• 執筆者一覧Contributors
  • メルマガ登録Newsletter

村上 陽一郎 youichirou_murakami

1936年東京生まれ。専攻は科学史・科学哲学・科学社会学。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。東京大学先端科学技術研究センター長、東洋英和女学院大学学長などを経て、現在、東京大学名誉教授、国際基督教大学名誉教授、豊田工業大学次世代文明センター長、一般財団法人日本アスペン研究所副理事長。2015年に瑞宝中綬章受章。膨大な数の著書・訳書・編著を誇るが、代表的なものに『科学者とは何か』『文明のなかの科学』『あらためて教養とは』『安全学』、シャルガフ『ヘラクレイトスの火』、ファイヤアーベント『知についての三つの対話』、フラー『知識人として生きる』『伊東俊太郎著作集』『大森荘蔵著作集』などがある。幼少より能楽の訓練を受ける一方、チェロのアマチュア演奏家としても活動中。

続・学術会議問題 手続きの合理性と学問の自由は別次元にある

拙論に対して、ご賛同、ご批判を多く戴いたようです。私の論点は、現政権の今回の措置への援護と受け取られた方もあったようですが、趣旨はそうではありません。注意深く書いたつもりだったのですが、何分にも急いで書きましたので、誤解が生じた向きもあったので、多少の補足をしておきます。

2020.10.13

学術会議問題は「学問の自由」が論点であるべきなのか?

日本学術会議次期会員の推薦候補の一部を内閣が任命しなかった事について、出発点から、「学問の自由の侵害」と捉え、糾弾するのが新聞輿論のようです。一部の学者や識者層も、その立場で動こうとしているようです。

2020.10.07

エリートと教養 9 現代日本語考 4 日本語を書く

外国人が日本語を学ぼうとしてぶつかる困難の一つは、書字体系が、漢字・ひらがな・かたかなの三種類からなっていることだといいます。無論外国語でも、複数の書字体系があるのは、別段珍しいことではありません。例を英語にとれば、大文字と小文字があり、さらに活字体と筆記体の区別もあります。

2020.10.06

「音楽 その光と塩」 8. 音楽とは(承前)

前稿(「音楽 その光と塩」 7. 音楽とは)では、自分が幼い頃に浸っていた音楽の環境を、特に歌に焦点を合わせて振り返ってみました。小学唱歌から、日本歌曲、ドイツ・リート、戦時歌謡から流行歌まで、自分が何を歌っていたかの記憶を辿ってみた次第です。

2020.09.17

「音楽 その光と塩」 7. 音楽とは

小学校に入ったとき、国語も算数も、どの教科も同じ教室、つまりそのクラスの本拠の教室は一つに決まっていて、その教室で授業を受けることになっていました。だから、高校生になって、物理は物理の教室で、化学は化学の教室で、美術は美術室で、というように、教科毎に教室を移動する習慣に出会った時には、とても新鮮で、何か偉くなったように思ったものです。

2020.09.02

スーパー書評「漱石で、できている」7
ホセ・オルテガ・イ・ガセット『大衆の反逆』

この名著の翻訳は、いま生きているものだけで、私の知る限りでも四種類あります。中公クラシックス版の寺田和夫訳、白水社Uブックス所収の桑名一博訳、神吉敬三訳のちくま学芸文庫所収のもの、そして岩波文庫所収の佐々木孝訳、いずれも、文庫本かそれに近い普及本の形式になっていることでも、極めて人気のある原著であることが判ります。

2020.08.25

「音楽 その光と塩」 6. クラシック音楽とエンターテインメント

クラシック音楽、とりわけ声楽の世界では、エンターテインメントとの領域区分はかなり曖昧になります。クラシックの歌手と認められている人の中には、ほとんどクラシック音楽の教育を受けなかった人もいました。まあ、現在では余りありそうにない話でしょうが。

2020.08.17

エリートと教養 8 現代日本語考 3

「言葉警察」の如き文章を、二回にわたって連ねてきました。他方で、朗読、読み聞かせ、などという業も、結構賑わいを見せているようで、アナウンサーとして一段落したような方も、その分野で数多く活躍しています。美しい日本語についても語っておかなければ、手落ちということになりそうです。

2020.08.10

エリートと教養7 現代日本語考 2

「あかとんぼ」や「でんしゃ」では、かつては冒頭のシラブルにアクセントが置かれていたのが、今は、どこにもアクセントが置かれない、平たい発音がむしろ普通になった、という論点でした。

2020.08.03

「自らの『生』を問う」 ALSを患った女性の死から

ALSで重篤な状態に陥った患者が、SNS上で安楽死を望む投稿をし、それに二人の医師が応じた事件で、世評はいろいろと喧しい。何でも政治家や政府のせいにしたがる人々は、首相がいち早く否定的な見解を発表しないことを、手抜きとして非難する始末である。

2020.07.31

エリートと教養6 現代日本語考 1

「何とかがぁ」「どうこうしてぇ」「どうこうなったからぁ」「それでぇ」「困ってしまってぇ」──。 こんな話し方に気付かれていませんか。一つの文章が細切れに分節化されて、その分節の最後のシラブル(音節)、上の表現では斜体のシラブルだけが、特別に強調されて高音化されるのです。

2020.07.28

「音楽 その光と塩」 5. オーケストラ 承前

オーケストラでは、予期せぬ事故が起こります。日本で大変有名になった話があります。かつて『題名のない音楽会』というTV番組で、司会の黛敏郎さんが、ゲストの指揮者山田一雄さんに、ちょっと聞きにくい話なのですが、と断って、公開の席上で尋ねられたことがあります。そのエピソードは、私も前々から聞いていて、本当かどうか知りたかったので、果たして山田さんはどう答えられるか、興味津々で見ていました。

2020.07.23