4月14日夜に熊本県で最大震度7の地震発生に伴い、キャリアWi-Fiを統一SSIDで無料開放する災害用統一SSID「00000JAPAN」の運用が始まっている。運用ルールやガイドラインについて、過去の記事(大規模災害時にはWi-Fiで「00000JAPAN」に接続 -無線LANビジネス推進連絡会がガイドラインを公表)を再編集・アップデートして掲載する。
2014年5月27日、無線LANビジネス推進連絡会(以下連絡会)は、「大規模災害発生時における公衆無線LANの無料開放に関するガイドライン」(以下ガイドライン)を公表した。その中でSSIDについては、災害用統一SSIDとして「00000JAPAN」(ファイブ・ゼロ・ジャパン)を規定した。キャリアWi-FiのSSIDを配信しているエリアであれば他社のアクセスポイントにも接続できるようになる。
「大規模災害」の定義については、災害の種類や規模などによって一律に規定することは困難であるため、被害状況から「携帯インフラが広範囲に被害を受け、携帯電話やスマートフォンが利用できない状態が長時間継続する恐れがある場合」と規定。実際の無料開放の判断は、携帯インフラの被災状況や復旧見込みなどを勘案して、通信事業者が主体的に判断することを明記した。また、措置を行う目安としては、人命救助活動などにも活用されることを考慮し、人命救助及び被災者の救護活動を行う災害の初動対応の目安となる「災害発生後72時間以内」に無料開放を行うことが望ましいと規定した。
▼災害発生時には「00000JAPAN」でどのキャリアのAPにも接続できるようになる。
公表されたガイドラインは、連絡会が2013年9月に釜石市、仙台市で実施した実証実験をもとに策定したもの。公衆無線LANを提供する各事業者等が、大規模災害の発生に備えて検討すべき対応措置や留意事項について明らかにしている。
2014年3月末時点で、主要キャリア(NTT東西、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイル)のWi-Fiスポットは全国で90万か所と直近3年で約70倍に増加している。利用者は利用者は約1700万人で、スマートフォン利用者の約4分の1が無線LANの利用者と推計されており、利用者の間には浸透しつつある。2013年9月、連絡会では釜石市と仙台市で行われた実験では、参加者の9割が「手順さえわかれば解放された公衆無線LANを利用することができていたが、一方で解放のタイミングや利用者への周知、自治体と事業者の連携などに問題があることが課題となっていることが明らかとなっていた。発表時(2014年5月)公表されたガイドラインでは、その点を踏まえ、公衆無線LANの無料公開を行う大規模災害の定義、発動の目安、推奨するポータル、SSIDなど16項目について規定している。
▼au Wi-Fi SPOTのアクセスポイントに「00000JAPAN」を利用してドコモの端末から接続(2014年5月撮影)
端末上での無線LANアクセスポイントの表示が文字コード順に表示される端末が多いこと、また現在SSIDが「0000」からはじまるキャリア運営の公衆無線LANアクセスポイントがあることから、SSIDサーチの最上位になるように「00000」からはじまるアクセスポイントとした。また、これとは別に、地方公共団体などが固有SSIDで提供しており平常時には登録ユーザー向けに提供されている公衆無線LANサービスについても、住民や地域の安全確保の面で災害時には未登録ユーザーにも開放することが望ましいとしている。
なお、ガイドラインについては上記発表後改訂されており、現在の最新版は第3版となっている(00000JAPANガイドライン第3版と各種ツールの提供について)。また、緊急時に適切にSSIDを選択することが難しいことが分かったため、会員限定で接続用アプリのトライアル版を配布し検証を行っている。
なお、「00000JAPAN」については、誰でも使える状態になっており、暗号化も施されないため、セキュリティ上のリスクは当然発生する。この点について連絡会では、悪用リスクと人命救助も含む災害対応における通信確保の重要性を比較考慮した上で、緊急事態ということで通信の確保を優先し、悪用された場合にトレースできるようにMACアドレスの取得などの対策を考えるとしている。また、「00000JAPAN」の運用は災害発生時のみ、被災地域に限定することで、できる限り悪用のリスクを小さくするとしている。
【関連情報】
・大規模災害時における公衆無線LANの無料開放について(無線LANビジネス推進連絡会【WiBiz(ワイビズ)】)
・00000JAPANガイドライン第3版と各種ツールの提供について(無線LANビジネス推進連絡会【WiBiz(ワイビズ)】)
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登録はこちらWirelessWire News編集委員。独立系SIerにてシステムコンサルティングに従事した後、1995年から情報通信分野を中心にフリーで執筆活動を行う。2010年4月から2017年9月までWirelessWire News編集長。「人と組織と社会の関係を創造的に破壊し、再構築する」ヒト・モノ・コトをつなぐために、自身のメディアOrgannova (https://organnova.jp)を立ち上げる。