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予測的AIから処方的AIへ、テラデータCTOが語る2024年のデータ活用の変化

2024.01.10

Updated by Naohisa Iwamoto on January 10, 2024, 06:30 am JST

2024年、企業のデータ活用はどのように変化していくのだろうか。データ分析ソリューションを提供する米テラデータでCTOを務めるスティーブン・ブロブスト氏は、「2023年のAIのブレークスルーが2024年のデータ活用につながる」と指摘する。

2023年は、AIの活用、それもChatGPTに代表される生成AIが大きく広がった。「ChatGPTにより会話の要素がリリースされ、公開から1年でAI活用の主流になった。ChatGPTは言語モデルからマルチモーダルへと進化しているように、技術が非常に速く発展している」(ブロブスト氏)。こうした流れを受けて、AI関連の研究の方向性も変化してきている。

ブロブスト氏は、「2024年のAI活用は、産業化へのシフトやROI(投資利益率)を重視したものへの変化が進むだろう。すなわち、生成AIがより専門家されて、産業化されるようになる」と語る。これまでの生成AI、特にChatGPTなどが用いる大規模言語モデル(LLM)は膨大な量のテキストを学習して作成する。「GAFAなら膨大な投資をしてLLMを作れる。一方で、今後はドメインに特化したトレーニングにより、企業は僅かなコストでLLMのチューニングができるようになる。コストをかけずに専門のAIを実現できるようにすることで、賢い導入が増える」と、産業化の進展の1つの理由を掲げる。

ブロブスト氏はもう1つ、膨大なトレーニングセットの作成に、AIが活用できるようになる点も指摘した。「生成AIを使って合成データを作れるようになる。AIのトレーニングセットを作るためのコストを抑えるために有効な手段だ。それだけでなく、リアルなデータセットを使うことで生じるバイアスを排除できる」。

データとAI活用の4つのポイント

こうした潮流の先にある、2024年のテクノロジーとビジネス戦略の関係はどうなっていくか。ブロブスト氏は4つのポイントを挙げた。

1つは、「資産としてのデータ」から「製品としてのデータ」への変化。これまでデータは、AIや分析に用いるために、収集や蓄積に注力する「資産としてのデータ」のアプローチが強かった。このアプローチでは、いつか活用を待つためにウエアハウスに蓄積されていくだけのものになりがちだ。一方で、「製品としてのデータ」のアプローチでは、データは意思決定に使う。データの獲得を目的にするのではなく、データを意思決定に活用するために消費することが重要だとの指摘である。

2つ目は、AIの活用を「コスト削減」から「トランスフォーメーション(変革)」にシフトすること。「これまでのAIは、多くがコスト削減に使われている。コールセンター仮想化、チャットボットをはじめとして、コストを削減する機会を探していて、ROIだけを見れば効果は高い。しかし、企業はAIを使ってトランスフォーメーションをする必要がある。やっていくことを変えていきたい、新しいビジネスモデルを見つけたい――というアプローチによって、勝者になれる」(ブロブスト氏)。

3つ目は、AIを自動化されたインテリジェンス(オートメ―テッドインテリジェンス)として考えるのではなく、拡張されたインテリジェンス(オーギュメントインテリジェンス)と考えること。AIを自動化に用いるだけでなく、想像力がある人間のインテリジェンスと組み合わせて、データを使った意思決定を補強していく方向性である。人間とAIによって、インテリジェンスが拡張されることを意味する。

最後の4つ目として、同氏は「予測的AIから処方的AIへのシフト」を掲げた。「これまでのAIは予測的AIで、これから何が起こるかを知ることに使われていた。今後のAIは、より良い将来を目指すためにどうアクションを起こせばいいかを示唆する処方的AIにシフトする。処方的AIにより、ビジネスプロセスの変革に対して何をするべきかを見極められるようになった企業が生き残っていく」(ブロブスト氏)。

日本テラデータ 代表取締役社長の高橋倫二氏は、ブロブスト氏の2024年の予測を受けて、日本固有の問題を指摘した。「テラデータは40年以上、データ活用をサポートしてきた。そうした中で日本ではデータサイエンティストの量や質が満足できない状況にある。欧米の大手企業には1000名単位でデータサイエンティストがいるが、日本では数人、数十人、多くても100人程度という状況だ。データ活用、AI活用で欧米と圧倒的な差が生まれてしまっている」。

そうした中で、テラデータのソリューションにより「サイロ化を解消し、信頼性のあるデータをAIに提供するデータ基盤を実現する。さらにPoC(概念実証)だけでなく、数万のモデルを運用可能なAI実行環境を用意する。その上で、データサイエンティストの生産性を向上させるIn-Database機能、データ活用の民主化を推進する生成AI機能の提供により、データの課題解決を支援する」と高橋氏は語る。2024年のデータ活用、AI活用の変化のトレンドに寄り添うための方法論が、テラデータのソリューションから見つかる可能性に期待したい。

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。