WirelessWire News Technology to implement the future

by Category

羊肉 調理 イメージ

10)羊のカレーに醍醐味あり

2019.05.21

Updated by Toshimasa TANABE on May 21, 2019, 14:43 pm JST

唐突ではあるが、私は札幌で生まれ育った人間である。そういうわけで、ジンギスカンがソウルフードであり、とにかく羊の肉が好きである。一番好きな肉は何? と訊かれたら、迷わず羊と答える。インドカレーでも同様で、羊のカレーが最も好きなカレーである。この連載で、豆や野菜のカレーこそがインドカレーの「真髄」と書いてはいるが、羊のカレーには「醍醐味」があると思っている。

羊のカレーにも、バリエーションがある。トマトベースサグ(ホウレンソウ)ベースか、あるいはスパイス使いのバリエーション、さらには塊の肉を食べやすいサイズに切って使う、ラムチョップをそのまま使う、ひき肉を使うなどいろいろある。

羊の肉は、とても上質なものが安くはないものの手に入るようになった。マトンの冷凍成型肉がソウルフードという身としては、昨今の生ラムなどは上品に過ぎる、などという贅沢な悩みさえあるほどだ。なお、ラムは生後1年くらいまでの子羊、マトンは成長した羊のことである。マトンの方が肉質が固いし、羊特有の香りは強い。

いずれにしても、鶏肉とは違った独特の香りがあるので(それが苦手、という方も多いと思うが)、強めのスパイスを合わせることで、羊の味わいとスパイスとの相乗効果を楽しむのが羊のカレーである。菜の花で作ったほろ苦いサグカレーなども、羊と良く合うと思う。

今回は、師匠のメヘラ・ハリオム氏のレシピから二つ紹介したいと思う。「マトンカレー」と「ラムチョップマサラ」である。いずれもブログやWebには掲載されていないものである(分量などを明記した詳細なレシピは別途掲載の予定)。この二つのレシピには共通する点が多いので、羊のカレーの基本的なポイントがよく分かると思う。

どちらのレシピでも、肉は前日にスパイスに漬け込んでおく。また、羊の肉は鶏などよりも固いので、柔らかくなるまで多少時間をかけて煮込む必要がある。材料にあるニンニクショウガ・ペーストは、ニンニクとショウガを同量すりおろして合わせ、水で少し伸ばしたペーストである。また、ここでも基本の3種類のスパイス(パプリカ、ターメリック、カイエンペッパー)がメインのパウダースパイスとして使われている。


■マトンカレー

マトンを使ったカレー。独特の香りに対応して、シナモンやメースなども加えた強めのスパイス使いとなっている。材料は、

・マトン
・ニンニクショウガ・ペースト
※ここまで前日に仕込むもの。

・玉ねぎ
・トマト
・ショウガ
・ニンニクショウガ・ペースト
・サラダ油
・水

・仕込み用スパイス
 カイエンペッパー
 パプリカ
 ターメリック
 ガラムマサラ
 塩

・ホールスパイス
 カルダモン
 ブラックカルダモン
 ベイリーフ
 シナモン
 メース

・パウダースパイス
 カイエンペッパー
 パプリカ
 ターメリック
 塩

・仕上げ用パウダースパイス
 カスリメティ
 ガラムマサラ

1)
前日に、肉とニンニクショウガ・ペースト、仕込み用スパイスを合わせて冷蔵庫で一晩寝かせる。

2)
サラダ油をじっくり熱してホールスパイスの香りを出す。

3)
香りが出たら、みじん切りにした玉ねぎを加えて透き通るまで炒める。

4)
ニンニクショウガ・ペーストを加えて炒める。

5)
あらみじんにしたトマトを加え、少し崩れてきたらパウダースパイスを加えて炒め、全体をペースト状にする。

6)
スパイスに漬け込んでおいた肉を加える。

7)
水を加えて肉が柔らかくなるまで煮込む(時間がないときは圧力鍋を使ってもOK)。

8)
仕上げのパウダースパイスを加えて完成。


■ラムチョップマサラ

ラムチョップを使ったちょっと汁気少なめのカレー。マトンよりは多少抑えめではあるもののスパイスは強めにしてある。さらにスパイスに加えて、ヨーグルトとレモンの酸味、みじん切りで加えるショウガの食感が多少残ったフレッシュな味わいがポイントだ。材料は、

