改革もテレワークも “いま風” を意識して推進してゆくべきだ

人材問題:中小企業における「人材」の採用・雇用維持・活用のための手段としての「テレワーク」の意義・効果について

地方:地方の企業や自治体の取り組みでの課題などの整理。東京を中心とした都市圏以外での普及率を高めるにはどうするか

ICT:テレワーク導入のためにどのようなツールがあるか。実際に何を使えばいいかをたな卸しをする。これはテレワーク協会内でテレワーク最新技術動向研究部会がICTツールを網羅的にまとめ、冊子も提供しているので、その中から中小企業に有効なものは何か、足りないものはないか・・などを研究する

生産性向上:テレワークによって生産性は向上する、という前提の元、誰にどのように情報を届け、有効性を理解してもらい効果を最大化するかを考える

意識の向上:テレワークは関係ないという企業、“うちはいい”という企業が多い中、この意識を解きほぐすためにどうすればいいのか、どう説明するのがいいのか。この意識面が一番重要であるかもしれないと小国氏はコメントした。

勧めても推進方法もメリットも理解できない

中小企業であっても、ITの活用、テレワークの導入により大企業に負けないくらいのポテンシャルを発揮できる企業はある。それなのにITやテレワークから距離を置くのはなぜだろうか。

小国氏は、「中小企業からは、そもそもテレワーク自体よくわからない、本業へのメリットがわからない、情報が多すぎてうちに関係ある話でまとめて欲しい、という声やニーズが存在する。一方、テレワークを提案するITベンダーなどの立場からすると、中小企業のニーズは簡単に共通化できないし、提案をしても規模も小さく、ビジネスになりにくい。日本テレワーク協会など普及推進者としても、情報は出しても全ての中小企業に都合よく届かないというジレンマを抱えている。中小企業、ITベンダー、普及・推進者の3者それぞれに悩みがあって、それがうまく結びつきにくいところにも課題はある」とした。

働き方改革もテレワークも “いま風” を意識して推進してゆくべきだ

中小企業でも、テレワークやIT導入のセミナーに参加したり、検討したりするところまでは取り組む企業は増えてきている。導入したいけどやり方がわからない、どうしたらいいかなどの具体的な質問がここ数年増えていると小国氏は身をもって感じている。

大企業の場合は様々な部署にまたがって、社内のコンセンサスを得るのは大変である。その後、様々なルールや労務規定などを変えなければならない。しかし、中小企業は経営者の「鶴の一声」で導入自体は決定できる場合がある。つまりは中小企業では社長の意識が変われば新たなルールでも取り込みやすい。そこで「ツールの選定もパッケージ化してあげればテレワークは推進しやすいはずだ。ただし、これはベンダーも儲かるような仕組みが最低限必要だ。経営者が抱くケースバイケースの課題感に対して、ソリューションを上手く提示してあげることが大事であり、今後はそのスキームを構築し推進したい」と小国氏は意気込む。

一方、元々自分たちと関係ない、そこまで考えなくてもいいのではないかという企業も相変わらず多いのは確かである。小国氏がテレワークマネージャーとして企業訪問すると、IT自体が全くわからない、触れてもいないといった企業は存在する。極端な話ではタブレット型のノートPCの存在ですら驚かれるケースがあったようだ。このような状況ではテレワーク導入を考えるというステージにはなかなかなりにくい。こういった、情報が届かない中小企業はどうするか。

「部会の活動の中で、地方でのイベント開催時に実際にヒアリングを行ったところ、地方の中小企業に対してはその地方の商工会、同友会などの団体のメッセージならば届くということを知見として指摘された。現在は仮説ではあるが、こういう団体を経由してのメッセージ提供が有効かもしれず、チャレンジしていきたい」と小国氏は考えている。

中小企業テレワーク普及・定着推進部会の今後の活動

人口は減っている、労働力も減っている。その一方でITは急速に進化している。小国氏は、この変化にまだ気づいていない中小企業に、ITやテレワークの普及啓発活動が必要になると指摘する。「ここまで課題の出し合いをし、研究を続けてきた。これを何らかの形で中小企業に伝えるのが2019年のステージである」(小国氏)。

大企業では、働き方改革法の施行が始まった。それにより、大企業の仕事が下請け(中小企業)に回るといったあおりを受けているとの記事も多く見かける。そうした課題については、「残業時間を減らすことだけを目的とすることが働き方改革ではない。大企業型の労働人口が増加していた時代の大企業主体型の下請けの中小企業という構造が限界に来ている。そうした環境では、自分たちで解決していける企業がある一方で、疲弊していく企業も出てくる。ここでは、いかに自分たちで真剣に課題と向き合って解決策を考えられるかがポイントになる。大企業主体の従来型の考え方を乗り越えて、自分たちの強みを考えている企業が増えている」と小国氏は今後に光を感じている。

今年が最後のテレワーク・デイズ。ただ、東京五輪はただの通過点である。

英国では、2012年に開催されたロンドンオリンピックにおいてテレワークを推進し、ロンドン市内での普及に成功した。ロンドンではオリンピック期間中8割の企業の人が五輪開催域内に入らなかったと言われる。それにより、観戦者、ツーリストは快適にオリンピックを楽しめた。東京五輪でもそれと同様の成果を目指している。

日本では2017年から2020年の東京オリンピックの開会式の日程に合わせて7月に「テレワーク・デイズ」を行っている。大企業を中心に多くの企業は協力的ではあるが、 “2020年までは”という意識になってしまうことに不安があると小国氏は言う。そこで経営者の集まりでは、意識的に “アフターオリンピック” について話題にしている。働き方改革は、一度の機会や一定の時期だけで終わらせるものではなく、継続することが大事である。つねに時代適合が必要なわけである。つまりは、今この時点でアフターオリンピックのことを考えておくべきだと小国氏は指摘する。

働き方改革もテレワークも “いま風” を意識して推進してゆくべきだ

「テレワークの普及啓発にしても、ITの推進にしても、時代適合が必要で、今働いている人は何を求めているか、何を提供できるのかを再度考えるべきであろう。今は人口、労働力も減少し、人の価値観も変わっている。昭和世代、平成時代、今後の令和時代と価値観は大きく変わっていく。

ブームのようになっているが、つねに環境は変化・進化する。時代に適合した価値観に合わせること、つまり“いま風”(今っぽさ) が重要だ。ITがさらに進化してこれまで以上に急速に社会は動いていくので、我々も常に“いま風を意識してやっていきましょう”」とインタビューを締めくくった。

セキュアIoTプラットフォーム協議会はテレワーク協会と連携し、テレワークにおけるセキュリティの強化という面からテレワークの普及啓発、支援に取り組んでいる。

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