KDDI ∞ Labo第9期参加チーム説明会 ハードウェアプログラムには3チームが採択

2015.10.02

Updated by Asako Itagaki on 10月 2, 2015, 14:51 pm JST

10月1日、KDDIのインキュベーションプログラム「KDDI ∞ Labo」第9期参加チーム説明会が開催された。今回の説明会は渋谷・ヒカリエ内のラボスペースから場所を移し、新宿住友ビル内のコワーキングスペース「World Lounge Shinjuku」での開催となった。

よりビジネスマッチングを強化

第9期の方針として江幡智広ラボ長(写真右)は「パートナー連合プログラムの推進、地方連携の強化、ハードウェアプログラムによるものづくりへの取り組みを通して、プログラム終了後も成果をビジネスとして昇華できるようなビジネスマッチングの推進」を掲げた。

パートナープログラムには新たにGoogle、住友不動産、三菱UFJニコスが参加し、18社となった。新たな試みとして、パートナー企業社内で∞Labo卒業生によるピッチ大会を開催する。「パートナー企業社内の(支援にかかわっていない)他事業部でも卒業生が知られるようになれば、ビジネスの幅が広がると感じた」(江幡氏)今季はセゾンカード、トッパン、三井不動産の3社で開催を予定している。

地方連携では、「距離を超えたビジネスマッチング」として、2月のDemoDayに参加するチーム探しを自治体や地域のインキュベーターと探す「MeetUP!プログラム」を開始する。第8期でも参加した大阪市では10月28日、福岡市と石巻市は11月、広島県は12月のイベント開催を予定している。なお、地方からの応募は、前回に比べて倍増しているという。

江幡氏は、実際に地方のスタートアップとして事業化に成功しつつある事例として、第8期卒業生の「Bee Sensing」を紹介した。プログラム終了後にクラウドファンディングでの資金調達に成功。中国新聞で記事化され、地元のケーブルテレビでも特集が組まれるなど注目されている。KDDIは広島県と協力して県下の養蜂家とのビジネスマッチングを始めている。

今期から始まるハードウェアプログラムは、オリジナルプログラムよりも長い6ヶ月の期間で、ハードウェアのプロトタイプ制作をゴールにする。個別のパートナー企業によるメンタリングはないが、ザクティ、ソフトフロント、ユカイ工学の3社が個別対応に加え、ものづくりの講義など教育も含めて支援していく。

「日本ではまだハードウェア系スタートアップが大成功した事例はないが、アメリカでは続々と出てきているので日本にも可能性はあるはず」(株式会社ザクティCEO 伊佐治岳生氏)「採択チームが実現したいものをより専門的に支え、より良い形で世の中に送り出せるようサポートしたい」(株式会社ソフトフロントサービス事業部事業部長 高須英司氏)「プロトタイプを作って使えるものを作るまでが製品のキモなので、そこをご一緒させていただくのを楽しみにしています」(ユカイ工学株式会社CEO 青木俊介氏)と、期待を語った。

▼左からザクティ伊佐治氏、ソフトフロント高須氏、ユカイ工学青木氏

チーム紹介

第9期の参加チームは、オリジナルプログラム4チーム(うち学生枠1チーム)、ハードウェアプログラム3チームとなる。

オリジナルプログラム参加チーム

HR Databank (メンター企業:Google)
「発展途上国では求職者が溢れ、一方先進国では人材不足が深刻化している。世界の人材需給の不均衡を解消したい」というビジョンのもと、国境を超えたオンライン求職システムを構築する。採用に特化した人材データベースにすることで精度を上げ、データはアフリエイトや人材紹介などの別サービスにも活用を模索する。チームは外国人だけで構成されており、日本とチュニジアに分かれた環境で開発する。

Vコマース(AG株式会社・メンター企業:三菱UFJニコス)
大阪イノベーションハブからの参加。クリックできる映像でシームレスに購買に結びつくサービスを開発する。代表者の岩田氏が2年間のECサイト運営を通じて感じた課題を解決する。「オンラインショッピングの次のステージとして、買うためのショップから、見ていて欲しくなるから買うというショップを作っていきたい」と語る。

Applify(クロードテック株式会社・メンター企業:大日本印刷)
休学中の情報系大学院生2名によるプロジェクト。顧客はスマートフォンを使うが中小希望の店舗や地域で情報発信するのは敷居が高い現状に対し、情報を広めるためのスマートフォンアプリを、機能を選定するだけで開発できるプラットフォームを作る。この日は「4つある」という特徴のうち「Web2.0的な双方向コミュニケーション可能なサービスを作れる」「店が集まった地域やモール型のサービスも作れる」という2つを紹介した。