・ラムチョップ
・ヨーグルト
・レモン汁
※ここまで前日に仕込むもの。

・玉ねぎ
・トマト
・ショウガ
・ニンニクショウガ・ペースト
・サラダ油
・水

・仕込み用スパイス
 カイエンペッパー
 パプリカ
 ターメリック
 ガラムマサラ
 塩

・ホールスパイス
 カルダモン
 ブラックカルダモン
 ベイリーフ

・パウダースパイス
 カイエンペッパー
 パプリカ
 ターメリック
 塩

1)
前日に、ラムチョップとヨーグルト、レモン汁、仕込み用すスパイスを合わせて冷蔵庫で一晩寝かせる。

2)
サラダ油をじっくり熱してホールスパイスの香りを出す。

3)
香りが出たら、みじん切りにした玉ねぎを加えて透き通るまで炒める。

4)
ニンニクショウガ・ペーストとショウガのみじん切りを加えて炒める。

5)
トマトを加え少し潰れてきたらパウダースパイスを加えて炒める。

6)
スパイスに漬け込んでおいたラムチョップを付け汁ごと加える。

7)
水を加えて40分以上煮込む。


さらにもう一つ、こちらは以前に紹介したトマトのカレーベース、あるいはサグのカレーベースを使って作る羊のカレーを紹介しておく。肩ロースや薄切りのラムなどが手に入ったときに、若干、方便な感じもなくはないが簡単に作ることができる。

肉は食べやすい大きさに切り、パウダースパイス(基本の3種類であるパプリカ、ターメリック、カイエンペッパーに加えてブラックペッパーなども良いと思う。この辺はお好みで)とガラムマサラ、塩で軽く下味をつける。カレーベースが既に十分な味なので下味は軽くで良いし、前日でなくて良い。

1)
鍋に油を敷いて、カルダモンとブラックカルダモンを入れて香りを出す。

2)
香りが出たら、カレーベースを加えて温める。

3)
カレーベースが温まってフツフツしてきたら、下味を付けたおいた肉を加えてしばらく混ぜながら加熱する。

4)
水を加えて塩気を調整し、肉が柔らかくなるまで煮込む。

5)
最後にガラムマサラをちょっと多め(普段の1.5倍くらい)に振り入れる。

骨付きのラムチョップを使う場合は、先に紹介したラムチョップマサラのように、そのまま骨ごとカレーにしても良いのだが、ラムチョップの骨を外してそれでスープを取って、その羊の味が濃厚なスープでカレーを伸ばしても美味しい。ちょっと羊の味がキツ過ぎて苦手、という場合は水で伸ばせば良い。牛乳を少し入れてもマイルドになって食べやすいだろう。

上記手順の2)でカレーベースを加える前に、玉ねぎをざく切り(1.5センチ四方くらい)にしたものを入れて、軽く炒めてからカレーベースを加えると「ラム・ド・ピアザ」になる。ラムのダブル玉ねぎ(ピアザ)カレーという意味で、カレーベースの中の煮溶けた玉ねぎと後入れの食感を残した玉ねぎでラムを味わうカレーである。

いずれのレシピでも、羊の個性の強さに対応して、カレーベースにブラックカルダモンの香りを加えたり、ガラムマサラを多めにしたりして、スパイス感を強めにするわけだ。写真は「まかない」で作ったトマトベースとサグベースの羊のカレーである。

ラムのカレー2種類

 


※本連載は、横浜市都筑区のインド家庭料理「ラニ」のオーナーシェフであるメヘラ・ハリオム氏と、同氏を師と仰ぐ田邊(富士山麓のcafe TRAILでカレーを提供中)の共著という形で、インドカレーのセオリーについて考え、それを分かりやすく提示する試みです。もちろん、いくつか代表的なカレーのレシピも掲載していきますが、いわゆるレシピそのものを紹介すること自体は目的ではありません。このレシピはなぜこうなっているのかを理解することで、レシピを見なくても、自分にとって美味しいインドカレーが作れるようになることを目指しています。また、各種スパイスについての解説は、食材やスパイス同士の組み合わせや相性を中心とし、スパイスの歴史や特性などについては、他に優れた本がたくさんあるので、それらにお任せするというスタンスです。


※この連載が本になりました! 2019年12月16日発売です。

書名
インドカレーは自分でつくれ: インド人シェフ直伝のシンプルスパイス使い
出版社
平凡社
著者名
田邊俊雅、メヘラ・ハリオム
新書
232ページ
価格
820円(+税)
ISBN
4582859283
Amazonで購入する

WirelessWire Weekly

おすすめ記事と編集部のお知らせをお送りします。(毎週月曜日配信)

登録はこちら

田邊 俊雅(たなべ・としまさ)

北海道札幌市出身。システムエンジニア、IT分野の専門雑誌編集、Webメディア編集・運営、読者コミュニティの運営などを経験後、2006年にWebを主な事業ドメインとする「有限会社ハイブリッドメディア・ラボ」を設立。2014年、新規事業として富士山麓で「cafe TRAIL」を開店。2019年の閉店後も、師と仰ぐインド人シェフのアドバイスを受けながら、日本の食材を生かしたインドカレーを研究している。