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スキー場はウィンタースポーツのためだけの場所じゃない。石打丸山スキー場の「雪山の新たな滞在体験モデル」は雪資源豊富な地方に交流人口を増やすきっかけになるか

2021.03.30

Updated by SAGOJO on March 30, 2021, 15:26 pm JST Sponsored by 石打丸山スキー場

日本国内のスキー人口は、バブル期を境に減少している。レジャー白書によると、日本国内のスキー・スノーボード人口は510万人(2019年)と最盛期だった1,800万人(1998年)の3割弱にまで落ち込んでいる。

2020年には新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るい、多くのレジャー産業が打撃を受けた。スキー場では、近年のスキー離れや不定期に見舞われる雪不足などでビジネスとしての正念場を迎えていた。その一方で、自然の中でのレジャーはそれ自体の感染リスクは低いと考えられ、コロナ禍において再び注目され始めてもいる。

とはいえ問題は、ウィンタースポーツ人口の少なさである。母数が少ないスキーヤーやスノーボーダーを、日本全国に約500あるスキー場が獲り合わざるを得ないのが業界としての課題なのだ。ウィンタースポーツ人口を増やすことに力を入れるか、新しい客層を取り込むか。どちらも必要ではろうが、後者に光明を見出したのが、新潟県魚沼市にある「石打丸山スキー場」だ。2018年に総額38億円を投じ、ノンスキーヤーやインバウンド客が気軽に利用できる設備やコンテンツを開発したという。

スキー場が活況を呈せば、その街自体に交流人口が生み出されることになる。取り組みの詳細を紹介する。

画一化したスキー場の遊び方を変える「スノーガーデン」の発想

石打丸山スキー場は、1949年に開業して以来、規模の拡大を進めてきた。現在、スキー場の総面積は236ha、リフトを13基設置。スキー場の高低差は664mで最長滑走距離4,000mという、関越道沿線ではトップクラスのスケールを誇るスキー場に成長した。

日本は国土の半分以上で雪が降り、世界的に見ても雪資源に恵まれている。しかし、ピーク時には年間延べ100万人を超えた石打丸山スキー場の来場者も、近年では5分の1の20万人にまで減少していた。スキー場は、その街にとって冬場の一大観光スポットという存在である。スキー場が賑わえば、交流人口が増え、街全体の活性化につながることは間違いない。逆もまた、然りである。

▲石打丸山スキー場のゲレンデ

スキー客の減少は、少子化による若者の減少やレジャーの多様化の影響もあるだろう。しかし、手をこまねいているわけにもいかない。スキー場の魅力をウィンタースポーツ人口以外にもアプローチできれば、この現状を打開できるかもしれない。そこで石打丸山スキー場では、2020/21シーズンより、雪山初心者でも楽しめる「スノーガーデン」を開業した。

「スノーガーデン」の着想は、北米や欧州のスキー場からヒントを得た。これら海外のスキー場では、利用客は多様な過ごし方ができる。中には、1,000ha以上の広大なゲレンデもあるが、広さに関わらずその山麓や周辺には、レストランやショップ、エンターテインメント施設、ホテルなどが数多く建ち並び、一帯がスノーリゾート街として機能しているのだ。

一方、日本のスキー場の楽しみ方はいつしか画一化してしまったようだ。朝早くからウィンタースポーツを満喫し、スキー場での定番飯であるラーメンやカレーなどを食べ、夕方前に切り上げて温泉に向かう、という一日の流れを多くの人が想像するのではないだろうか。いや、かつてスキーやスノーボードがブームの時代は、周辺の街も賑わいを見せていた。しかし、ブームが下火になるとともに活気を失い、結果的に多くのスキー場で「できること」が決まってしまったのかもしれない。

とはいえ、スキー場の運営主体が街の振興にまで関与することはなかなか難しい。できることは、スキー場(ゲレンデ)に多くの人を惹き付けることだ。それならば、ゲレンデでできることを増やせばいい。ウィンタースポーツをしない旅行客にも、スキー場や雪山の魅力を楽しんでもらえるコンテンツはできないだろうか、スキー場での新しい形の滞在体験を提供できないか、との発想から生まれたのが「スノーガーデン」なのだ。

雪山のアウトドアをよりスマートに。気軽に山腹までアクセスし、雪景色を眺めカフェで寛ぐ

スノーガーデンは「スマートなアウトドア」をコンセプトにしている。

端的には、スノードームテントと雪国の棚田をイメージした屋外テラス席を中心に、カフェやアクティビティ施設を備える複合エリアだ。魚沼平野と越後三山の雪景色を一望できる開放的な空間で、ウィンタースポーツはしない利用客も雪山の素晴らしさを感じることができる。

