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Ooredoo Myanmar

苦戦するミャンマーのOoredoo Myanmar、4G LTEで先行して巻き返しを図る

Ooredoo Myanmar faces difficult, leads 4G LTE to rally in Myanmar

2016.08.02

Updated by Kazuteru Tamura on August 2, 2016, 16:30 pm UTC

ミャンマー連邦共和国(以下、ミャンマー)では国営のMyanma Posts and Telecommunications (ミャンマー国営郵便・電気通信事業体:以下、MPT)が長らく携帯電話事業を独占したが、2013年6月にカタールのOoredooとノルウェーのTelenorがミャンマーで携帯電話事業のライセンスを獲得した。

Ooredooは完全子会社のOoredoo Myanmarを通じて2014年8月に、Telenorは完全子会社のTelenor Myanmarを通じて2014年9月に携帯電話サービスを開始した。Ooredoo Myanmarは携帯電話サービスの開始直後より苦戦しているが、いち早くLTEサービスを導入して巻き返しを図る。

苦戦するOoredoo Myanmar

ミャンマーではMPT、Ooredoo Myanmar、Telenor Myanmarの3社が携帯電話事業を手掛ける。なお、ミャンマーの国防省が所有するMyanmar Economic Corporation (ミャンマー経済公社:以下、MEC)も携帯電話事業を手掛け、ブランド名をMECTelとして展開するが、曖昧な立ち位置にある。

MECはMPT、Ooredoo Myanmar、Telenor Myanmarとはライセンスの種別が異なり、仮想移動体通信事業者(MVNO)としての事業は認められているが、移動体通信事業者(MNO)としての事業はライセンスに含まれない。しかし、周波数はMPTから借用するものの基地局など通信設備はMECが自社で設置および管理しており、実態は移動体通信事業者である。

ミャンマーの報道機関はMECを携帯電話事業者に含める場合や含めない場合があり、非公式な携帯電話事業者と表現することもあるなど、ミャンマーでも曖昧な立ち位置とされている。ただ、ミャンマー政府は携帯電話事業者に含めていないため、本記事ではMECは携帯電話事業者に含めない。

ミャンマーの政府機関で電気通信事業などを管轄する運輸・通信省は携帯電話加入数を公表し、各社のシェアが判明している。2015年11月末時点の統計はグラフの通りである。

▼ミャンマーの携帯電話事業者別加入者数シェア
ミャンマーの携帯電話事業者別加入者数シェア
出典:運輸・通信省(2015年11月末時点)

なお、ミャンマーでは通信・情報技術省が電気通信事業などを管轄していたが、2016年3月に発足した国民民主連盟(NLD)が主導する新政権による省庁再編で通信・情報技術省、運輸省、鉄道運輸省が統合し、運輸・通信省が発足した。

また、携帯電話加入数は各社も個別に公表しているが、集計方法や集計期間を統一するため運輸・通信省が公表した統計のみ参照する。参考までにMPTは2016年5月に2,000万件を突破、Telenor Myanmarは2016年第2四半期末時点で約1,690万件、Ooredoo Myanmarは2016年第1四半期末時点で約700万件と公表している。

Ooredoo MyanmarとTelenor Myanmarはほぼ同時期に携帯電話サービスを開始したが、わずかに後発のTelenor MyanmarはOoredoo Myanmarを追い抜くどころか大差をつけた。運輸・通信省が公表した統計では2倍以上の開きがあり、Ooredoo Myanmarは一人負けの状況である。

ミャンマーではSIMカードが高額な時代もあったが、Ooredoo MyanmarとTelenor Myanmarは新規参入時よりSIMカードを1,500ミャンマーチャットで販売しており、各社がSIMカードを1,500ミャンマーチャットで発売した際は、少し上乗せした価格でSIMカードを売る転売屋が路上に溢れていた。上乗せ額はOoredoo Myanmarが最も少ない(つまり最も安く売られている)ことが多く、当初よりOoredoo Myanmarの不人気が見て取れた。

Ooredoo Myanmarの不人気には複数の理由が考えられる。まず、携帯電話サービスの開始直後に通信障害を起こし、最初に悪いイメージが定着して払拭が難しい状況にある。なお、Telenor Myanmarの携帯電話サービスは最初にマンダレーで開始し、その次に首都のネピドーとピンマナ、そして最大都市のヤンゴン、その後に各都市に拡大しているが、Ooredoo Myanmarの失敗に学んで慎重になり、全国一斉ではなく段階的に携帯電話サービスを開始した模様である。

また、仏教徒が多数派を占めるミャンマーではイスラム教を国教とするカタールの企業への反発もあり、僧侶がOoredoo MyanmarのSIMカードを購入しないよう呼びかけることもあった。OoredooおよびOoredooの子会社と位置づける企業が携帯電話事業を手掛ける国と地域はカタール、クウェート、オマーン、イラク、パレスチナ、チュニジア、アルジェリア、モルディブ、インドネシア、そしてミャンマーで、ミャンマー以外はすべて国教がイスラム教またはイスラム教徒が大多数となる。Ooredooとしては宗教的な理由で反発を受けることはミャンマーが初めてで、参入前はあまり想定していなかったようである。

タクシーの運転手がTelenor Myanmarを利用していたため、Ooredoo Myanmarを選択しない理由を問いかけると、何となく悪いイメージがあると説明してくれた。様々なマイナスのイメージが重なり、口コミなどを通じて評判が拡散し、それが何となく悪いイメージとなるのだろうと感じた。

▼ヤンゴンのMICT Parkに位置するビルにOoredoo Myanmarの本社が入る。
ヤンゴンのMICT Parkに位置するビルにOoredoo Myanmarの本社が入る。

