画像はイメージです original image: Gorodenkoff / stock.adobe.com
ドローンの実用化に向けて規制緩和とセキュリティリスクを再確認
2020.09.28
Updated by WirelessWire News編集部 on September 28, 2020, 16:45 pm JST
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2020.09.28
Updated by WirelessWire News編集部 on September 28, 2020, 16:45 pm JST
ドローンのセキュリティに関しての活動を行う一般社団法人のセキュアドローン協議会は、ドローンにおける5G利用規制緩和と制度改正、それにともなってのセキュリティリスクについてのセミナーをオンラインで行った。
ドローンの市場規模は、機体、サービス、周辺サービスを含めて2019年度に1409億円、2020年は1932億円と大きな伸びが推定されている。ただし、2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響が出る前の推計である。2019年度は実証実験 part 2という年で、実証実験実運用に向けた課題が解決してきており、それを受けて2020年度は実運用の年になっていくと見られている。
セキュアドローン協議会では、ドローンの利用分野が、これまでの太陽光パネルの点検、屋根の点検などから、橋梁の点検、プラントの点検などへと徐々に実用化範囲が広がっていくと見ている。農業分野では、農薬散布からリモートセンシング分野にも広がりを見せつつあるという。
一方、報道やニュースなどで期待される物流への応用に関しては、課題はまだ多い。課題を克服した上で2025年度くらいには本格化するかもしれないと見られていたが、今回のコロナ禍において物流の見直しが求められていることから、もしかすると本格化の時期が早まる可能性もあると分析する。
2020年7月には、内閣府を含めて国が発表している「空の産業革命」を受けた“ロードマップ2020”が発表された。毎年、この時期にロードマップは発表されるが、2020年度は登録制度、リモートID、実用化、電波利用といった部分が具体的にアップデートされている。
特に、航空法の一部が改正されていることが注目される。無人航空機の登録制が実施され、ドローン所有者は住所、氏名などや機体の情報を国土交通大臣に申請して登録をする必要が生じる。登録番号は申請した人に通知されるので、何らかの形でドローンに登録番号を表示することが必要だ。登録制は、無人航空機やドローンの所有者などの把握、危険性の排除、無人航空機のさらなる安全向上の実現を目指すもので、ステップを踏んで今後のリモートID実現につなげると見ている。
また、ドローンによる携帯電話の上空利用(SIMの上空利用)に関しては、より具体的なロードマップが制定された。元々ドローン利用者からの要望が多く、2016年7月に電波法は改正され法律的な対応はできていた。その上で、どのような懸念やリスクがあるかが検討されていた。これまでは携帯電話事業者(キャリア)にドローンでの利用を申請し、総務省で免許が交付されるまで数カ月かかっていた。今回のロードマップでは、手続きの簡素化による期間の短縮が描かれた。
携帯電話の上空利用では、隣接の基地局への干渉が課題であった。総務省は現在、3GPPのRelease 15に準じて「ドローン端末の特定」「干渉可能性の検出」「上り信号パワー制御」の3つに対応することで、柔軟な運用利用ができるようにキャリアに働きかけをしている。対応端末の普及は2020年の後半以降と見られている。
元々、ドローンでは、プロポから本体へのコントロールの信号、ドローンの状態を示すテレメトリー、ドローンにつけたカメラからの信号であるFPV(First Person View)の3種類の通信が行われている。
こうした通信の中で大きく変化している点がある。今まではドローンのデータは地上のPCやスマートデバイスを経由してクラウドに送られていた。ところが、現在では直接クラウドに送られるようになっていることである。インターネットから見ればオフラインだったドローンが、オンラインになったということである。災害調査などでは広域調査になるケースが多く、クラウドへの直接アクセスにより様々なコマンドの実行が遠隔からも可能になるなど効率的な運用ができるようになった。
通信については、今までは3G、4Gが中心であったが、速度面を考え5Gの利用が注目されている。超高速、超低遅延、多数同時接続などのメリットがあるために5Gへの期待は大きい。しかし、5Gは、インフラの整備が遅れていることから、ローカル5Gによる活用を含めて考えていくべきであろうと指摘した。
ドローンのリスクとしては、ソフトウエアのバク、脆弱性、ウイルス、マルウエア、データや貨物のかすめ取り、さらには墜落などが想定される。
ドローンの状態、人(操縦者/所有者)の状態は、下図のような4つの事象に分けられる。その中で、問題が大きいのは3番目である。「ドローンの状態は正しいのだが、人の状態が悪意ある第三者」というケースである。
ただし、この1~4を見極めるのが実は難しい。従って、飛んでくるドローンのリモートIDで少なくとも1か2の状態であることを見極める必要がある。ドローンには、法令順守の違反、事故、事件の直接被害、使用企業のブランドイメージの毀損、取得データの漏洩などの数多くのリスクがあるので、ドローンの状態と人の状態を確認する必要があるわけだ。
では具体的にドローンのセキュリティを守るためにはどうするか、対策をするかだ。そのポイントとして、まずドローンの制御対象となるコアシステムを理解する必要がある。特に、ドローンとクラウドが直接つながったところは、セキュリティリスクが高まったと認識しておくべきであろう。
実際の対策には、セキュアドローン協議会が2018年3月に発表したドローンセキュリティガイドが参考になる(参考記事:ドローンをあらゆる角度からセキュアに、「ドローンセキュリティガイド」の意義)。ドローンセキュリティガイドには、ドローンに関する様々なリスクが事例を含めて紹介されている。今回のセミナーでもセキュリティリスクの分析、データセキュリティなどの詳細が紹介された。また、セキュアドローン協議会では、ドローンの業務活用におけるセキュリティ技術の実装『ドローンへのセキュリティ技術実装の実証開発』を2019年3月に公開したことも紹介された。
ドローンについてのその他のセキュリティリスクとしては、悪意ある第三者の攻撃対策についもて考えておくべきと指摘。特に重要施設を抱えているような企業、団体などは注意が求められる。下図に示すように、「検出・警報」「識別・分類」「追跡・無力化」の3つの事象を押さえておきたい。
空中を飛来するドローンは、「不正がなく正しいもの」なのか「不正なもの」なのかを地上から識別・分類することは非常に難しい。延期になった東京オリンピック・パラリンピック2020大会の期間中は、「ドローンを飛ばさない」「活用を限定的にする」という対策が施される予定だったほどだ。
ドローンビジネスを安全・安心に進められるようにするために、セキュアドローン協議会の会員企業では「ドローンセキュリティコンサルティングサービス」を提供している。ドローンのセキュリティはまだ騒がれていない段階だが、脆弱である部分が多いことは確かであり、今後の運用に障害のないように活用してほしいと講演を締めくくった。
セキュアドローン協議会
2015年6月4日に設立。会員企業にはIT企業が多い。IT企業の各社が持つドローンの技術、セキュリティ、IoTの関連技術を生かして当初は農業のインテリジェンス化に重きを置いていたが、現在はドローンセキュリティに関しての活動を中心にしている。
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