6Gが実現する「高精度のデジタルツイン」「究極のコネクティビティ」「オートマティックなサービス・オーケストレーション」
a Vision of 5G-Advanced & the Future of 6G
2022.04.20
Updated by WirelessWire News編集部 on April 20, 2022, 10:45 am JST
a Vision of 5G-Advanced & the Future of 6G
2022.04.20
Updated by WirelessWire News編集部 on April 20, 2022, 10:45 am JST
※本稿は、柳橋 達也氏(ノキアソリューションズ&ネットワークス合同会社 最高技術責任者。冒頭の写真)による寄稿です。
世界は5G時代に突入し、特に2022年は全世界で5Gへの接続が10億を突破する可能性がある。このような進化の中、アジア太平洋地域は、今後数年間で5G導入の主要市場になると予測されている。
日本での5G導入は、2020年春から本格展開を始めた。総務省によると、2021年9月末時点での携帯電話・PHS・BWA(Broadband Wireless Access)の契約数は1億9847万、このうち携帯電話の契約数は1億9785万を数え、5G契約数は2922万に上っている。総務省は、5Gの「人口カバー率」を2023年度に9割に引き上げる目標を掲げ、インフラ整備の前倒しを促している。
また、地域の企業や自治体等が自らの建物や敷地内でスポット的に柔軟にネットワークを構築し利用できる無線システム「ローカル5G」の推進にも力を入れており、2020年にはローカル5G用周波数を拡大し制度化した。さらに、5Gの高度化に向けた研究開発や地域課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証を実施しており、最先端技術が織りなす豊かなスマートシティや工場、精密農業、モノのインターネット(IoT)、ロボット工学への取り組みが既に始まっている。
5Gは、かつてないほどの高速接続を可能にするが、5G対応アプリケーションの需要の高まりにより、ネットワークに負担がかかることは避けられない。そのため、アプリケーションに最適化された新サービスを自動展開する、高度にアジャイルでコグニティブな新しいアーキテクチャが必要となる。そしてこの未来のアーキテクチャは、超低遅延、大容量、広範なコネクティビティをサポートするため、限界に挑戦しなければならない。
このような期待に応え、さらにはネットワーク通信の概念を変革するためにも、第6世代コネクティビティ(6G)への道を切り拓く必要がある。
5Gの特徴として顕著なのが、物理世界と人の世界の融合だ。5Gは既に、センサーや人工知能/機械学習(AI/ML)の普及も実現している。デジタルツイン・モデルやリアルタイム同期更新を組み合わせることで、物理界の学習や、起こりうる結果の予測、適切なアクションの開始などを可能にする。これにより、工場は新たなレベルの自動化に到達し、都市の公共施設は危機に直面した際には、より高い回復力を持つように設計され、学生にはイマーシブな(没入型)学習体験を提供できるようになるなど、ここに挙げたのはごく一部だが、様々な面で変革がもたらされる。
5Gは巨大な可能性を秘めているが、6Gは遥か別次元のものとなる。例えば、5Gでは既に実用化されているデジタルツイン・モデルは、産業現場、都市、人間のデジタルツインに至るまで、より広範囲に、より高い精度で展開されることになるだろう。6Gはテラヘルツ波で動作し、高パフォーマンスを提供する。1,000Gbpsを実現し、5Gに比べ100倍速いネットワーク速度を供給すると期待されており、デジタルツインをより広範囲で、より高精度に展開することが可能となる。
6Gは、前世代の足跡を辿る一方で、通信の未来を形作るユニークな技術の数々によって特徴付けられるだろう。ノキアの研究部門であるノキアベル研究所は、6Gによって強化されるであろうイノベーションを次のように特定している:
・ネットワークセンシング
いたるところに張り巡らされたネットワークの存在によるユビキタスネットワークにセンシング機能が加わり、状況認識ソースとなる。物体から跳ね返される信号を照合して、種類や形状、相対位置、速度、さらには物理的特性まで特定する。センシングモードは、他のモードと組み合わせることで、物理世界のデジタルツイン、つまり「鏡」を作り出す。
・究極のコネクティビティ
6Gでは超確実、超低遅延コミュニケーションがさらに向上する。そのため、広域ネットワークのエンドポイントにある高度に専門化したサブネットワークの究極のコネクティビティ要件に対応する。
・認知・自動化・特化型アーキテクチャ
新しいネットワークとサービス・オーケストレーション・ソリューションを備えた6Gは、完全にクラウドネイティブな動作原理と、すべてのネットワーク機能にわたるAI/MLの進歩との組み合わせにより、かつてないネットワークの自動化とアジリティ(認知能力)をもたらす。これにより可能な限り低い運用コストで、最適なサービスの実現が可能となる。
・セキュリティと信頼性
6Gネットワークは、ゼロトラスト・インフラストラクチャ上で信頼できるサービスを提供し、ミッションクリティカルなプライベートネットワークへの妨害のような新たな脅威に加え、大規模な従来の脅威から保護するように設計される。なお、現実と仮想のデジタル表現を融合した新しい複合現実世界(Mixed-Reality World)の実現で生じるプライバシー問題も考慮していく必要がある。
5Gと6Gの時代を橋渡しするものは何か? 次世代コネクティビティへの足がかりとなるのは、5Gの次の拡張規格である5G-Advanced(5.5G)だろう。5.5Gはリリース18以降の3GPP(Third Generation Partnership Project)の重要焦点となり、拡張機能や効率性の改善、ユーザー体験の向上が盛り込まれることになる
5G-Advancedでは、これまでの5Gよりも遥かに大容量の通信が可能になる。ユーザーの静止時と移動時両方における遅延の低減、帯域の拡大、確実性の改良など、さまざまな面でユーザー体験を改善できる。これは、5Gをデータ通信だけに留まらず、衛星信号が届かない場所(屋内や地下施設など)でのセンチメートル単位の測位精度を大幅に向上させることに繋がる。
5G-Advancedは、5Gの能力を最大限に発揮し、6G時代における産業界の利用能力を拡大する重要なランディング・パッドとなる。6G では、テラヘルツレベルまでの広いスペクトルと新しいスペクトル域を利用できるため、ローカライゼーションは新たな高みに到達するだろう。
6Gの登場は2030年とされているが、次世代ワイヤレスネットワークの研究は既に始まっている。6G時代への到達に重要なのは、共同作業だ。EUの6GプロジェクトHexa-Xなどのイニシアチブは、いつでもどこでも通信したいという人々のニーズに応えるために6G研究の推進を支援している。6Gの未来を実現するためには、通信業界の主要なステークホルダー、未来のコネクティビティ・ソリューションに関わる人々(ネットワークベンダー、オペレーター、バーティカルメディア、技術プロバイダーなど)、そして研究機関などが重要な役割を担っており、これらすべてが互いに協力し合うことが重要だ。
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