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September 24, 2026
中村 航 wataru_nakamura
1985年生まれ。福岡県福岡市出身。翻訳者。テクノロジーやファッション、伝統工芸、通信、ゲームなどの分野の翻訳・校正に携わる。WirelessWire Newsでは、主に5G、セキュリティ、DXなどの話題に関連する海外ニュースの収集や記事執筆を担当。趣味は海外旅行とボードゲーム。最近はMリーグとAmong Usに熱中。
一台のロボットがドアの開け方を覚えたとする。その技能を、形も仕組みも異なる別のロボットでも利用できるようにすることは可能だろうか。欧州のロボット研究ネットワーク「euROBIN(ユーロビン)」は、この難題に取り組んでいる。
euROBINは、EUの研究開発プログラム「Horizon Europe」の支援を受け、14カ国の大学や研究機関、企業など31の中核パートナーが参加するプロジェクトだ。2026年9月2日には欧州議会で最終イベントを開き、これまでの研究成果と、欧州のロボット産業をどう成長させるかについて議論した。
研究の中心にあるのは、ロボットの技能や学習成果を、別のロボットやタスク、作業環境でも利用できるようにする「移転可能性(transferability)」だ。euROBINのプロジェクトコーディネーターであるAlin Albu-Schaeffer氏はLe Mondeに対し、「フランスで一台のロボットがドアの開け方を学んだら、その技能をほかのロボットにも移せるようにすることが理想だ」と語っている。
これは、動作データをそのままコピーすれば済む話ではない。同じ「ドアを開ける」という仕事でも、腕の長さや関節の数、センサー、手の形が違えば、必要な動作は変わる。あるロボットでは簡単な動きが、別のロボットでは実行できないこともある。何を達成するための動作なのかを理解し、それぞれの身体に合った方法へ置き換えなければならない。
euROBINは、ソフトウェアやデータ、知識を共有する「EuroCore」というオンライン上の基盤も整備している。各研究チームが開発した成果を集め、ほかのチームが探して再利用できる仕組みだ。それ自体が技能を別のロボットへ自動的に移すわけではないが、再利用可能な技術を蓄積する土台になる。
この「成果をほかのロボットでも使える形にする」という考え方を、競技形式で試したのが、2024年にフランス・ナンシーで開催された「Coopetition」である。参加チームは開発したソフトウェア部品をEuroCoreに登録し、ほかのチームはそれを異なるロボットやタスクに利用した。自分たちのロボットをうまく動かすだけでなく、ほかのチームにも再利用される技術を作ることが評価される仕組みだった。
技能やソフトウェアを別の機体へ移せるようになれば、一台ごとに学習や調整を最初からやり直す手間を減らせる。異なるロボットの間で研究成果を共有できるかどうかは、開発や導入の速度を左右する。
人間は、誰かの手本や説明から仕事を覚えられる。ロボットの世界では、多くの経験が、いまも一台の身体の中に閉じ込められている。(中村 航/翻訳家)
参照
euROBIN:AI-based Robotics in Europe: Live technology demonstration and high-level round table
euROBIN:Transferability in Robotics
euROBIN:euROBIN Strategic Research Agenda
euROBIN:euROBIN EuroCore platform
euROBIN:Coopetitions
Le Monde:European robots make their case in Brussels