WirelessWire News Technology to implement the future

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現代社会において無線通信によるコミュニケーションは欠くことができないものであるばかりか、益々その重要性を増してきている。従来の音声を中心とした通信需要に加え、近年のスマートフォンに代表される高機能な小型端末の出現によって、通信速度をはじめとする無線通信技術への要求は今後飛躍的に拡大していくものとみられている。

一方で無線通信システムに対する周波数割り当ては非常に逼迫した状況にある。特に移動通信に適していると言われる数百MHz〜数GHzの周波数帯においては、周波数の再編等により今後も新たな周波数の割り当てが計画されているものの、それでもまだ将来の通信需要に対応するのは困難だとの見方もある。この様に限られた資源である無線周波数を、極限まで効率的に利用できるようにする技術が、コグニティブ無線技術だ。

コグニティブ(Cognitive)が"認知的な"という意味である通り、コグニティブ無線技術は、周囲の電波環境をセンシングすることによって認知し、最適な接続先の無線システム及び、周波数、無線方式の決定を行うことで、より高速で効率的な通信を実現することが可能になる技術である。

コグニティブ無線技術の方式には、大きく分けてヘテロジニアス型と周波数共用型の二つが存在する。ヘテロジニアス型は、周波数が固定的に割り当てられた既存の無線システムを対象とし、それぞれのシステムにおける無線リソースの使用状況や、電波の品質、ユーザの用途等に応じて最適なシステムが選択される。周波数共用型は、その地点および時間において使用されていない無線周波数を検出し、それを利用して通信を行う方式である。このように免許が割り当てられているにも関わらず使用されていない周波数はホワイトスペースとも呼ばれ、その有効利用に向け、日本では総務省を中心に熱心な議論が行われている。

コグニティブ無線技術は標準化の中においても議論が進んでおり、IEEE1900.4ワーキンググループにおいてはDynamic Spectrum Accessを実現するネットワーク構成、端末構成に関する基礎アーキテクチャの仕様策定がすでに完了している。なお、この仕様策定には日本の独立行政法人情報通信研究機構(NICT)が中心的な役割を担った。NICTは現在、藤沢市を中心とした広域コグニティブ無線テストベッドと呼ぶ実証実験を行っており、今後もその活動の成果が注目される。

このようにコグニティブ無線の基礎的な技術の枠組みは固まりつつあり、今後はどのような形で次世代ネットワークに組み込んでいくかという点が重要な課題となっている。

▼図.コグニティブ無線技術の方式
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2012 通信業界のキーワード

 
文・野地 真樹(ノキア シーメンス ネットワークス ソリューションビジネス事業本部ソリューション・マネージャー)

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