WirelessWire News Philosophy of Safety and Security

by Category

高齢者 PC 視聴 イメージ

コロナ禍でユーザー獲得戦略の見直し

Review user acquisition strategy after corona

2020.09.24

Updated by Mayumi Tanimoto on September 24, 2020, 18:50 pm JST

コロナ禍で驚いたことの一つが、 ユーザーに新しいデジタルサービスを使ってもらうのに最も大きなハードルが、ユーザビリティや技術的な話ではなくて、 「ユーザーが自分にとっての利点を理解していなかった」ということです。

例えば Netflix や Amazon プライムビデオのようなストリーミングサービスの場合、 イギリスでは中高年以上のユーザーがロックダウン中に爆発的に増加し、「大変気に入ったので今後も使い続ける」と答えているのですが、それまでサービスを使わなかった理由が「どんな風に良いものかわからなかった」なのです。

使い方がわからない、知名度が低い、などは関係なかったわけです。

意外なことにこれらのサービスは、ロックダウン前後であってもほとんど伝統的なメディアでは宣伝していなかったにも関わらず知名度は高く、「何ができるか」もよく知られていたようです。

しかし、実際に使ってみたら料金は結構安いし、使い方も簡単。面白いコンテンツもたくさんがあって大変喜ばれました。

たとえ中高年層であっても、自分にとって利点があれば、使い方をどんどん覚えて試してみるわけですね。それが生活を楽しくするものであれば、積極的に試してみるということです。

例えば、私の母の近所の人々や友人達は70代ですが、今話題の韓国ドラマ「愛の不時着」が観たいがために、Netflixに自ら入会し、スマートフォンやタブレット、AppleTVの使い方を次々にマスターしています。字幕の出し方だってお手の物です。彼女達は、現役時代はコンピューターで仕事をしていたわけではありませんし、その辺のスーパーでパートで働くような普通の「おばさん」でした。

これはイギリスの義母の周りの人々も全く同じです。DeliverooやAmazonPrimeNowが便利だと聞いたら、スマートフォンを入手し次々にオンラインで買い物を始めました。ついでにネットで動画も楽しむ彼女達は、80代です。

これは、今後のユーザー獲得戦略を考える際にかなり重要なことのように思います。サービス提供側は、これまで自社の製品の魅力やユーザーにとっての金銭的な利点や、 楽しさを十分伝えきれてこなかったということです。また、使い方だって実は簡単なのです。でも、それを説明し切れていなかった。

多くのスタートアップは、若い人向けにイベントでの広告を出稿したり、スタートアップ向けのメディアに紹介を出したりするわけですが、 実は、本当にサービスを必要としている人はそういったメディアを見ない人であったり、イベントに行かない人だったりすることもあるわけです。

ロックダウン中に起きたストリーミングサービスやフィンテックなどのユーザー激増で、高齢者だって自分に便利で面白いものであれば使いたいと思っていることが良く分かりました。企業側は、そういったユーザーに対して働きかける努力が十分ではなかったのではないでしょうか。

また、ユーザー像というものを固定概念で捉え過ぎなのかもしれません。普段は、多様性や少数派保護といった事を一生懸命主張する一見先進的なスタートアップであっても、実は年齢や属性といった思い込みに縛られ過ぎなのだと思います。

 

WirelessWire Weekly

おすすめ記事と編集部のお知らせをお送りします。(毎週月曜日配信)

登録はこちら

谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。