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AI作曲や無線制御の照明などでコンサートを演出、クラシック音楽をもっと身近に

2021.02.19

Updated by Naohisa Iwamoto on February 19, 2021, 06:25 am JST

クラシック音楽というと、興味のない人は「難しい」「敷居が高い」といって敬遠しがち。クラシック音楽を演奏する側からは、様々なアプローチが行われているが、そうした中でも一風変わったコンサートが2021年3月6日に東京都中央区の第一生命ホールで開かれる。「クラシカエール」第4弾『宙(そら)シドエール~謎解きシンフォニー~』がそれだ。

コンサートは、早稲田大学大学院経営管理研究科の川上智子教授と、エール管弦楽団指揮者の鯵坂圭司氏が共同代表を務めるクラシカエール実行委員会が企画・運営するもの。テクノロジーとマーケティングの視点を持って、クラシック音楽を通じて暮らしを豊かにしていってもらいたいとの願いを込めたコンサートである。今回の『宙シドエール~謎解きシンフォニー~』では、「挑戦者にエールを送るコンサート」をキャッチフレーズにして、コロナ禍の中でさまざまな挑戦を続ける人々に芸術を通じてエール(応援)を送るという。

コンサートは、謎解きとプラネタリウム投影などを組み合わせた参加型の演出と、コシノジュンコ氏による衣装コラボなどにより、クラシック音楽に馴染みが少ない人にも楽しんでもらえるように企画した。一方で、AI作曲家による世界初演曲のフルオーケストラ演奏や、無線制御による光の演出により、テクノロジーに興味のある人にクラシック音楽を体感してもらうきっかけにしたいという。

作曲家のAIは、ルクセンブルクにあるNVIDIA関連企業AIVA Technologiesのモデルを用いた。川上教授が所長を務めるマーケティング国際研究所との共同研究でモーツァルトやベートーヴェンなどの約3万曲を学習させ、新しい曲を「作曲」してもらったという。2020年の第3回コンサートでもこのAI作曲家の曲を演奏したが、その際は「モーツァルト風」の新曲の披露だった。今回は「宙(そら)」をテーマにした完全な創作の新曲を世界初演する。指揮者の鯵坂氏は、「フルオーケストラでAI作曲家の約5分の曲を演奏します。曲の冒頭は壮大にはじまり、中間部では地上の平和を想起させ、最終的にはまた壮大な音楽で終わります。最後が長調で終わるところからは、コロナ禍で沈みがちな私たちに『がんばろう』と励ましをもらったような気がするのではないでしょうか」と説明する。

川上教授は、「AIを芸術に応用したときに、観客がどのような反応をするかをマーケティングの視点から研究しています。AIなどのテクノロジーが暮らしの中に芸術分野でどのような浸透の仕方をするかです。マーケティング理論からは、ブルーオーシャン戦略、すなわち競争のない市場を作ることを想定しています。クラシック音楽は比較的高齢の人に好まれていて、20代や30代のミレニアム世代は既存顧客ではありません。多様なライフスタイルへの対応、日々の忙しさ、不安や悩みを抱えたミレニアム世代に、テクノロジーや演出を介してクラシック音楽を届けることで、リフレッシュしてもらいたいと考えています。こうしたノンカスタマーを取り込むことで、ブルーオーシャンを形成していきたいです」と説明する。

きっかけは、「AIの作曲って面白そう!」であっても、「コシノジュンコの衣装やプラネタリウム、謎解きのあるコンサートなら退屈しないかな?」であっても、本物のクラシック音楽に触れてもらうことができれば、その中からクラシックに興味を持つ人が増える可能性はある。市場拡大という意味だけでなく、クラシックに触れて心の癒やしを得られる人が増える価値も提供できるだろう。

曲目は、作曲家、ピアニストのはらかなこ氏による日本民謡を題材にした超絶技巧を駆使した新曲「超絶ジャポニズム」、AIVA作曲の「エールのためのシンフォニー#3 宙(そら)」、ドヴォルザーク作曲「交響曲第9番『新世界より』第2楽章、シベリウス作曲「フィンランディア」、ベートーヴェン作曲「交響曲第7番」など。第一生命ホールで2021年3月6日(土)13時30分開演、チケットはS席5900円、小児(4歳以上、小学生まで)2950円。

【関連情報】
ソラシドエール

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。