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社会イノベーション事業の成長を支える知財活動

株式会社日立製作所・知的財産本部長 戸田裕二氏は、東京都国分寺市の中央研究所において実施された2018研究開発インフォメーションミーティングにおいて「社会イノベーション事業の成長を支える知財活動」について解説した。世界No.1技術に相応しい知財の創出と特許ポートフォリオの構築、IP Policy Library for Lumadaを活用した事業化の加速、そして新たな知財活動へのチャレンジという3つの軸で構成されている。

日立の社会イノベーション事業における2つの知財活動

日立の社会イノベーション事業における知財活動は大きく分けて2つある。一つがプロダクト事業における知財戦略。いわゆるコンペティションとしての知財戦略になる。ここは特許権を中心とした知的財産権の取得・活用といった業務が主体だ。一方、デジタルソリューション事業については、もう一つの協創戦略、すなわちコラボレーションを前提にした知財戦略がコアになる。顧客・パートナーとのパートナーシップ促進、エコシステムの構築に知財を活用し、知財の概念を特許等の知的財産権、営業秘密、著作権などから情報やデータにまで拡張し、ビジネスモデルの設定や契約の支援などを行っていく。政策提言、政府機関への人材派遣、アカデミア連携なども積極的に実施する。この2つの知財活動を3軸から説明する。

1) 世界№1技術を支える知財活動

事業や製品の特性に合わせてカスタマイズした知財企画案を作っている。このマスタープランの活動を通じて、ポジションをアップして、プロダクト事業の競争力強化を牽引してきた。Clarivate Analytics社よりTop 100 Global Innovators Awardを7年連続で受賞し、公益社団法人発明協会の全国発明表彰も2年連続して上位賞を受賞することができた。

いくつかの例を挙げる。電力BU(ビジネスユニット)では、日立独自のダウンウィンド型の風車に対し特許を強化し、市場の拡大を意識して標準化活動を推進している。日立産機システム社においては、世界初のアモルファスモータ一体型オイルフリースクロール圧縮機に関して、米国サルエアー社の商流活用に向け、知財のPMI(Post Merger Integration)の支援を実行している。また日立オートモティブシステムズ 社においては自動運転・Connected Car分野に関する特許をプロジェクト体制で強化した。ビルシステムBUでは、世界最高速を実現する駆動技術などの特許ポートフォリオを構築した。

2) デジタルソリューション事業の成長を支える知財活動

デジタルソリューション事業はデータの収集・抽出・分析を通じて経て、さまざまな知財が発生する。協創の成果物である知財の取り扱いこそがデジタルソリューション事業の鍵になる。2017年ベースでは約300件の協創契約の支援を実施した。知財コンタミネーション(情報混入)を防止し、顧客の知財を尊重するための知財ポリシーをIP Policy Library for Lumadaに蓄積している。AI、ロボット、自動運転の法的責任・倫理等の問題がクローズアップされてきているのと同時に、EUのGDPR等に代表されるデータローカライゼーションの動きが活発化しているので、こうした新たなテクノロジー及び国・地域のルールの留意点もIP Policy Library for Lumadaという形に集積した。

IP Policy Library は2つのパートに分けられる。一つが顧客の知財尊重ポリシー。
知財のポリシー、契約、ビジネスモデル、自他社の知財情報を蓄積する。もう一つがニューテクノロジー、国・地域のルール、それからデータの集積・抽出などにおける留意事項の蓄積になる。このIP Policy Library によって、顧客の知財と社会のルールに留意しつつ、事業を加速することが可能になる。

南太平洋のソロモン諸島にあるソロモンパワーとIoTの活用によるエネルギー課題の解決に向けた共同検討に関する覚書を締結した。また、アスクル(株)とのHitachi AI Tehnology/Hを用いたパートナー協創、日立産機システム社とのクラウドシステムFit Liveなどにおける知財活動についても上流から下流まで各フェーズでデジタルソリューション事業を支援している。日立としてはこれらが顧客・パートナーとWin-Winの関係を構築可能な知財の枠組みであることを重視している。今後は社会課題解決に向けて、さまざまなステークホルダー、例えば標準化機関、政府機関、大学、パートナー企業等々と連携して行くことになるが、このようなエコシステムの中心になるのが知的財産とその活用方法にあると考えている。

3) 新たな知財活動へのチャレンジ

デジタル化の進展は、知財活動を特許(取得)中心の活動から、データやその利用方法まで拡大してきた。経営・法律・技術が融合し、それらのすべての知見が求められてきている。過去にも融合領域の業務を扱ってきた知財部門としての知見と強みを活かして新たな活動にチャレンジする。

まず、業界のオピニオンリーダーとして内閣府、経済産業省、特許庁などの委員会に参画し、「データの保護と利用のバランス」に関する提言を実施することで、政策や法律にも取り入れられた。

また、オープンイノベーション推進については、KDDI(株)が実施するムゲンラボ(∞ Labo)における新規事業(StartUp)への参画、OSS(Open Source Software)に対する特許の知財のリスクを減らすための防衛団体OIN(Open Invention Network)への加盟、またAIに関連したハッカソンなどにも積極的に関与している。

一方、国際標準化(最近は“ルール形成”という言葉も一般的になりつつある)において、ブロックチェーンのSmart Contract(ブロックチェーン上で契約をプログラム化する仕組み)が策定されている。Smart Contractという名称が示すとおり、これは技術と法律、両面の知見が必要なので、日立の知財部門も標準化・ルール形成活動に参画している。さらに、政府機関へは内閣府の知的財産戦略本部にスタッフを派遣して、昨今発表された新しい「知的財産戦略ビジョン」の策定に貢献した。オープンイノベーションに関しては、グローバルなホットスポットに現地に赴いて、スタートアップ連携が可能かどうかという調査を行ったり、アカデミア連携としては日本知財学会や東京大学と一緒にデータの保護と利用の検討に着手した。

このような活動は、まだ緒についたばかりではあるが、日立としては知財を中心としたエコシステムを提案し、IPドリブンイノベーションを目指して行きたい。これらのデータ利活用推進に向けた全ての知財活動を通じて、最終的には国連のSDGs、そしてSociety 5.0の実現に貢献したいと考えている。

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