▲スノードームテント

スノーガーデンへは、山麓から世界最新鋭のゴンドラとチェアのコンビリフト「サンライズ エクスプレス」で向かう。快適なゴンドラキャビンで気軽に絶景ポイントまでアクセスできる。スキー場でリフトに乗ったらスキーやスノーボードで滑り降りてこなければならない、という固定概念に囚われる必要はない。見晴らしの良い山腹まで誰でも行けるのだ。

▲世界最新のゴンドラ「サンライズ エクスプレス」

スノーガーデンの魅力の一つがカフェ。エリア内には屋内施設のカフェレストラン「オーストリアスノーハウス」があり、料理等はここで提供される。テイクアウトしてスノードームテントや屋外テラス席で食事を楽しむこともできる。

▲スノーガーデンの屋外テラス席

料理は、コンセプトである「スマートなアウトドア」をイメージした。スキレットで焼き上げたパンケーキなど、見た目も華やかでお洒落なものが多い。

もともと石打丸山スキー場には17のレストランがあり、スキー客にもゲレンデ飯が豊富なスキー場として認識されてはいたものの、カフェ利用ができる店はほとんどなかった。そこでスノーガーデンでは、景色を見ながらゆったり寛げるカフェを目指したという。料理も100種類以上の試食を重ねて開発した。

▲見た目もお洒落な「雪山のパンケーキ」

またアクティビティとしては、スノーガーデンを起点にスキー場から少し外れた自然の雪山へとスノーシューを履いて散策するツアーも実施している。天然雪の上を歩き、スキーをしているだけでは見ることのできない滝を見に行ったり、ビューポイントに着いたら雪上でティータイムを楽しむこともできる。

▲新雪の上を散策すればスキーでは見られない景色に出会える

こうした新たなコンテンツ開発のきっかけを、石打丸山スキー場営業企画部の勝又健氏はこう話す。

「海は、泳がなくてもその場にいるだけで楽しめる。それなら、雪山でもウィンタースポーツをせずに楽しんで良いのでは? と思い、雪山に慣れていない大人でも楽しめる施設を作りたいと思いました」

▲石打丸山スキー場営業企画部の勝又健氏

子供向けのアクティビティやスキー教室は、多くのスキー場で行なっている。近年では、雪が降らないアジア圏からのインバウンド客向けに、「雪」を体験するアクティビティを販売するスキー場も多い。こうした子どもやインバウンド向けの商品はあっても、「スキーをしない大人」に向けた商品はなかった。

そこで着目したのが、キャンプや登山などのアウトドアブームだ。趣味でキャンプをする勝又氏も、キャンプ初心者が道具を揃えたり、女性同士で登山を楽しんだりする様子を目にしていた。ウィンタースポーツ以外に雪山を堪能できる要素を作り出せれば、こうしたキャンパーやアウトドアに関心のある層を新規に取り込むことができる、と考えたのだ。

2020年後半からということでコロナ禍でのスタートとなったが、結果、想定よりも幅広い客層がスノーガーデンに訪れた。子どもの遊び場として使う人、ドームテントでグランピングを楽しむために普段着で訪れる人、写真撮影をする人、景色を横目に食事を味わうためだけに来る人もいた。

なお、スノーガーデンの入場料は一人1,500円、先に紹介したゴンドラとのセット券は一人3,000円だ。まずはたくさんの人に来てもらい、様々な声を聞きたいということから価格帯を抑えて営業開始したが、「金額を上げてでも、スノードーム内に食事をデリバリーするサービスを始めて欲しい」との声もあったという。客層が幅広くなることで、開業当初は思いもしなかった意見も聞かれ、来季以降の運営アイデアも生まれたという。

オリジナルの「アンバサダーコミュニティ」を開設、運営当事者には思いもよらないアイデアが

スノーガーデンをPRするために、ウェブ広告やインフルエンサー広告を打った。開業後すぐにPR広告用の撮影に入り、シーズンが本格化する前には世に出した。さらに、これだけでは潜在顧客にアプローチしきれないと考え、株式会社SAGOJOと協働し「アンバサダーコミュニティ」を開設した。

アンバサダーコミュニティには、スノーガーデンのターゲットでもある「雪山に慣れていない」という30人をメンバーに迎え、スノーガーデンの新たなコンテンツや楽しみ方を考えてもらった。

