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[2014年第13週]LINE電話の発番通知問題に総務省は?、ヤフーが第4のキャリアに

2014.04.01

Updated by Naohisa Iwamoto on April 1, 2014, 12:00 pm JST

消費税増税前の駆け込み需要で街がにぎわう中で、ワイヤレス関連の分野のニュースも盛りだくさんの一週間だった。LINEは、サービスが始まったばかりのLINE電話に持ち上がっている、発信者番号の偽装についての見解を公開した。またヤフーはイー・アクセスの買収を発表、OTT(Over the Top)プレーヤーがキャリアを買収するという世界でも珍しい業態の発展に取り組む。

悪用の恐れは極めて少ないとLINE、総務省は「規制できず」の立場

3月28日に、LINEは同社の公式ブログで"「LINE電話」の仕組みに関するご説明"と題したエントリーを公開した。LINE電話では、LINEのSMS認証で使用した電話番号を「発信者番号」として通知しているため、「SIMカードを差し替える事で、番号を偽装する手法があるのではないか」といった懸念に対する同社の見解を表明している。LINEの見解をまとめると、「技術的には不可能ではないが、悪用の可能性は極めて低く限定的である」「SMS認証方式および番号通知機能はグローバルメッセンジャーで標準的に使われている方式である」「番号通知機能は利用者の利便性も高いため提供を決めた」ということになる。
一方、LINE電話の番号表示について、「発信者番号とは異なる番号を通知する可能性についてどのように考えるか」を総務省電気通信技術システム課電話番号企画課に問い合わせたところ、以下の回答を得た。「LINE電話は、パケット通信によりIP電話を利用して海外で通信事業者の電話網に接続し、海外の通信事業者から国内の通信事業者向けに発呼するサービスであると認識している」「海外の通信事業者がどのような番号を発信者番号として送信するかについては日本の法律が及ばないため、規制はできない」。現時点では、受信する側の国内の通信事業者の対策に委ねられているという見解だ。

「関連記事:LINE電話の番号偽装懸念に対し、LINEが見解を発表」に詳細をまとめてある。

発信者番号通知に関連するニュースがもう1本あった。エス・アンド・アイが、独自に開発した「携帯端末への発信者情報表示システムおよび発信者情報表示用プログラム」に関する特許を取得したというものだ。

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公衆回線上にあるスマートフォンがPBX経由で外線から着信した電話の転送を受けた場合でも、この技術を使用することで通信事業者との連携なしに発信者の電話番号表示が可能になる。同社が取得した特許は、PBXで外線からの着信を転送する際に、転送動作に先行してパケットで携帯端末に発信者情報を通知することで、携帯端末上に「PBXの契約回線番号」ではなく「元の発信者の電話番号」の表示を可能にする(関連記事:エス・アンド・アイがPBX経由でスマホに転送される電話の発信者情報表示に関する特許を取得)。

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ヤフーがイー・アクセスを買収、ドコモは接続料値下げ

ヤフーは、2014年6月2日にイー・アクセスの株式を取得すると発表した。新会社は「ワイモバイル」の名称で、インターネットキャリア事業「Y!mobile」を展開するという。イー・アクセスは2014年6月1日にPHS事業などを行うウィルコムを吸収合併する予定。ヤフーは、合併後のイー・アクセスの株式をソフトバンクから取得する計画だ。イー・アクセスの株式の99.68%(議決権比率33.29%)を、3240億円で取得する。新会社の名称は「ワイモバイル」で、代表取締役会長には現イー・アクセス代表取締役社長のエリック・ガン氏が、代表取締役社長にはヤフーの代表取締役社長の宮坂 学氏が就任する。ヤフーの事業に占めるモバイルの役割は今後も高まると見られ、今後は自らがキャリアとなって通信事業を提供する「インターネットキャリア事業」のあり方を模索することになる(関連記事:ヤフーがイー・アクセスを買収し、インターネットキャリア「ワイモバイル」に)。

キャリア関連のニュースを続ける。NTTドコモは、2013年度に適用する事業者間の携帯電話パケット接続料を大幅に値下げする。前年度比でレイヤ3接続、レイヤ2接続ともに50%以上の低廉化となる。2013年度の接続料金は、いずれも10Mbpsの場合でレイヤ3接続が月額179万5815円、レイヤ2接続が123万4911円。この接続料金は、2013年4月にさかのぼって適用される。パケット接続料は、MVNOがドコモの回線の帯域を借りてサービスを提供する際に、ドコモに支払う料金。パケット接続料の低廉化は、MVNOのさらなる活性化にもつながる可能性がある(関連記事:ドコモ、事業者間のパケット接続料を前年の半額以下に低減)。

もう1つは、有事の際の情報伝達にも携帯電話網を活用するというニュース。NTTドコモ、KDDI、沖縄セルラー電話、ソフトバンクモバイルの各社は、国民保護に関する情報をNTTドコモの「エリアメール」、KDDI、沖縄セルラー電話、ソフトバンクモバイルが提供する「緊急速報メール」で4月1日以降、配信を開始する。総務省消防庁の全国瞬時警報システム(Jアラート)による武力攻撃から国民の生命や身体、財産を保護するための情報や、弾道ミサイルの発射情報などが国民保護に関する情報として配信される(関連記事:「エリアメール」「緊急速報メール」で、ミサイル発射時などに国民を保護するための情報を配信

