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スマホのパーソナルアシスタントがIoTと連携、サムスン電子「Bixby」の挑戦

2017.04.18

Updated by Naohisa Iwamoto on April 18, 2017, 06:25 am JST

IoT(モノのインターネット)は適用範囲が広い概念で、産業分野からビジネス、家庭まで様々な用途が考えられる。そうした中で、ライフスタイルの変化をもたらすようなIoTの利用に、スマートフォンが一役買う可能性がでてきた。その役割を果たしそうな機能が、サムスン電子が3月末に発表したフラッグシップモデルのスマートフォン「Galaxy S8」「同 S8+」に搭載されたパーソナルアシスタント機能の「Bixby」だ。

Bixbyは、一言で説明すればアップルの「Siri」やグーグルの「OK、Google」に相当するサムスン電子のパーソナルアシスタント。音声で話しかけるとスマートフォン内のアプリやインターネットから対応する情報を持ってきてくれるお馴染みの機能である。サムスン電子では同社の独自のパーソナルアシスタント機能として、最新のフラッグシップスマートフォンにBixbyを搭載する。

▼3月29日(ニューヨーク現地時間)のGalaxy S8/S8+の発表会で、「Bixby」の機能もアナウンス20170417_samsung001

ただ、後発のBixbyだけに単なる音声アシスタント機能を提供するだけではなく、もう一歩先へ進むことを想定している。人工知能(AI)を使って自然言語処理をするのはもちろん、カメラの画像やスマートフォンのセンサーなど各種情報を認識して、スマートフォンを一段と使いやすくするツールに仕立て上げようとしている。

例えば、Bixbyの「Talk」機能では、アプリ間の連携が可能になった。音声で話しかけた内容に対して、複数のアプリをまたいだ操作が自動的に行えるのだ。「昨日撮った桜の写真を鈴木一郎さんに送って」といったリクエストに対して、画像を認識して検索し、連絡先から相手を選び、メールなどで画像を送るような連携した動作ができるようになる。こうした一連の動作を「一声」で行ってくれるとなると、パーソナルアシスタントの利用範囲が一段と広がる。

▼「Bixby」のホーム画面。パーソナルアシスタントとして様々な情報を提供してくれる20170417_samsung002

Bixbyの「See」機能では、カメラで撮影した画像を認識して様々な検索に役立てることができる。モノの写真から製品情報を検索したり類似した品物の画像を探したりできるほか、建物やランドマークの写真から周囲のスポット情報を検索するといったことも可能だ。「Recommend」機能は、NTTドコモのiコンシェルに近い機能だが、スマートフォンの利用状況をBixbyのAIが把握してコンテキスト(文脈)を認識し、ユーザーにとってその時点で最も適した情報を探して画面上にリコメンドしてくれるとなると新しい世界観が見えてきそうだ。

「Remind」機能も面白い。一般にリマインダーは、「20時に牛乳を買う」といったように時刻をキーとしてリマインド情報を知らせてくれる。一方、BixbyのRemindはスマートフォンの状況もトリガーとして使ってリマインドしてくれる。位置情報を使えば、「会社を出たら●●する」「最寄り駅に着いたら▼▼を買う」といったアクションに応じたリマインドが得られるわけだ。せっかくリマインダーに登録しておいたのに、通知のタイミングが悪くて結果として忘れてしまった!というような悲劇が少しでも少なくなることが期待できる。

▼IoT冷蔵庫の中の状況をBixbyでスマートフォンから確認できることをプレゼンテーション20170417_samsung003

こうした様々な機能と並んで、BixbyではIoTとの連携機能「Samsung Connect」も提供する。サムスン電子が提供する白物家電のIoT機能と連携して、スマートフォンを情報のインタフェースとして使おうというものだ。テレビ、冷蔵庫、洗濯機など、家庭にあるモノの情報を、Bixbyをインタフェースとして外出先のスマートフォンで把握し、必要に応じた操作を行う。ニューヨークで開催されたGalaxy S8、同 S8+の発表会のプレゼンテーションでは、同社のIoT対応冷蔵庫の庫内の状況のカメラ画像を、Bixbyを介してスマートフォンの画面で確認できる様子を示した。

こうした操作は、冷蔵庫に取り付けたカメラとネットワーク、スマートフォンのアプリが連携すれば実現可能だ。ただし、それを単体の機能としてではなく「Bixby」というパーソナルアシスタントと融合させるところに今後の可能性を感じる。近い将来、スマートフォンに「今晩のおかずはどうしよう?」と話しかけると、冷蔵庫内の状況を見てAIが献立をリコメンドし、不足する材料を帰宅時の最寄り駅に着いたときに買うようにリマインドしてくれるかもしれない。

▼サムスン電子がニューヨークに開設したのアンテナショップ「Samsung 837」に展示されていたIoT冷蔵庫20170417_samsung004

サムスン電子のIoT対応冷蔵庫が日本で発売され、普及するかどうかは、予測が付かない。こうした分野を横断する機能が1社のエコシステムで閉じてしまうと、広がりを阻害することにもなりかねない。とは言え、スマートフォンをインタフェースとして、音声認識やAIによる様々な機能を組み合わせ、IoTでライフスタイルを豊かにするサムスン電子の提案には注目したい。今後、私たちのリアルな生活に、バーチャルな世界のパーソナルアシスタントがどれだけ力を貸してくれるかの社会的な実験が始まろうとしているとも考えられそうだ。

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。