
通信が拓くアプリケーションやサービスの広がりを感じる――MWC Barcelona 2025(1)
2025.05.16
Updated by Naohisa Iwamoto on May 16, 2025, 06:25 am JST
2025.05.16
Updated by Naohisa Iwamoto on May 16, 2025, 06:25 am JST
MWC Barcelona 2025では、通信やネットワーク、コミュニケーションがもたらす今後の世界を垣間見ることができた。フォトレポート形式で、トピックを紹介する。
●エリクソン
エリクソンのブースの公開エリアで大きくアピールしていたのが、ネットワークAPIを提供するベンチャー企業の「Aduna」の展示。12社のパートナーでスタートしたプロジェクトは、MWC時点でKDDIが加わった。デモでは、銀行などが利用者の2段階認証をする際に、ネットワークAPIを使うことで通信事業者による認証を安全に実施できる例などが示されていた。
エリクソンのブースの招待エリアでは、パートナーとの協業によるソリューションが紹介されていた。ソニーとは、5Gカメラエンコーダーと中継帯域保証により、プロダクションレベルの映像通信が無線で実現できるソリューションを展示。NVIDIAとは、ヘッドマウントディスプレイに自動車の3D映像を表示し、車体のカラーを変えたり、ドアを開閉したりといったバーチャル試乗体験のデモを行っていた。また、トヨタ自動車は高級ミニバンを持ち込み、車内通信にQoSを採用することで、移動中のオンライン会議などをスムーズに実現できるデモを実施した。
●ノキア
ノキアのブースで注目されていたのが可搬型の基地局。バックパック型の機材で基地局機能を実現する。災害や戦争などで既存の通信設備が使えないような状況でも、ワイヤレス通信を実現できる機器としての価値が高まっている。欧州が置かれた現状を考えさせられる展示だ。
携帯電話網を使ったビデオ通話でイマーシブ音声通話をで実現するのノキアのデモ。没入型の体験を実現できる5G-Advancedでは、低遅延の「IVAS(Immersive Voice and Audio Services:没入型音声サービス)」が定義され、このコーデックにより実現する。デモでは録画したビデオのイマーシブ体験だったが、臨場感と広がりがある音響を実体験できた。
ノキアブースではFWA(Fixed Wireless Access)用途をはじめとした端末機器も多く展示されていた。写真は「FastMile 5Gレシーバー 5G26-A」。窓や壁などに取り付けてFWAサービスを受けられる。ウインドマウント設計によって、ユーザーが自分で窓に取り付けられるのがポイント。
●クアルコム
クアルコムブースでは、スマートフォンなどに向けたSnapdragonシリーズに加えて、新しく立ち上げた産業用ブランドの「Qualcomm Dragonwing」シリーズの展開を紹介した。デモでは、Dragonwingシリーズを搭載したIoT機器などにより、ヘルメットなしで危険なエリアに踏み入れたときに警告する画像認識ソリューションや、工場などで災害を検知するソリューションなどで、産業への貢献を示していた。
●NTTドコモ
NTTドコモのブースでは、XRグラスを使った習字体験を実施。NTTコノキューデバイスの法人向けXRグラス「MiRZA」に映し出される漢字をお手本に、指示に従って筆を動かすことで、漢字を知らない体験者が見事に漢字を書けていた。
●KDDI
KDDIは、三菱商事と共同で出資するローソン店舗を想定したソリューションをデモしていた。その1つが、来客の様子をカメラで撮影して認識。棚から商品を手にすると棚に設置したディスプレイに“Buy One, Get One Free” のプロモーション画像を表示することで購買を促す様子を示した。
●京セラ
京セラは5Gのミリ波利用のソリューションを展示した。1つは5Gミリ波のリピーターで、自律的にミリ波のエリアを構築する。電波の到達距離が短いミリ波でも、高コストな基地局を多く設置するのではなく、低コストのリピーターでエリア拡大ができる。KDDIが西新宿で実証し、既存のミリ波のカバー率と比較し、道路のカバー率を33%から99%に拡大できたことも訴求していた。もう1つは、透明メタサーフェス屈折フィルムを利用した屋内向けソリューション。ビル外などから届いたミリ波の電波をメタサーフェスで屈折することで、見通し外の屋内にも届けられる。
●村田製作所
村田製作所ブースでは、NTNによる衛星通信で、プッシュ・ツー・トークなどの音声通信を実現するソリューションを展示した。低速の通信環境であっても、音声によるコミュニケーションを可能にすることで、災害時などの安否確認や状況の連絡などを含めた用途を発掘していく。
●ジャパンディスプレイ
ジャパンディスプレイは、MWCの「JAPAN Pavilion」に出展。「液晶メタサーフェス反射板」を展示した。液晶技術をメタサーフェスに活用したもので、5Gのミリ波の電波を任意の方向に反射させることができる。展示した反射板は、28GHz帯に対応し、±60°の方向に電波の方向を変えられる。
日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。