2014年2月20日の日本新華夏に「労働者獲得のため、東莞の寮内にWiFiを取り付ける-新華網」(日本語)という記事が出ていた。中国で労働者獲得のために、会社が従業員の寮内にWi-Fiを設置して、従業員の満足度を向上させて来てもらうという施策を行っているようである。短い記事なので下記に引用しておく。
(以下引用。下線筆者)
【新華網】 春節(旧正月)後、東莞企業の受注は増加し始めた。労働者流失を補充するために、企業は給料を増やすほか、充実した福利と生活保障も提供している。更に、ダンスや英語などの無料研修コースを開催し、寮内にWiFiを取り付ける企業もある。
東莞塘厦鎮に位置する三友聨衆電器有限公司(SANYOU)は2014年に多くの注文がある。人的資源部門王孟君総監は、春節後、労働者の回帰率は90%だが、まだ不足しており、約1200人は必要だと語った。
王総監によると、会社の60%の従業員は18歳-28歳が占めている。従業員を獲得するために、会社は充実した福利を保証するほか、従業員の寮内にWiFIも取り付け、従業員のインターネット需要を満足させる。
創科集団の給料は平均給料水準を上回り、2800元/月-4000元/月に達する。従業員を引き止めるために、会社は特別手当と有給休暇があるほか、ダンスや英語の無料研修コースも開催する。
Chitone広報部の蔡小梅副総監は、人間性で個性的な工場管理モデルは、従業員の便利な生活、技能の開拓と感情需要などに支えられる。企業にとって大勢の赴くところだと説明した。
(ここまで)
Wi-Fiが寮内で利用できてインターネットにアクセスできることは中国では労働者獲得にとって重要かつ魅力的な福利厚生なのだろう。中国でもスマートフォンが普及し、多くの人がスマートフォンを利用するようになってきている(関連レポート)。今回の報道を見ると、端末は配給されていないようなので、端末は個人所有のものを利用するのだろう。
労働者らは寮内のWi-Fiを活用して「Weibo(微博)」などを利用して家族や友人らとコミュニケーションができるだろう。また動画の閲覧なども楽しめる。「無料でWi-Fiが利用できないようなところでは働きたくない」というのが労働者の職場決定の重要な要因になるのだろう。特に18歳から28歳が従業員の60%を占める職場ではインターネットは必要不可欠であろう。
中国では低価格のスマートフォンも多く登場しているので、今後はスマートフォンの端末も労働者獲得のために、提供するようになるかもしれない。そして、そのうちWi-Fiは「スイッチを入れれば点灯する電気」と同じように、日常生活の中で欠かせないインフラになるかもしれない。それは中国だけでなく世界的な潮流となる可能性がある。そうなると、「うちの寮内では電気がつきます」というのはウリではなく、常識であって、近いうちにWi-Fiが完備されていることは利点でなくなり、当然という時代がやってくるのではないだろうか。
【参照情報】
・「労働者獲得のため、東莞の寮内にWiFiを取り付ける-新華網」
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登録はこちら2010年12月より情報通信総合研究所にてグローバルガバナンスにおける情報通信の果たす役割や技術動向に関する調査・研究に従事している。情報通信技術の発展によって世界は大きく変わってきたが、それらはグローバルガバナンスの中でどのような位置付けにあるのか、そして国際秩序と日本社会にどのような影響を与えて、未来をどのように変えていくのかを研究している。修士(国際政治学)、修士(社会デザイン学)。近著では「情報通信アウトルック2014:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)、「情報通信アウトルック2013:ビッグデータが社会を変える」(NTT出版・共著)など。