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音声キップ購入から5Gロボット遠隔操作まで--DOCOMO Open House 2018で見えた通信の今と未来

2018.12.11

Updated by Naohisa Iwamoto on December 11, 2018, 06:25 am UTC

モバイルネットワークを使ってどのようなソリューションを利用者に提供できるか。話題の5Gはもとより、既存のネットワークの活用も含めたソリューションや技術を、NTTドコモがプライベートイベント「DOCOMO Open House 2018」で紹介した。イベントは東京ビッグサイトの東7・8ホールで開催された大規模なもので、その中からいくつかの展示・デモをピックアップして紹介する。

手軽に使えるAI音声認識や窓をアンテナにする技術などを展示

5Gのサービス開始にかかわらず、ネットワークを活用した多様なソリューションを提供するための取り組みからは、「ドコモAIエージェントAPI」「デバイスクラスタ」「ガラスアンテナ」の3つの展示を見ていこう。

「ドコモAIエージェントAPI」は、AI技術を活用した対話型エンジンを、さまざまなデバイスに組み込めるようにするサービス。Open House 2018では、21のパートナーが28のデモを展示した。「声でチケット購入」は、新幹線などのキップや指定券を購入する際に、タッチパネル式の券売機を操作するのではなく、声で購入希望の内容を話しかけることで手続きを簡単にしようというもの。タッチパネル表示からマイク型のボタンを押して「東京から大阪まで今日の3時に大人1人、普通車で片道」のように話しかける。すると、ドコモAIエージェントAPIを使って音声認識を行い、要望の乗車券や特急券を発行してくれる。APIを使うことで音声UI(ユーザーインタフェース)を機器に手軽に組み込むことができるようになる。自動券売機で実際に利用するには周囲の雑音を避けるために受話器を使うなどして認識率の向上を図ることを考えているほか、今後は日本語だけでなく外国語への対応も進めるという。

「デバイスクラスタ」は、多様なデバイスを簡単につないで利用できるようにするためのプラットフォームのこと。大きく、レンタルやシェアリングなどの「デバイスシェアリング」を容易にする方向性と、公共的な場に設置されたサイネージや飛行機の座席前のディスプレイの個人的な利用を実現する「パブリック・セミプライベートデバイスの活用」の方向性の2つが示された。デバイスシェアリングでは、360度カメラやタブレットを旅先でレンタルする際に、自分のスマートフォンを指定のリーダーにタッチするだけで、端末が自分のアカウントでアクティブになるデモが行われた。パブリックデバイスの活用では、経路検索アプリと連動して、駅の自動改札機にタッチしたりバス停に設けられたサイネージにタッチしたりすることで、改札を出てから向かうべき方向や、バス停の案内などの情報が示されることが体験できた。

ネットワークのエリアを拡充して利便性の高いモバイル通信を実現するための技術として展示されていたのが「ガラスアンテナ」だ。ビルの窓ガラスに透明なアンテナをつけることで、景観を損なうことなくビルの前の道路のエリア化を進めることができる。2019年春の商用化を目指しており、現在は3.4GHz帯、3.5GHz帯に対応している。今後、5Gの周波数割当が完了したときには、ガラスアンテナも5Gへの対応も進めてエリア化の拡充に寄与する計画だ。

遠隔医療もロボット操作も博物館鑑賞も「5G」

5Gの高速性や低遅延性といった特性を生かしたソリューションのデモや展示では、「5Gによるヒューマノイドロボットの遠隔操作」「AVATER MUSEUM」「5Gで実現する遠隔高度医療のモバイルSCOT」「メタマテリアル」などがあった。

ヒューマノイドロボット「T-HR3」のデモでは、5Gの低遅延の性能を生かしてロボットを遠隔操作した。それもただロボットを遠隔で動かすだけではなく、ロボットが触れたものに対する触覚を操作者に伝えることができることを示した。通常はロボットのカメラの映像を視覚情報として利用して遠隔操作するが、デモではロボットに目隠しをして視覚情報をシャットアウト。触感だけでコマを迷路のゴールへと導くことができることを示した。

AVATER MUSEUMは、5Gの高速データ通信の性能を活用することで、博物館に配置したロボットを遠隔操作してあたかも美術館に赴いたかのような体験を得られるソリューション。デモでは、東京の飯田橋にある印刷博物館にアバターロボットを置き、ロボットのカメラの映像を70インチの4Kディスプレイを3枚組にした表示部に映し出した。高精細で没入感のある映像を見ながらアバターロボットを操作することで、離れていながらも自分で体験しているような新しい博物館や美術館の鑑賞体験が実現する。

医療への5Gの応用のデモもあった。東京女子医科大学が開発したスマート手術室「SCOT」(Smart Cyber Operating Theater)を、5Gで場所や時間を問わずに利用できる「モバイルSCOT」へと拡張するデモだ。SCOTでは各種の医療機器のデータを1つの高精細ディスプレイに表示するが、その表示を5Gで遠隔の専門医のタブレットと共有する。デモのセットはトラック型の診療室と新幹線に乗車中の専門医の間を5Gでつなぎ、モバイルSCOTによって高度な医療を場所にかかわらずに受けられる様子を示した。5Gの低遅延性はもちろん、高速データ通信の性能も生かして、4Gでは3Dのデータが平面的に見えてしまうところを、立体的に見て確認できるとの説明があった。

5Gでは高速大容量の通信を実現するために、高い周波数帯域の電波を使うことが想定されている。一方で高周波数帯の電波は直進性が強く、基地局のアンテナから見てビルなどの影になる部分のエリア化が難しい。影になる部分に向けて鏡のように電波の反射板を配置すれば良いが、鏡では反射の方向が一定で設置の自由度が限られる。そこでドコモでは入射波に対する反射の方向を自由に設定できる「メタマテリアル」を開発し、反射板に活用するデモが行われた。80cm四方のメタマテリアル反射板を置くことで、フィールドテストでは10倍ほどのスループットの向上が確認できたという。

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。