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急速にスマホが普及したミャンマー、次世代人材の育成を目指して大学でネットワークやWeb開発の学位を

2016.09.12

Updated by Hitoshi Sato on September 12, 2016, 07:30 am JST

2011年に民政移管されてからミャンマーではスマートフォンも市民の間に急速に普及した。それまでは携帯電話を保有できるのは一部の層だけで通信事業者もMPTの一社独占だった。現在ではカタールのOoredooやノルウェーのTelenorも参入してきて、モバイル市場も競争が激しくなった。

初めて持つモバイル端末がスマホのミャンマー

それにともなって多くのミャンマー人がスマートフォンを所有するようになった。スマートフォンは町の至る所で屋台で販売されている。その多くが中古端末か廉価な新品で、中古端末は10ドルくらいから販売されている。プリペイドのSIMカードも町の至る所で購入することができる。ミャンマーはガラケー(フィーチャーフォン)の時代がなく、スマートフォンの登場でいっきにインターネットに接続して、新たな世界にアクセスすることができた。そしてパソコンはほとんど普及しておらず、利用するのは大学の教室や職場などだ。だから日本や欧米諸国では当たり前のパソコン操作ができることはミャンマーではまだ就職時に有利だ。

大学でもインターネット関連の講義や学位が人気

このようにスマートフォンが急速に普及してきたミャンマーでは、多くの人がFacebookやGoogle、YouTube、ポケモンGOなどのゲームを楽しんでいる。

スマートフォンが急速に普及したミャンマーでは、それにともなってインターネットの基本的な知識やネットワーク、Web開発などのスキルや知識のある人材が求められており、そのようなスキルのある人材は就職の時に有利であることから、ネットワークスキルやWeb開発の講座や学位を提供する大学も登場してきている。

ヤンゴン大学DE (YUDE:Yangon University Distance Education)ではWeb開発やネットワーク・コミュニケーションのコースを習得して、Business Information Technology(BIT)の学位を目指すコースがあり、学生らが真剣に学習している。その内容は日本では20年くらい前にインターネットが登場した時に、プログラマーやSEと呼ばれる方々が受講したり、学習していたような科目で、大学の学部で受講する学術的な講座というよりも、専門職養成のための専門学校か自己啓発コースのような内容だ。それでもミャンマーの学生達はこのようなコースで学位を取得して、少しでも良い就職先に就職しようとしているようだ。

ただし「すぐに役立つ知識やスキル」だから、すぐに「役立たなくなってしまう」ので、何年もかけて授業を受けて学位を取得するよりも、働きながらOJTで学ぶ方が効果的であることから、一般の学生以外にも社会人も学んでいるようだ。スマートフォンの急速な普及でいっきにインターネットへのアクセスができるようになったミャンマーだが、そのインフラを支えるネットワークエンジニアやセキュリティをわかっている人材が不足している。さらにインターネットを活用して新たなビジネスを起こしていく人材の輩出もミャンマーでは期待されている。

▼ミャンマーではパソコンは大学や職場でやるもので、自宅でパソコンを保有している家は少ない。その代りスマホは誰もが持っている。
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▼パソコンを使っての実践的な授業を行っている。
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▼ヤンゴン大学DEではWeb開発やネットワーク・コミュニケーションのコースを習得して、Business Information Technology(BIT)の学位を目指すコースがある。
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▼ネットワークコミュニケーションコースのシラバス。授業はミャンマー語で行う。
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▼Web開発コースのシラバス
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▼学生課など事務室では、いまだに「紙の書類」がいっぱいで、データベース化なども遅れているようだ。
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佐藤 仁(さとう・ひとし)

2010年12月より情報通信総合研究所にてグローバルガバナンスにおける情報通信の果たす役割や技術動向に関する調査・研究に従事している。情報通信技術の発展によって世界は大きく変わってきたが、それらはグローバルガバナンスの中でどのような位置付けにあるのか、そして国際秩序と日本社会にどのような影響を与えて、未来をどのように変えていくのかを研究している。修士(国際政治学)、修士(社会デザイン学)。近著では「情報通信アウトルック2014:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)、「情報通信アウトルック2013:ビッグデータが社会を変える」(NTT出版・共著)など。