▼Ooredoo Myanmarの本社受付。
Ooredoo Myanmarの本社受付。

4G LTEをいち早く導入

Ooredoo MyanmarはLTEサービスの開始前よりLTEサービスを導入する条件を説明しており、LTE対応端末の利用者が増加し、ある程度の利用者がLTEサービスに移行すると見込める状況になればLTEサービスを導入するとしていた。
巻き返しを図るべくOoredoo Myanmarは2016年5月中旬に4G PlusとしてLTEサービスを開始し、ミャンマーで最初にLTEサービスを商用化した。4G PlusのPlusには付加価値の提供などの意味合いが込められている。LTEサービスの開始当初より提供エリアはヤンゴン、ネピドー、マンダレーである。Telenor Myanmarは2016年7月上旬にLTEサービスを開始したが、提供エリアはネピドーに限定し、LTEサービスではOoredoo Myanmarに分がある。

Ooredoo MyanmarとTelenor MyanmarはともにLTEサービスの周波数と帯域幅がFDD-LTE方式で2.1GHz帯(Band 1)の5MHz幅×2となる。いずれも携帯電話事業のライセンス取得時に2.1GHz帯の10MHz幅×2と900MHz帯の5MHz幅×2が割り当てられた。ともに各社が保有する2.1GHz帯に隣接する2.1GHz帯の5MHz幅×2を追加で取得できるオプションが与えられ、両社ともオプションを行使したため2.1GHz帯の帯域幅は15MHz幅×2に増えた。両社はいずれもオプションで取得した5MHz幅×2をLTEサービスで利用する。

Ooredoo Myanmarは900MHz帯をW-CDMA方式のみで利用し、2.1GHz帯をW-CDMA方式とFDD-LTE方式で利用する。Telenor Myanmarは900MHz帯をGSM方式のみで利用し、2.1GHz帯をW-CDMA方式とFDD-LTE方式で利用する。両社とも保有する周波数と帯域幅は同じだが、GSM方式を導入しないOoredoo Myanmarは2.1GHz帯に加えて900MHz帯もW-CDMA方式で利用するため、2.1GHz帯はFDD-LTE方式に転用しやすい。

一方でTelenor MyanmarはW-CDMA方式が2.1GHz帯のみであるため、安易に2.1GHz帯をFDD-LTE方式に転用できず、まずはヤンゴンやマンダレーより人口が少なく人口密度が低いネピドーのみLTEサービスを導入した。

すなわちOoredoo MyanmarはGSM方式を導入しない判断がLTEサービスでのリードを後押しすることになった。また、加入数と保有する帯域幅を考慮すると、加入数が少ないOoredoo Myanmarは他社より周波数に余裕があり、皮肉にも加入数が少ないことがLTEサービスの展開を容易にした。なお、人口が少なく人口密度も低い農村部ほど周波数に余裕はあるが、LTE対応端末の利用者が少なくLTEサービスの導入は時期尚早という。

LTEサービスの開始に先立ち、Telenor Myanmarは2016年1月中旬よりLTEサービスに対応したSIMカードの提供を開始し、既存顧客にはSIMカードの交換を受け付けている。一方でOoredoo Myanmarは携帯電話サービスの開始当初よりSIMカードはLTEサービスに対応し、端末や提供エリアなどの条件が整えばSIMカードを交換せずにLTEサービスに移行できる。LTEサービスへの準備もOoredoo Myanmarがリードしていた。

Ooredoo MyanmarとTelenor Myanmarは新たな周波数を獲得すればLTEサービスの提供エリアを拡大する計画で、新たな周波数は周波数オークションで割り当てられる。2.6GHz帯の周波数オークションは2016年3月に実施する計画が延期となり、2016年後半に実施することが見込まれる。

▼Ooredoo Myanmarの本社併設となる販売店で4G Plusを宣伝していた。
Ooredoo Myanmarの本社併設となる販売店で4G Plusを宣伝していた。

▼Ooredoo MyanmarのプリペイドSIMカードでLTEサービスを利用できた。
Ooredoo MyanmarのプリペイドSIMカードでLTEサービスを利用できた。

明るい兆しも

Ooredoo Myanmarは苦境を打破するためサービス向上に注力した結果、2016年第1四半期の収益は前年同期比42%のプラス成長、減価償却前営業利益は前年同期比135%のプラス成長を記録し、明るい兆しも見える。また、ネットワーク強化のためにアジア開発銀行(ADB)や国際金融公社(IFC)から資金調達に成功し、LTEサービスを含めたネットワーク強化が期待できる。

巻き返し策はLTEサービスの導入だけではない。Ooredooブランドを冠した格安なスマートフォンを発売、広告展開を強化、プロモーションを実施するなど様々な施策が見られる。プロモーションは指定の端末を購入するとトップアップやデータ通信容量を付与、またデータ通信のパッケージは料金を据え置きでデータ通信容量を2倍とするなど、気前のよいプロモーションもある。

LTEサービスの導入をはじめとして攻勢をかけるOoredoo Myanmarは好転するのか、引き続き要注目である。

▼Ooredoo Myanmarが取り扱うOoredooブランドの格安なスマートフォンOoredoo Smart10。
Ooredoo Myanmarが取り扱うOoredooブランドの格安なスマートフォンOoredoo Smart10。

▼ヤンゴンの街中で4G Plusを大々的に宣伝していた。
ヤンゴンの街中で4G Plusを大々的に宣伝していた。

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田村 和輝(たむら・かずてる)

滋賀県守山市生まれ。国内外の移動体通信及び端末に関する最新情報を収集し、記事を執筆する。端末や電波を求めて海外にも足を運ぶ。国内外のプレスカンファレンスに参加実績があり、旅行で北朝鮮を訪れた際には日本人初となる現地のスマートフォンを購入。各種SNSにて情報を発信中。