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中国でDXが進む原動力は職場での熾烈な競争

The competition at the office is the key driver of China's DX

2021.08.18

Updated by Mayumi Tanimoto on August 18, 2021, 10:58 am JST

前回は、中国では高齢者が引退するのが早いのでDXが進みやすい、ということをご紹介しました。

中国では、公務員は50代前半で引退する人も珍しくなく、大企業での引退年齢というのも日本に比べると早めです。ですから、コロナ禍の前に日本に大量に来ていた観光客の中年の人々というのは、実は、既に引退している公務員や大企業に勤めていた人々だったのです。

彼らは、若い時はほとんど休暇が取れず、お金を使う暇もなかったので、引退してからどんどん旅行に行っているのです。そして現金がありますので、とにかくたくさん買い物をします。これも、若い時に遊ぶ暇がなく、買い物をする暇すらなかった反動です。

正直言いますと、今の中国の若い人の働き方に比べると、日本人の働き方というのはゆとり全開です。中国では特に、若い人の間でバーンアウトしてしまう人が増えており、日本の過労死のように亡くなる方も出てきています。

さらに、職場での競争が熾烈ですから、効率化を進めたり画期的なことをやって自分の存在を証明しなければなりません。

DXを導入する場合、以前のやり方を完全に否定したりビジネスプロセスを根本から変えてしまうことが多いわけですが、そうすることで他のライバルに差をつけることができますし、経営管理層の場合は自分の権力をDXを通して見せつけることができるわけです。

つまり、DXの導入は競争に勝つために非常に有効な手段なのです。単に事業の効率化やコスト削減がDX導入の原動力となっているわけではないのです。

これは、職場での競争が日本よりはるかに過酷で、個人の業績というものを厳しく問われるイギリスや北部欧州の様子とも非常に似ています。

例えばマネジメント層が転職した場合、新しい職場で自分の業績や権限を見せつけるのに非常に便利なのが強烈なデジタル化を推進して、前にいた担当者のやり方を完全に否定することです。

イギリスの職場はアメリカと同じで転職が頻繁です。転職して新しい職場でより高い地位や給料を交渉して得ることが当たり前です。転職しなければ給料が上がっていかない、ということの裏返しでもあるわけですが。 

新しい職場ではそれなりの給与を交渉の結果として得ることになっているので、それに見合った実績を上げなければなりません。その際に非常に便利なのが、デジタル化を推進して人員削減を行ったり業務の処理スピードや正確性をアップさせる、 あるいは顧客の獲得率を高めるといったことなのです。

古いシステムややり方を刷新しデジタル化すれば、そういったいわゆる「KPI」をアップさせることは難しくありませんから、人の動きが頻繁なアメリカやイギリスでDXが比較的早く進むことになるわけです。デジタル化を推進する動機が日本よりも遙かに強いのです。

日本でDXが進まないのは、職場での競争が穏やか、人材の流動性が低い、ということも要因なのです。

 

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。