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イギリスのコロナ追跡アプリの問題点

Issues of UK's COVIT-19 app

2020.05.27

Updated by Mayumi Tanimoto on May 27, 2020, 07:00 am JST

前回は、イギリスのコロナ追跡アプリである「NHS COVID-19 App」についてご紹介しました。

このアプリは、ロックダウンをどの程度解除していくかの判断材料になる予定ですが、その効果に関してはイギリス国内で議論になっています。

議論の論点は以下の7点です。

1.アプリのダウンロードと症状の申告はあくまで「自主的に」であって
強制ではないために、実際に使われるかどうかがわからない

2.症状が自己申告なので、実際は感染してない人も「感染者」として
通知されてしまう可能性がある

3.イギリス国内のユーザーのみが使用し、他国のアプリとは相互互換性
がないので、海外からの渡航者の感染が不明

4.あくまで症状の自己申告のみなので、感染もしくは非感染証明として使えない

5.GPSやクレジットカードなどの決済情報と連動していないので、
行動履歴の追跡ができない

6.公共交通機関の利用、建物への入場などの際の「非感染証明」として
義務化する法律がない

7.個人IDとの連動がないので、「誰」が感染しているのかがわからない

イギリスには、納税番号と社会保障番号がありますが、プライバシー保護の観点から個人情報との連動は進んでいないので、スマートフォンと個人情報を紐付けることには大変な抵抗があります。

また、イギリスの個人情報保護法とGDPRの規制があるために、中国、インド、韓国のようにスマートフォンを使用して感染者個人の特定をすることもできませんし、通行許可書として使用することもできません。

しかしイギリスは、死者が世界2位です。状況は改善しつつあるとはいえるものの、いまだに1日に300人以上が死亡していることを考えた場合、中国や韓国のような方式をとらざる得ないのではないかと思えますが、そこまで踏み込んでしまうと、民主主義国家としての根幹を破壊することになってしまいます。

 

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。