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ドコモはLTE国際ローミング、radikoが全国の局を聴けるサービス

サービスエリアが広がるニュースを紹介する。まず、NTTドコモが海外でLTEによる高速データ通信サービスを利用できる「LTE国際ローミング」を3月31日に開始したニュース。3月31日時点ではアメリカ本土、アラスカ、ハワイ、カナダ、香港、フランス、プエルトリコ、米領バージン諸島で利用できる。4月にはマレーシアでも提供を開始する予定だ。料金は従量制課金のほか、1日(24時間)当たり980円から利用できる「海外1dayパケ」、1日当たり最大2980円で使い放題にできる「海外パケ・ホーダイ」が適用される(関連記事:ドコモ、LTEの国際ローミングを米本土、フランスなど8つの国・地域で3月31日に開始)。

次は、パソコンやスマートフォンでラジオが聴けるIPサイマルラジオサービスを提供するradikoが、参加ラジオ局の放送が日本全国で聴取可能になる有料サービス「radiko.jpプレミアム(エリアフリー聴取)」を4月1日に」開始するニュース。radiko.jpプレミアム(エリアフリー聴取)は、PCおよびスマートフォンのradiko.jpのウェブサイトでプレミアム会員登録することで利用できる。利用料金は月額350円(税別)。支払はクレジットカード決済、キャリア決済(ドコモ・au)、フレッツ・まとめて支払の3種類から選択できる。全国68局の民放ラジオ局のうち、60局が参加する(関連記事:radiko、参加ラジオ局の放送が日本全国で聴取可能になる月額課金制サービスを開始)。

最後は、地下鉄のエリア拡充のニュース。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルは、大阪市営地下鉄の全区間で3月31日から携帯電話サービスが利用できるようになったと発表した。今回、大阪市営地下鉄 千日前線の全区間、大阪市営地下鉄 谷町線「大日駅〜駒川中野駅」区間、大阪市営地下鉄 長堀鶴見緑地線「大正駅〜蒲生四丁目駅」区間でサービスが始まり、すでに利用可能な区間と合わせてすべての区間がサービスエリアになった(報道発表資料:大阪市営地下鉄全区間における携帯電話サービスの提供開始について)。

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法人向けSNS、シニアや障がいのある人に向けたサービス

スマートフォンの利用範囲を広げる試みが続々。キングソフトは、法人向けにSNSライクなコミュニケーション機能を備えたアプリ「WowTalk Business」(以下、WowTalk)の提供を開始した。グループトーク、無料の音声通話、タイムラインによる情報共有機能などを備え、社内情報の活性化や意思決定の迅速化につなげる。法人向けサービスとしての管理機能も備える。IDとパスワードで管理するアカウントは、企業の管理者が管理者サイトから一元的に発行し、アカウントを持つ社員だけが利用できる。管理者による一括管理であるため、社外の人間や離職者などの利用を防ぎ、企業情報の管理を徹底できる(関連記事:キングソフト、法人向けにトークやタイムラインなどSNS機能を提供する「WowTalk」

KDDI研究所と日本IBMは、シニアおよびスマートフォン初心者がスマートフォンを使いこなせるように支援するマートフォン基本操作支援技術を開発した。KDDI研究所はこの技術を応用したアプリ「スマホ道場」を試作開発し、2014年4月1日から6月30日までトライアル提供する。ユーザーのつまずき度合いを検出することで、ユーザーの操作レベルを判定し、適切なガイドを音声、吹き出し、アニメーションなどで表示する。「スマホ道場」は、この技術を応用し、地図操作の練習時に、適切なガイドをテキスト、音声あるいはオーバーレイ表示で提示して地図の操作方法習得を支援する(関連記事:KDDI研究所と日本IBM、初心者・シニア向けスマホ基本操作支援技術を開発)。

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もう1つが、ソフトバンクモバイルによる、障がいのあるユーザーの社会生活を支援するサービス「アシストスマホ」の提供。「アシストスマホ」は、シンプルスマホ SoftBank 204SHに専用ソフトウエアをダウンロードし、「アシストスマホ」モードに切り替えて利用できるサービス。定型文で簡単にメールが作成できる「アシストメール機能」、AR技術を利用して移動をアシストする「アシストナビ機能」、あらかじめ登録した保護者や支援者が利用者の位置情報や、目的地周辺への到着を確認できる「みまもるフェンス機能」が利用できる。利用料金は無料でソフトバンクオンラインショップおよび非営利団体や特例子会社などの特定代理店を通じて端末を購入時に申し込みを受け付ける(関連記事:ソフトバンク、障がいのあるユーザーを支援するサービス「アシストスマホ」の提供を開始)。

昨年の第13週のできごと

・災害対策に基地局の強化、音声メッセージサービスの共通利用
・レイヤー2接続申し入れ、低コストな「ほぼスマホ」などMVNOの動き
・医療、学習、障がい者のサポートなど多様なサービス
・引き続き拡充する地下鉄のエリア化

[2013年第13週]進む災害対策、MVNOの動きが活発、新ジャンルのサービス創出へ

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。