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日本のDXが上手くいかないのは「世代」の問題

Japan's DX is generational issue

2021.08.17

Updated by Mayumi Tanimoto on August 17, 2021, 14:18 pm JST

日本では、技術はあるのにDXがなかなか進んでおりませんが、先日、中国人の友人と話している際に、なぜ日本でデジタル化が進まないかという問題の根本的な要因がはっきりと分かりました。

まず、皆さんご存知のように中国では、政府をはじめさまざまな場でかなり強烈なデジタル化が進んでおり、高齢者にも無理やりスマホを使わせるようなサービスがどんどん増えているわけです。

これは、私が中国によく渡航していた20年前と比べると実に大きな変化です。とにかく驚かされるのはその導入のスピードであって、デジタル化がかなり進んでいる欧州よりも強烈なことをやっています。中国でこれが可能な理由というのは、非常に単純な理由です。

職場が若い人ばかりなのです。

例えば政府の場合ですが、中国は役人が引退する年齢は日本よりもはるかに早く、50代前半で引退をしてしまう人が少なくありません。彼らは年金が恵まれており、早く引退して孫の面倒を見たいと考えているので、とにかく早く職場をやめてしまいます。

なぜ引退して孫の面倒を見たいかというと、 中国は日本に比べると血縁以外を信用しない社会ですから、掃除や料理は人を雇ったり外注したりするとしても、教育に関しては身内が見るという習慣があるからです。

さらに、家族の関係というものが日本よりも濃厚ですから、子供の面倒や教育を親に丸投げするというのが、ごく当たり前のことなのです。

これは、家族関係が非常に気薄になっていて、さらっとした日本ではあまり考えられないことですね。日本では、教育に関しても親が介入する部分は非常に小さく、学校や塾に丸投げというご家庭がほとんどでしょう。

ところが中国の場合は、躾や勉強も親や祖父母がみっちりと見るということが前提になっています。だから熟年の祖父母たちは、早く引退して子供の面倒を見たいと考えるわけです。

こういった文化背景の違いがあるために、中国の職場からは高齢者が引退するのが早いわけです。その結果、職場には上の人がいませんので、若い人が非常に画期的なサービスややり方を導入しやすいというわけです。

これが日本の職場になると、職場の平均年齢が高く、正直言って50代ではまだそんなに歳を取っているという感じではありません。その上、大企業だと定年退職後も嘱託として残っている60代や70代の方がいたりすることもあります。

そういう大先輩達がいますので、彼らが作り上げた書類の処理方法や仕事のやり方をデジタル化して完全に変えてしまうということが非常に難しいわけです。そんなことをしてしまったら彼らの面目を潰すことになり、いざ自分が定年というときに、彼らのコネを使って天下りしたり、彼らのように嘱託として残って年金で足りない分の生活費や遊興費を稼ぐ事が難しくなります。

ですから、デジタル化など進めず現状維持で、今まで通りに紙や難解なエクセル方眼紙で仕事をしておいた方が自分の保身に繋がりますし、職場の調和を保つことができるわけです。

日本の場合は、オリンピックの様々な場面でも見えたように、とにかく社会の多くの部分で高齢者が引退する年齢になっていても働いていたり、意思決定権を握っています。

日本では若手と言われるような人々がなんと40代半ばだったりするのです。つまり、日本でDXが進まない大きな理由は、職場に高齢者が多過ぎる、ということなのです。

 

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。