するとメンバーから、「雪山大運動会をしたい」「夜の雪山体験をしたい」「雪山でランタン飛ばしをしたい」など、勝又氏が思もよらなかったアイデアがどんどん提案された。

いくつかのアイデアの中から、「ドーム内を私物で飾り付けたい」「海外リゾートのような絶景写真を撮りたい」「スノーシューを履いて雪上ピクニックを楽しみたい」など、すぐに実現可能なものをイベントとして実施した。その様子をコミュニティメンバーが発信することで、石打丸山スキー場を知らない層にPRすることにもつながった。

▲イベントではスノードームを私物で飾り付けた。利用時間内であれば、来場者も飾り付けできる

その他のアイデアも来季以降の施策に盛り込み、さらなる客層の拡大を狙いたいと勝又氏は話す。

「唯一無二の施設を作りたいと思っていますが、これからは、他のスキー場でも似たような施設が出てくると思う。毎年新たな施策を打っていく必要がありますね」

真似はされたくはないが、スキー場業界全体のことを考えると雪山に遊びに来る人口は増やしていきたい。バブル期のスキーや90年代のスノーボードがムーブメントを起こしたように、雪山での新たな滞在体験を求めて訪れる人が増えることを願っていると、勝又氏は前向きに考えている。

スキー場にある「雪資源を活用するポテンシャル」を引き出せば新たな交流人口が生まれる

2018年の設備投資以前は、石打丸山スキー場としての商品はゲレンデだけだった。スキー場を引き立たせる周囲のレストランやショップなどは、石打丸山観光協会に加盟する地域の人々が運営している。地域の魅力はあるがまとまった企業体ではないため、当然のことながら、ゲレンデ運営一社の意向が全てに反映できるわけではない。

しかし、インフォメーションからスキー用品のレンタル、パウダールームなどを兼ね備えたスキー場のランドマーク「リゾートセンター」を始め、カフェレストランのオーストリア スノーハウス、そしてスノーガーデンと、ゲレンデだけの運営から多角経営化したことにより、様々な企業とのコラボレーションや企画ができるようになった。

「キャンプ会社の方やイベント会社の方と話していると、ここの設備の充実度合いに驚かれます。山の中だけれど、スキー場として運営しているので、トイレやレストランの調理場も完備しています。ただの山の中よりもイベントなどを開きやすいのかもしれないと、スキー場のポテンシャルに気付かされました。今後は、スノーガーデンで焚き火や雪上サウナをしたり、DJイベントを開催したりと、雪山と『他の何か』を掛け合わせたコラボレーションもしていきたいと思っています」

ウィンタースポーツだけでなく、多様なイベントを開催できるようになれば、スキー場への来場者増が見込める。結果として周囲の施設も潤うことになれば良い。スキー場が盛り上がれば、街も活気付くはずだ。そしてこれは、石打丸山スキー場だけでなく全国のスキー場にも当てはまることだろう。スキー場には、新たな使い方/使われ方をするポテンシャルがある。

▲スノードームから始まる「新たな雪山の滞在体験モデル」はスキー場に新たな人を呼ぶ起爆剤となるか

スキー場の建設ラッシュからおよそ30年が経ち、業界は転換期を迎えている。

最後に、石打丸山スキー場と同様に、新たな取り組みを始めている二つのスキー場を紹介しておこう。札幌市内や新千歳空港から車で1時間半ほどの場所にある北海道のルスツリゾートでは、ハスキー犬と雪上を走る犬ぞり体験を開催している。また、新潟県妙高市のロッテアライリゾートでは、標高約950m地点から3分ほどで710m地点まで、ロープにぶら下がったシートに座って一気に下りる「ジップツアー」体験を提供している。いずれも、従来のスキー場にはなかった他ではなかなか体験できないコンテンツだ。各社知恵を絞り、雪山へ新たな客層を呼び込もうと試みているのだ。

雪資源の豊かな日本。ウィンタースポーツに限らず雪山を楽しめるコンテンツやアクティビティの開発は、試行錯誤の連続だろう。今回紹介した石打丸山スキー場の「新たな雪山の滞在体験モデル」もその一つだが、ここから「何か」が始まるかもしれない。そしてその「何か」はきっと、雪資源の豊富な地方を盛り上げる一助となるに違いない。

(取材・文:加藤あやな 編集:杉田研人 企画・制作:SAGOJO)

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