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「5G×AI」法人向けソリューション、ドコモとKDDIのちょっと異なるアプローチ

2019.09.04

Updated by Naohisa Iwamoto on September 4, 2019, 06:25 am UTC

5Gが普及すると、大容量で低遅延のモバイルデータ通信が広く利用できるようになる。すなわち映像データなどをAIで解析するプラットフォームとして、5Gが効果的に活用できることが期待されている。2019年8月末から9月初頭にかけて、NTTドコモとKDDIがそれぞれ5GとAIを組み合わせた法人向けソリューションについて、異なるアプローチの取り組みの発表を行った。

▼NTTドコモが出資したEDGEMATRIXのエッジAIの3つの事業領域

NTTドコモは8月29日、エッジAI事業を手掛けるEDGEMATRIX(エッジマトリクス)に出資、業務提携を行い、エッジAIプラットフォームを共同で事業化することを発表した。EDGEMATRIXは、米Cloudianから同社のAI事業の譲渡受けて設立したスタートアップ。データが発生した現場、すなわちエッジでAIの処理を行い、精度やリアルタイム性、コストなどを高める「エッジAI事業」の展開を進める。

EDGEMATRIXのエッジAI事業には、「エッジAIデバイス事業」「エッジAIプラットフォーム事業」「エッジAIソリューション事業」3つの事業領域がある。エッジAIデバイス事業では、エッジに設置してAI処理を行うハードウエアの「Edge AI Box」製品群を提供する。パフォーマンスを優先したAdvance、費用対効果を高めたStandard、小型軽量で低価格のLight(開発中)の3つの製品ラインがあり、屋外設置型などのバリエーションも用意する。特に注力するカメラ映像の分析では、カメラ分離型の構成により既設のカメラの利用が可能なだけでなく、解像度、赤外線対応、価格など用途にあったカメラを選択して利用できる。エッジAIソリューション事業では、AI開発企業などとのパートナーシップにより、高いコスト対効果で実用化を視野に入れたカスタムソリューションを提供する。エッジAIプラットフォーム事業では、NTTドコモとの協業で今後の5Gなどモバイルネットワークをエッジとの間に活用し、クラウド上に設けるプラットフォームにAIアプリのマーケットプレイスやデバイス管理コンソールなどを用意することで、AIソリューションの活用を推進する。

▼エッジAIプラットフォーム事業を説明するEDGEMATRIX代表取締役社長の太田洋氏

NTTドコモはEDGEMATRIXの前身のCloudianのAI事業部門と共同で、2018年度からEdge AI Boxを使った検証を実施してきた。映像を使ったAIソリューションは5G時代に強いニーズがあると見込み、両社によるプラットフォーム提供に乗り出した。エッジAIではエッジAIデバイスが分析処理を行うため、通信部分にかかる負荷は少なく、エッジで分析した結果をクラウドで処理するといった協調動作が中心になる。5Gの高速大容量と低遅延の性能を生かしたAIソリューションの利用を容易にするプラットフォームの提供で、新しい産業創出や課題先進国の課題解決への貢献を目指す。

▼「映像×5G」の5G対応ソリューションを発表するKDDI ビジネスIoT企画部長 原田圭悟氏

KDDIは9月2日、法人向けの5G対応ソリューションを発表した。「映像×5G」でデジタルトランスフォーメーションを加速することを狙う。5Gと高精細動画像、AIを組み合わせた3つのソリューションをパッケージとして2020年3月に提供開始する。これに先駆けて、2019年11月にはKDDIのビジネス開発拠点「KDDI DIGITAL GATE」で5Gトライアル環境を提供し、事前に法人顧客のビジネス開発を支援する。

5G対応ソリューションで提供するのは「AIカメラ」「Intelligent Display」「3Dホログラム」の3つのパッケージ。通信部分だけでなく、デバイスからクラウド、分析まで一括してKDDIが提供することが特徴である。パッケージは月額料金で提供され、AIカメラの場合はサーバー1台あたり月額4万円から、カメラ1台あたり月額1万6000円から、Intelligent Displayは月額4万9000円から、3Dホログラムは月額7万7000円からといった料金を予定している。さらに2020年3月以降は5Gの通信料金もバンドルした月額料金の設定も行う予定だという。

▼ビジネスIoTクラウドで提供する3つの5G対応ソリューション

AIカメラでは、高精細画像を5Gでクラウドに高速転送してAIによる分析を行い、店舗の滞在時間分析、空席情報可視化、危険な範囲への立ち入り検出などをサービスとして提供する。Intelligent Displayでは、ディスプレイに設置したカメラで撮影した映像をクラウドでAI分析して人物属性を判別し、属性に適したコンテンツを提供するようなサービスを提供する。3Dホログラムではヘッドマウントディスプレイを使わずに3Dの立体映像を表示させ、モーションセンサーによって手の動きなどを使って自由に3D立体映像を動かしたり、触感のある3D映像の操作体験ができたりする。いずれも5Gの回線を介してデータをクラウドとやり取りし、AI処理と合わせて機能を提供する。

分散処理のメリットを生かせるようにするエッジAIのプラットフォームを推進するNTTドコモと、エッジにインテリジェンスのあるハードウエアを設置するデメリットを廃して5Gの通信をフルに活用したクラウド処理をパッケージで提供するKDDI。5Gの緒戦のAIへの取り組みが異なるアプローチで進むことで、さまざまなアプローチがユーザーにとって適材適所となる可能性に期待したい。

【報道発表資料】
EDGEMATRIXとドコモがエッジAIプラットフォームの事業化に向け、出資および業務提携に合意(NTTドコモ)
EDGEMATRIX が米国 Cloudian からスピンオフし、NTT ドコモ、 清水建設、日本郵政キャピタル 3 社からの資金調達および協業(EDGEMATRIX)
「映像×5G」でデジタルトランスフォーメーションを加速 法人向け5G対応ソリューションの提供開始(KDDI)

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。