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これからとこの先のインターネットってなんだろう?

2015.01.25

Updated by Satoshi Watanabe on January 25, 2015, 17:31 pm JST

「インターネットって何?」という問いに答えるのは案外難しい。電話交換機のネットワーク構造の話を指してインターネットとは、との定義を好む人もいれば、ECやチャットなど各種サービスの隆盛について語ろうとする人もいる。更には、これらサービスを踏まえたライフスタイルや文化のことを核心だと解する人もいる。
ということを、角川インターネット講座の既刊分幾つかを献本頂いたので目を通しながら改めて思い返している。予定されているラインナップの全体像はこんな感じである。なお、括弧内は筆者あるいは監修者にて。
第 1 巻  インターネットの基礎 情報革命を支えるインフラストラクチャー(村井 純   慶應義塾大学環境情報学部長・教授)
第 2 巻  ネットを支えるオープンソース ソフトウェアの進化(まつもと ゆきひろ プログラマー、Ruby開発者、角川アスキー総研主席研究員)
第 3 巻  デジタル時代の知識創造 変容する著作権(長尾 真   監修   京都大学元総長・名誉教授、前国立国会図書館館長)
第 4 巻  ネットが生んだ文化 誰もが表現者の時代(川上 量生  株式会社KADOKAWA・DWANGO会長、角川アスキー総研主席研究員)
第 5 巻  ネットコミュニティの設計と力 つながる私たちの時代(近藤 淳也 株式会社はてな会長)
第 6 巻  ユーザーがつくる知のかたち 集合知の深化(西垣 通  東京経済大学教授、東京大学名誉教授)
第 7 巻  ビッグデータを開拓せよ 解析が生む新しい価値(坂内 正夫   情報通信研究機構理事長、東京大学名誉教授)
第 8 巻  検索の新地平 集める、探す、見つける、眺める(高野 明彦  国立情報学研究所教授)
第 9 巻  ヒューマン・コマース グローバル化するビジネスと消費者(三木谷 浩史  楽天株式会社会長兼社長、新経済連盟代表理事)
第 10 巻  第三の産業革命 経済と労働の変化(山形 浩生 評論家、翻訳家)
第 11 巻  進化するプラットフォーム グーグル・アップル・アマゾンを超えて(出井 伸之 クオンタムリープ株式会社CEO、元ソニー株式会社会長)
第 12 巻  開かれる国家 境界なき時代の法と政治(東 浩紀 思想家、ゲンロン代表)
第 13 巻  仮想戦争の終わり サイバー戦争とセキュリティ(土屋 大洋 慶應義塾大学大学院政策メディア・研究科教授)
第 14 巻  コンピューターがネットと出会ったら モノとモノがつながりあう世界へ(坂村 健 東京大学大学院情報学環教授、ユビキタス情報社会基盤研究センター長)
第 15 巻  ネットで進化する人類 ビフォア/アフター・インターネット(伊藤 穰一 MITメディアラボ所長、角川アスキー総研主席研究員)
と、2014年から2015年のスナップショットとしては納得を得つつも、15冊並べてもなお、あのテーマも加えられるのでは、といった追加案が思いつく。割とキリがない。企画編集の中の人もどこまでを含ればいいかと、シリーズ構成については、書き手の選定と合わせて頭を悩ませたところではないだろうか。
というくらい、冒頭の問いについて真面目に考え始めると結構難しい。自分なりに、こういうものである、との理解があるにはあるが、それも年々、あるいは日に日に変わっていくものなため、自分がどれくらいちゃんと理解出来てるかというのも実に怪しいところが多々ある。
例えば、年代や文化層ごとに好まれるサービスが違うというのは良く知られたことで、最近の10代に人気のサービス、みたいなサマリ記事は定期的に出される定番のものである。数日前に出回っていた記事、「10代はソーシャルメディアをこう使っている!大人たちが知らないナウでヤングなコミュニティと、意外なSNSの使い方。」などである。
また、翻訳記事でも、米国の若者はおっさんツールであるFBなんかもう使ってなくて、的な切り口のものが同じく定期的に出されており、世代での違いはそりゃ海の向こうでも同じく発生するものよね、と居所の良く分からないほっとした感覚を得ていたりもする。
■ これまでのインターネット/これからのインターネット/インターネットを超えて
シリーズ構成を見ていると、インターネットの技術的な基本の確認である慶応大学村井先生の第1巻やサービスの構成要素としても珍しくなくなったコミュニティ機能についての第5巻、同じくまったく珍しくなくなったユーザーの参加性について触れた第4巻第6巻、ECについての第9巻など、どちらかというとこれまでのまとめに該当するものと、これからを意識したものに分かれている。
分かりやすいキーワードでこれからを指すものは、ビッグデータを扱った第7巻。ここ1年から半年国内でも急速に重要性が一般認知されるようになってきているサイバー戦争に関しての第13巻。このあたりのテーマは「これから」と書いてはみたもののの、数年経つとまた状況が変わるだろうことが予想される。望むべくは、今期是限りの決定版というよりは、毎年でなくてもいいので適時改訂版が出される方がよいのかもしれない。
(シリーズ全部の改訂は大変だろうから、動きの激しい分野幾つかを特に狙ってだろうか)
シリーズ前半のこれまでのところを見ると、ブラウザを軸にした世界観がなんとなく見て取れるが、この先は大きく変わっていくのでは、との声が、ダボス会議に出席していたGoogle会長のシュミット氏から出されている。
インターネットは近い将来、生活のあらゆる面に浸透し事実上「姿を消す」だろうとの予測を示した。
 シュミット会長は「センサー類や機器が世の中にあふれ、全く気にならないほど身の周りのいたる所に存在するようになる」と語った。
「それは、常にあなたの存在の一部となるだろう。想像してみてほしい。あなたはある部屋に入り...そして、その部屋で作動している全てのモノと交流するようになる」
去年あたりから世間を騒がせる度合いが高まってきた、いわゆる"Things"の話である。本シリーズにおいては14巻で坂村健氏担当の「コンピューターがネットと出会ったら」 にて

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渡辺 聡(わたなべ・さとし)

慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任助教。神戸大学法学部(行政学・法社会学専攻)卒。NECソフトを経てインターネットビジネスの世界へ。独立後、個人事務所を設立を経て、08年にクロサカタツヤ氏と共同で株式会社企(くわだて)を設立。大手事業会社からインターネット企業までの事業戦略、経営の立て直し、テクノロジー課題の解決、マーケティング全般の見直しなど幅広くコンサルティングサービスを提供している。主な著書・監修に『マーケティング2.0』『アルファブロガー』(ともに翔泳社)など多数。