AppMotors(学生枠・メンター企業:住友不動産)
「ウェブ開発に必要な、開発環境構築やウェブサーバー設定などのの手間がかかる作業をゼロに近づける」ことで、開発者を支援するサービス。ブラウザ上でPython、Ruby、Goなどが動作するプログラミング環境、URLをシェアするだけで音声通話や画面同期を通してコラボできる環境、実行結果をWebページに埋め込むだけでブラウザ上で実行できる環境などを提供する。

ハードウェアプログラム参加チーム

電玉
KDDI研究所の「au未来研究所」で開催されたハッカソンで誕生したチームが、アイデアを形にしたいと参加した。伝統玩具のけん玉をIoTを活用してリニューアルする。けん玉に内蔵したセンサーで動きを関知し、通信でデータを交換することで、技が視覚化できるので対戦要素を盛り込める。また、通信ができるので対戦中の動作で相手を邪魔するといったバトルの仕組みを盛り込むなど、これまでにない遊び方も考えられる。

STRIDER-TAIL
「大企業の、スーツを来たヒトには真似できない、『かわいい』の価値を追求したい」というチーム。Maker Fairに出展したら子どもに大人気だったというピンクの尻尾付きストライダーをプレゼンに持ち込んだが、現状では市場性やビジネス面で弱いところがあるとして、「プロジェクトを通して世の中をハッピーにするかわいいコミュニケーションデバイス」開発を目指す。

UUSIA(CAMELORS株式会社)
電子ペーパーを使って、気分に合わせて絵を取り替えたり、組み合わせて新しい作品を作ったりできる「遊べる絵画」の開発を目指す。「現在製品化されているデジタル絵画は液晶なのでテレビを点けっぱなしの状態。電子ペーパーを使うことで、コンセント不要で遊べる絵画として楽しめるようになる」とする。ビジネスモデルとしてはハードウェアの販売に加えて、アプリケーション上で選べる絵をLINEのクリエーターズスタンプのようにクリエーターが自由に制作し、レベニューシェアする。

■ □ ■

今回のハードウェアプログラム参加チームについて、ラボ長補佐の豊川栄二氏は「今回のチームは世界で戦えると思っている」と言う。アメリカで登場して成功しているハードウェアのスタートアップはエンターテインメント分野のものが多いが、今回のチームは世界でブームを起こせそうなけん玉、共通言語になりつつある“KAWAII”、パリのアパルトマンにも似合いそうな電子絵画などは世界に通用するとして、「日本の製造業が元気がないと言われているが、新たな形のスタートアップが世界で戦うのを支援させていただきたい」と語った。

江幡氏によれば、2011年の第1期から第9期でエントリーされるサービスの領域も変わってきているそうだ。第1期にはソーシャル・コミュニケーションが応募の3割以上を占めていたが、今期は5%にとどまった。逆に、当初は2%にすぎなかったIoT、ハードウェアの応募が2014年度実施の第7期に急増して9%に、そしてハードウェアプログラムを開始した今期は21%となった。また、今期急増したのがヒューマンリソース・クラウドソーシングの応募で、第8期では5%だったのが12%となっている。

▼エントリーサービス領域の推移

第9期採択チームの顔ぶれを見て感じたのは、外国人だけで構成されるチーム、地方のイベントから採択されたチーム、他のハッカソンで出会って結成されたチームなど、チームの多様化が進んでいるということだ。4年間継続してきたスタートアップ支援が広がり、根付きつつあることのひとつの表れとも言えるだろう。

第9期のDemodayは2016年2月。7つのチームがどのように成長し、新たなビジネスを生み出すのか、期待したい。

 

【関連情報】
KDDI ∞ Labo 

 

※修正履歴
当初、ハードウェアプログラムのDemodayは半年後、と記載しておりましたが、KDDI広報部よりDemodayは両プログラム同時に2016年2月を予定していると指摘がありましたので、本文を訂正いたしました。(10/2 19:00)

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板垣 朝子(いたがき・あさこ)

WirelessWire News編集長。独立系SIerにてシステムコンサルティングに従事した後、1995年から情報通信分野を中心にフリーで執筆活動を行う。2013年春、長年住んだ中目黒を離れて、世界一高い電波塔の近所で下町生活を満喫中。

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