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日本のテック業界が人材獲得できない根深い理由

Why Japanese companies cannot recruit good tech people

2017.07.25

Updated by Mayumi Tanimoto on July 25, 2017, 20:44 pm JST

欧州も北米も、かなり前からテック業界の悩みの種といえば、どうやって人材を獲得するかということであります。欲しいスキルを持った人が足りないので、留学生を採用したり、海外から人を入れるのが当たり前です。シリコンバレー、トロント、ニューヨーク、ロンドンのテック企業だとオフィスによっては過半数以上が外国人とうこともあります。理数系を学ぶ学生が足りないイギリスの場合は特に顕著で、ケンブリッジやロンドンの金融ITやテク企業はオフィスの8割が外国人とかそういう状態です。

スキルさえあれば誰でもいいという感じなので、実は女性も少なくありません。女性が多い業界に比べればエンジニア職の人はまだまだ少ないのですが、それでもシリコンバレーの有名企業は12−20%ぐらいが女性エンジニアです。Googleは17%なので、平均より若干多い感じです。アメリカ全体だと製薬や医療系、政府系のソフトウェア部門の女性エンジニアは33%ほど、小売やプロフェッショナルサービスだと27%前後なので、それに比べるとまだまだ少ないと批判されています。

 

アメリカに比べると保守的な印象がするロンドンも女性が多いです。セキュリティとかハードコアな開発系、インフラだと少ないんですが、運用とかBAは女性が結構います。出産後も働く人がほとんどです。

働きやすさはどうかというと、とにかく人がいないので、ちゃんとやるなら男でも女でもいいよ、という感じです。ストリップクラブに行っちゃうようなマッチョ男性が多い営業系とか金融のフロントに比べたら、マッタリ系の人が多いので、遥かに働きやすいです。

とはいっても、女性エンジニアの数が少ないので、業界も国も女性の数を増やすのに熱心です。人材が足りませんし、女性がより高い収入を得ることになれば税収も増えますし、ユーザーには女性もいるので、作る方に女性が増えることは業界としてもウェルカムです。

ところが日本だと事情は違いますね。先日こんなツイートが話題になっていました。
ある大企業に勤める女性エンジニアが上司から『希望退職』を迫られた…その理由が酷すぎる「女にこれ以上給料は出せない」「先例がない」

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引用
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@lecielbleu1012
とても頭にきたので、ツイートして発散拡散したい

妹はとある大企業でエンジニアをしているのだが、上司から「希望退職」を迫られたらしい。
理由は、『女性にはこれ以上の給料は出せない(ベアがない)』『先例が無い』から、来年3月を目処に辞めろと。

@lecielbleu1012
私「先例は無いなら作ればいいじゃん!労組何してんの?労基に相談だ!!」
妹「既に仕事が減り始めた。指導役に就けて、後輩育てる気満々だったのに、育ったらクビだ。こんな企業に失望したから辞める。」

姉の私が言うのも何ですが、妹は物凄いエンジニアです。
私はこの企業が憎い。

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引用おわり
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ひどい話ですね。@lecielbleu1012 さんが怒るのも当たり前です。

さて、このツイートですが、日本のテック業界が優秀人材を獲得するための問題点が集約されているように思います。

『女性にはこれ以上の給料は出せない(ベアがない)』

この意味は、つまり報酬が、性別や年令といった、アウトプットの質や量とは関係ない資格要件が元になっているということです。日本の通信やテック企業はまだまだそういうところが多いのではないのでしょうか。要するにシニオリティペイ(年功序列)賃金の報酬体系です。

役所、古い企業だと、いまだにシニオリティペイだったりしますが、特にテック業界だと、報酬は専門別、実績別が当たり前ですので、こういう報酬体系は嫌がる人が大半です。

日本ではテック業界でもシニオリティペイが当たり前ということは、要するに転職が前提になっていないということですが、他の国ではスキルを餌にして転職前提で報酬を交渉するのが当たり前で、ここ最近のAIやビッグデータ系のスキルを持った人は有利なので、交渉できないような組織は最初からガン無視です。

『姉の私が言うのも何ですが、妹は物凄いエンジニアです』

先述したように今やテック業界は世界的な人不足ですから、女か、男か、ゲイか、何人かとはいってられません。できる人ならなんでもいいよというノリが当たり前で、重要なのはスキルです。しかしこういうスキルがある人を活用できない、する気がないから日本は遅れてしまっています。

これは女性だけではなく、正社員と非正規雇用の格差も同じで、なぜかスキルがあるエンジニアが非正規雇用や下請けとしてこき使われてしまっている。スキルを評価して報酬を払うのではなく、「正社員」「非正規」という意味がない資格要件で報酬に差をつけてるわけですから、モチベーションが上がらなくて当たり前です。良い発想だってでてこなくなります。

『先例が無い』

テック業界というのは、新しいことをどんどんやっていかないと生き残れない世界です。採用に関しても同じで、人が足りなければ海外に人事を派遣して採用ミッションをやったり、かなり変わった福利厚生を用意してメディアに取り上げてもらって良い人に来てもらう、というのも珍しくありません。

どれも先例がないことばかりですが、先例がないことをやるからこそ働く方からも評価される。そういう組織は新しいビジネスにもオープンですし、アイディアも採用されやすいです。

ところが日本のテック系企業の場合は、役所のように先例がないことは避けるという所が少なくないですね。特に大きいところだと失敗は許されない雰囲気があるのでやりたがりません。

こういう姿勢が、携帯が世界に取り残されてしまったこと、日本発の革新的なアプリやサービスが産まれないのと関係あるでしょう。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。

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